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法務省も困惑…相続は「早いもん勝ち」に変わっていた

9/8(日) 6:01配信

現代ビジネス

 土地も貯金も保険も、他の親族の同意がなくても、先に手続きさえしてしまえば、あなたのものに。実はそんな「抜け穴」が今回の法改正で生まれた。この問題をずっと取材してきた本誌だから気付いた「悪魔の相続術」、具体的にどうやればいいのかを紹介する

役所があえて教えない、申請すれば「もらえるお金・戻ってくるお金」

専門家も新ルールに大混乱

 「やはり、気づいてしまいましたか。たしかに、今回の法改正には、大きな問題があります。

 これまでのように、きちんとした遺言書を書いておき、四十九日を過ぎてからゆっくり実家の名義変更をするという相続の常識が通用しなくなってしまいました。

 専門家たちの間でも、この話題で持ち切りです。遺言執行を行っている信託銀行の中には、これまで通りのサービスを継続できるか検討に入ったところもあると聞きます」

 こう話すのは司法書士・内藤卓氏である。

 7月1日から相続に関する改正民法が施行となった。夫の両親を介護していた妻も遺産がもらえる特別寄与料や、トラブルのもとになる不動産の共有名義を避けられる遺留分侵害額請求など、これまで相続の実態に合っていなかった法律が、約40年ぶりに改正された。

 さらに来年4月からは配偶者居住権がスタートし、夫の死後「妻が自宅に住み続ける権利」を設定できるようになる。

 一見いいことずくめの改正であるかのように、雑誌や新聞でも連日特集が組まれている。しかし今回、本誌はこの改正にひそむ「抜け穴」に気づいてしまった。
ずばり言おう。

 7月1日から相続が「早いもん勝ち」になってしまったのだ。

 これまでの相続では、遺言書の内容が絶対だった。仮に「長男に実家を相続させる」という遺言書があれば、弟は不服でもその通りにしなければならなかった。

 そうした感情のもつれが「争族」の原因になるのだが、今回の法改正で、その原則と言えるものが崩れてしまったのだ。

 母親が亡くなり、長男の太郎さんと、次男の次郎さんが相続をするケースで考える。
生前、母親はよくこんなことを言っていた。

 「次郎は18歳で家を飛び出してから、ほとんど帰ってこず、家のことも考えてくれなかった。だから、実家(評価額2000万円)は全部、太郎にあげたい」

 母親は、この内容で遺言書を書いた。この遺言書通りに相続されると、次郎さんは最低限の遺産(遺留分)として、全財産の4分の1の500万円しかもらえない。だが、それでは納得がいかない。次郎さんの気持ちはこんなところだ。

 「本来なら、法律で決められた取り分(法定相続分)として、遺産の2分の1を、弟の自分ももらってもおかしくないはずだ。こんな遺言書なんてなければいいのに」

 それならば、遺言書を無視すればよい。

 実は相続法の改正により、そんな荒業ができるようになってしまった。

 まず次郎さんは母親の死後、時間をおかず、法定相続分であるところの実家の2分の1(1000万円相当)について、母親から自分に名義変更をする。

 兄の太郎さんが遺言書を法務局に持っていき、「実家の権利を100%自分のものにする」という登記を行う前であれば、こんなことができてしまう。

 そのうえ、次郎さんが実家の2分の1を自分の名義に変えたことは、太郎さんに知られることはない。次郎さん1人だけでできるのだ。

 その後、次郎さんは不動産業者に自分の名前で登記された1000万円分の家の権利(共有持ち分)を売却すればよい。共有持ち分の価格は、市場価格の7割程度なので、次郎さんは約700万円を得られる。

 先述したとおり、遺留分は500万円になので、早いもん勝ちで手続きすることで、200万円も得できる。

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最終更新:9/8(日) 6:01
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