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ハリケーンや台風 温暖化でますます強力に?

9/7(土) 8:11配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

バハマに甚大な被害を与えた「ドリアン」の「燃料」とは

 カリブ海の島国バハマを史上最強級のハリケーン「ドリアン」が襲った。ハリケーンの勢力を支えたのは、旅行者をバハマへ引き付ける温暖な海だった。

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 ドリアンは丸1日以上バハマ付近に停滞。最大で時速300キロ(秒速83メートル)近い猛烈な風と豪雨が続き、住宅は高潮による浸水被害を受けた。

 2019年8月30日の時点では5段階中3番目の「カテゴリー3」だったドリアンの勢力は、9月1日までに「カテゴリー5」に急成長した。しかも2日夕方、ドリアンがバハマを通過するとき、ハリケーンを米フロリダ州の方向へ押し流す風がなくなってしまった。

 NASAによれば、フロリダ州南部からバハマにかけての「嵐の燃料となる海」が、ドリアンの勢力を急速に強めたのだという。

 「本当に不運でした」と米コロラド州立大学の気象学者フィリップ・クロツバック氏は語る。「進路を決める上空の風の状態が通常とは異なっていたところに、大型ハリケーンが重なってしまったのです」

気候変動との関連は

 記録的なほど壊滅的なハリケーンが発生すると、しばしば、気候変動との関連を巡る議論に発展する。

 だが、ハリケーンの1つ1つを地球規模の気候変動と関連づけるのは困難で、ドリアンの場合も例外ではない。クロツバック氏や米マイアミ大学の気象学者ブライアン・マクノルディー氏もそう考えている。

 むしろ科学者たちは海水温や風の状況のパターンに注目し、ハリケーンの長期的な変化を評価しようとしている。

 全米気候評価(NCA)の第4次報告書では、温暖化に伴い、ハリケーンがより勢いを増し破壊的になると予測している。一方で、温暖化によってハリケーンを押し流す風の速度が下がり、ハリケーンは進み方がより遅く、降水量がより多くなることを示唆する研究結果も増えている。

 その理由を知りたければ、まずは海水温とハリケーンの関係を理解しなければならない。

海水温が上がれば、ハリケーンは強力に

 米テキサス州ヒューストンを直撃した2017年の「ハービー」、米ノースカロライナ州とサウスカロライナ州を襲った2018年の「フローレンス」がそうだったように、通常、ハリケーンは地上で停滞すると、急速に勢力が弱まる。燃料となる暖かい海水がないためだ。

「この時期のバハマ一帯は、うだるような暑さです」とマクノルディー氏は説明する。「ハリケーンはそのような条件を好みます」

 同氏によれば、ハリケーンの勢力は、表面の海水温と、暖かい海水がどの深さまであるかによるのだという。「ハリケーンの勢力を左右するのは海水の暖かさです」

 ハリケーンの多くは、アフリカ西岸沖の海上で、雷雨の一団として発生する。いわゆるアフリカの「偏東風ジェット気流」が、東大西洋の上空を西方向に吹き抜ける時期のことだ。このジェット気流はずっと同じ位置にあるわけではなく、南北に上下する。すると、気圧の谷が西に向かって波のように連なる。

 そこに暖かい海から水蒸気が大量に流れ込むと、水蒸気が上空で冷やされて再び水分となり、やがて嵐の雲ができる。もし暖かい海水と西向きの風が十分にあれば、これらの嵐が熱帯低気圧に成長する。北半球では、地球の自転が生み出すコリオリの力の影響で、熱帯低気圧は反時計回りに渦を巻く。

 熱帯低気圧の内部では、暖かい空気が激しい上昇気流を生む。温暖な海上では、熱帯低気圧はまるでストローのように、暖かく湿った水蒸気を次々と吸い上げ、どんどん勢力を増していく。ハリケーン誕生の瞬間だ。大西洋の大型ハリケーンの85%が、こうしてアフリカ沖で発生すると推定されている。

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