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「人間としての生き様を知ってほしい」 映画『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯』佐古忠彦監督インタビュー

9/4(水) 18:00配信

ウォーカープラス

平成30年文化庁映画賞・文化記録映画優秀賞、2018年アメリカ国際フィルム・ビデオ祭(US International Film&Video Festival)銅賞など、国内外で多数の賞を獲得したドキュメンタリー映画『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー』(17)から2年、人間としてのカメジローを描いた『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯』が公開される。監督は前作に引き続き、報道番組のキャスターとしてニュースを伝え、現在はドキュメンタリー番組のプロデュ―サーを務める佐古忠彦氏。なぜ同じ人物にフォーカスしたのか、その理由を伺った。

沖縄に心から寄り添った男、カメジロー。アメリカ軍が彼を恐れた理由とは?

■ ■「夫として、父として、そして民衆の友であった、人間カメジローを知ってほしい」

アメリカが恐れた男とは、占領下の沖縄で米軍のさまざまな弾圧にNOと叫んだ沖縄のヒーロー、瀬長亀次郎。民衆の前で演説をし、さまざまな策略に負けず那覇市長や国会議員になった人物だ。前作が公開されたのは、沖縄返還45年、瀬長亀次郎生誕110年という節目。政治家・カメジローが市長を追放されるまでを中心に描き、不屈の精神をもって沖縄とともに歩んだ男を紹介したこの作品は、沖縄を皮切りに、東京、大阪、名古屋、京都、札幌をはじめ、日本中に大きな波を起こした。

あれから2年。「今作では、もっと人間カメジローのよりパーソナルな部分に光をあてられたらと思ったんですよね」と佐古監督。「なぜこんなにも不屈な男になったのかもっと知りたくなったんです。それを読み解くには、日記がカギでした。230冊以上ある日記をもう一度読ませてもらうことで、夫としての顔、父としての顔、家庭での顔が見えてきたんです。まさに、人間カメジロー。エピソードがあまりにも多いんですよ、この人は(笑) また、1作目ではたどり着かなかった映像や音声もあり、前回では駆け足で紹介した歴史の空白も埋めたいと。一度表舞台から消えたカメジローが、その後、どうやって闘っていたのかを含めて、生い立ちや若いころのエピソードなども一緒に見ることで、よりカメジローの『不屈の精神』の深い部分がわかるのではないかと思いました」。

■ ■日記からみえてくる、人間カメジローの魅力

「カメジローさんは、あまりにも名言が多いんですよ。特に『大地にしっかりと根をおろしたガジュマルは どんな嵐にさらされてもびくともしない』という言葉は、彼の不屈の精神を象徴していると思います」と監督。1940年代、50年代といえば映像や音声もなかなか残っていない時代だが「カメジローさんは、ちゃんと自分が何を言ったか、日記に事細かに書いているんです。そこには民衆を鼓舞する言葉があるし、それを言う意味、闘う意味も込められている。例えば加藤周一『抵抗の文学』という本を読んだ感想として『抵抗は憎悪から生まれるのではない。圧制への怒りの爆発だ』と書いてある。憎しみではいけないんだ、怒りなんだと。それは、さらに、沖縄県民に対する愛情からうまれるものなんだと書いているんですね。そういう姿勢はカメジローらしいなと思います。また、カメジローは、県民の戦いが不屈だから、僕は不屈という言葉が好きなんだ、と言っています。この言葉からも、彼が県民と常に一緒に居たという姿勢が良くわかるし、カメジローの精神が伝わってきますよね」と監督は語る。

■ ■父として夫として、家庭人としてのカメジローの魅力も見せたかった。

投獄されたり、手術中に電気を切られたり、日本の本土へ行くためのパスポート(当時は沖縄はアメリカ領)の申請が長年にわたり却下されるなど、さまざまな妨害にあったカメジローだが、学生時代、医者を目指していたことや、家庭人として妻や子供とのほほえましいエピソードがたくさん残されている。

「奥さんのフミさん自身も市議になった人ですから、妻の目線で描きたい部分もたくさんあったんですけど、さらにどんどんふくらんでしまって入りきらなかった (笑) 九州に奥さんと子供を疎開させてしまった時期も端折ってしまって。でも、二人が再会するシーンは感動的なんですよ。次女の千尋さんは、疎開先で生まれたんです。カメジローさんが千尋さんと出会うのは終戦後。フミさんに『おお、無事だったか』というより先に、千尋さんを抱き上げ抱きしめていたという話があって。カメジローは演説の中でも『子供は未来だ』と言ってましたから、無事に生まれて自分のもとへ帰ってきたことが心底うれしかったのでしょうね」。

■ ■ナレーションには役所広司を起用。「カメジローの世界観に深みをあたえてくださった」

カメジローの日記や言葉を読み上げるのは、俳優の役所広司。監督は「もう、役所さんしかいない!と思ってたんです。演説の力強さや、娘さんとのやりとり、奥さんと共に与論島を見に行くシーンで、ふっと語り掛ける言葉の深みなど、役所さんにカメジロー像を作り上げ、命を吹き込んでもらいました。強くてやさしくてチャーミング。もう、これぞカメジローだ!と」とうれしそうに語った。

「カメジローの言葉には、強い言葉がたくさんありますよね。そして、強いだけでなく、とても深い言い回しもあって。そして、後世へのまなざしもある。本当の強さと優しさを兼ね備えていて、この後に続く人々へのメッセージも含まれている気がしてならないんです。カメジローは、敵さえも味方にしてしまう魅力があった。右とか左とか、そういうカテゴリーさえ超越した存在であると。人間的な力があったからこそ、いろんな人に支持されたんだと思います」と人間カメジローの魅力を熱く語ってくれた。

■ ■今なぜ沖縄の問題がそこにあるのか、これを見て知ってほしい。

今作の中に登場するエピソードをみていると、いつのニュースだろうかと思ってしまう。そのくらい、沖縄の抱えていた問題が、今も存在していることを突き付けられるのだ。

「そうなんですよ。つまり、なにも変わっていないということなんです。沖縄の軍事占領と引き換えに日本という国はある意味で経済復興を果たして平和になった。だからこそ、その沖縄で何があったのかをちゃんとみることは、すごく必要なことだと思うんですね。過去を見ることで、今が見えてくる。そこがわからないから無理解なだけの批判が本土からあがるのではないか。歴史への認識がすっぽり抜け落ちているからではないか。それはそのまま「沖縄と本土の溝」につながっているのではないかと思うのですが、戦後の沖縄で何が起きていたかを知れば、また違う見え方があると思うんです。前作も今作もその思いは変わらないですし、民意に寄り添って、闘ったカメジローという人を通して、沖縄の人の気持ちだとか、姿が見えてくると思うんです。当時の総理大臣であった佐藤栄作とのぶつかり合いの場面でも、カメジローの言葉には沖縄の人々の気持ちが込められていて、まさに民意を代弁している。だからこそ、アメリカはカメジローが怖かったんですね。民衆が惹きつけられていくから。みなさん、特に若い方にはぜひ、ひとりの人間の生き様としてカメジローの人生を見てほしい。そして、青い海、青空、楽しい沖縄というだけではない沖縄を知ってほしいと思います。風土や過去の出来事を知った上で訪ねると、沖縄にいる時間がより濃密なものになると思うんです」。

最後に監督に聞いてみた。もしカメジローが生きていたら、今、何を語るだろうかと。

「きっとまだまだ!これからがほんとの闘いだ!って言ってるかもしれませんね。カメジローは基地のことを『まじむん(沖縄の方言で魔物)』と呼び、『まじむんを退治できなかったことが心残りだ』といって引退したんですが、そのまじむん退治をまだまだ続けるって言っているでしょうね」という監督。

百戦錬磨のインタビュアーでもある佐古監督を虜にして離さない、人間カメジローの魅力をぜひ映画館で確かめて。

映画『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯』は9月7日(土)より第七芸術劇場、元町映画館、京都みなみ会館にて公開

■映画『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯』公式HP

http://kamejiro2.ayapro.ne.jp/

(関西ウォーカー・田村のりこ)

最終更新:9/4(水) 18:00
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