ここから本文です

北の国に生まれた女たちの芸術と冒険:展覧会「モダン・ウーマン―フィンランド美術を彩った女性芸術家たち」

9/6(金) 20:15配信

GQ JAPAN

現代に生きる女性たちの/による表現をめぐる、ライター・野中モモによる連載。第15回は、9月23日(月・祝)まで行われている展覧会についてのお話。

【写真を見る】展覧会の見どころをチェック!

7人の女性芸術家たち

いま、東京・上野の国立西洋美術館で、「モダン・ウーマン―フィンランド美術を彩った女性芸術家たち」と題した企画展が開催されています。日本とフィンランドの外交関係樹立100周年を記念する催しのひとつだそう。当連載をはじめた時点では開催予定に気づいていなかったこの展覧会、思わぬタイトルかぶりに、女性に注目してモダニズムを捉え直す気運が国際的に高まっているのを感じます。

図録の情報によれば、この展覧会はもともとフィンランド国立アテネウム美術館が、2017年にフィンランド独立100周年を記念して企画したものなのだそうです。「独立したまなざし:ヘレン・シャルフベックと同時代の画家たち」というタイトルで4人の女性画家(シャルフベック、エレン・テスレフ、シーグリッド・ショーマン、エルガ・セーセマン)の1907年以降の作品をアメリカに紹介し、その後「モダン・ウーマン」展としてスウェーデンとフィンランドを巡回しました。

このたびの日本巡回にあたっては、1880年代に人気を博した画家マリア・ヴィークと、国立西洋美術館にゆかりの深いオーギュスト・ロダンに師事したふたりの彫刻家(シーグリッド・アフ・フォルセルス、ヒルダ・フルディーン)の作品が加わり、19世紀後半から20世紀初頭に活躍した7人の女性芸術家を紹介する展覧会として再構成されています。さらにシャルフベックらの初期作品や素描、スケッチブックなども追加され、19世紀から20世紀にかけてのフィンランドの美術教育とモダンアートの展開を追うことができる貴重な機会となりました。

フィンランドでは、19世紀半ばに最初の美術学校が創立された当初から女性が受け入れられ、男女平等の教育が推奨されていたそうです。この頃ロシアの自治大公国となっていたフィンランドの人々は、他国による支配に抵抗するために、芸術や文化を通じて国家として独自のアイデンティティを打ち立てたいと願っていました。女性にも美術を学ぶ機会が与えられたのは、そうした狙いからのことです。つまり、当時のフィンランドで女性に男性と同等の人権が広く認められていたというより、「女性を活用したい」という思惑から生まれた施策だったということ。また上流階級の女性が比較的自由でいられた一方で、貧しい人々が苦しい生活を送っていたことも忘れてはいけません。

しかしそれでも、男女共学の美術学校の存在は当時のヨーロッパにおいてすら先進的でした。日本の場合、19世紀後半に設立された東京美術学校は、第2次世界大戦後の学制改革で東京藝術大学として再編される直前まで女性に門戸を閉ざしていたそうですから、およそ100年の差をつけられています。

1/2ページ

最終更新:9/6(金) 20:15
GQ JAPAN

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事