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D2C ブランドは、アナログのチャンネルを刷新できるか? : 大量の顧客情報を背景に

9/9(月) 9:01配信

DIGIDAY[日本版]

2019年夏、水着のD2C(direct-to-consumer)ブランド、アンディー・スウィム(Andie Swim)は広告看板デビューを飾った。

2017年春に創業したアンディー・スウィムは、2019年6月から7月にかけて、ニューヨークとシカゴの地下鉄駅と広告看板に出稿した。同社にとってはじめての屋外キャンペーンだ。ブランドサービスエージェンシー、ウォーン・クリエイティブ(Worn Creative)とともに「Suit Yourself(「自由に振る舞おう」「水着を着よう」の2つの意味を持つ)」というコンセプトを考え、アンディーの水着でダイビングやサイクリングに興じる女性たちを描き出した。

バーク(Bark & Co)でブランド体験部門を率いた経歴を持つアンディーの創業者兼CEOメラニー・トラビス氏によれば、アンディーはマーケティングミックスの拡大を図っているところで、屋外キャンペーンはその次なる一歩だという。ディスプレイ、ペイドサーチ、Facebook、インスタグラム(Instagram)、Pinterest(ピンタレスト)などのダイレクトレスポンス広告からはじめ、その後、ポッドキャスト広告を展開したアンディーは、2018年11月、はじめての屋外キャンペーンの計画に着手した。

「まるで社交界へのデビューだった」と、トラビス氏は振り返る。「会社が成長したら、ファネルの底部を担うダイレクトレスポンス広告だけでは不十分で、さらに手を広げる必要がある。ファネルの上部を満たすことができなければ、底部のコストが上昇し、その価値を超えてしまう。正当性の問題もある。いろいろな場所でブランドを目にしなければ、本物のまともなブランドだと思わない層がいるためだ」。

大部分がベンチャーキャピタル(VC)の出資を受けているD2CブランドはFacebook、インスタグラムなどのパフォーマンスマーケティングプラットフォームで顧客を獲得してきたが、現在、従来型のチャンネルに手を広げている。ソーシャルメディアでブランド広告に出くわす可能性がないオーディエンス、Facebookでしか見ることのないオンラインブランドから購入したいと思わないオーディエンスを獲得するためだ。Facebook、Googleなどの顧客獲得コストが上昇し続けていることも、D2Cブランドがテレビのような従来型のチャンネルに投じる予算を増やしている一因だ。動画広告協会(Video Advertising Bureau)の調査によれば、2018年、上位125のD2Cブランドを合わせると、前年比60%増の38億ドル(約4067億円)がテレビ広告に投じられている。

顧客獲得コストにはターゲットオーディエンス、カテゴリー、タイミングなど、さまざまな変動要因が存在するが、競争コストは確かに上昇している。あるマットレスブランドによれば、Googleでは「最高のマットレス(best mattress)」といった検索語の1クリック当たりのコスト(CPC)が15ドル(約1600円)に達しているという。1年前は10ドル(約1070円)だった。家庭用品ブランドのパラシュート(Parachute)は2019年に入ってからマットレスを発売したが、Facebookだけで1カ月に2万ドル(約214万円)を使ったと見積もっている。その結果、リーチできたのは、メディアミックスの多様化によってリーチできる数と同等だった。

ブランドはこうしたコスト上昇にうんざりし、ほかのチャンネルを検討しはじめている。そうすれば、幅広い層にリーチできるチャンネルのトリクルダウン効果を享受し、結果的に、コストを下げることができる。

eコマースプラットフォームを提供するプロダクツアップ(Productsup)のCEOマーセル・ホラーバック氏は、「デジタルファースト、パフォーマンスマーケティングから始めた企業はいま、屋外に飛び出せば、オンラインキャンペーンがより有益になるという現実を目の当たりにしている」と話す。「インターネットを閲覧している人が、Googleで既知のブランドの広告を見るという状況をつくれば、CPCは結果的に下がる。そして、マーケティング全体の効果が上がり、コストは下がる」。

つまり、従来型のチャンネルへの移行は必然ということだ。ただし、店舗を持ったり、量販店に商品を置いたりしている目的がそうであるように、D2Cブランドはこれらのチャンネルにデジタルブランドらしい現代的なひねりを加えようとしている。データが豊富なプラットフォームで商品を直販し、大量の顧客情報やインサイトを手中に収めたD2Cブランドには、アナログなチャンネルでのアプローチを刷新するチャンスがある。

実店舗や卸売りでは、顧客体験を見直すこと、小売企業とともに、データの共有方法やブランドの見せ方を考えることができた。しかし、マーケティング戦略を変更し、幅広い層に周知できるチャンネルに進出した場合、アトリビューションに関するインサイトや顧客情報をほとんどあるいはまったく得ることができない。そのため、思春期のようなぎこちない成長期を送ることになり、リソースの再配置、パートナー探し、新たな追跡手法、新たな顧客に対応するためのバックエンドの準備が必要となる。つまり、あらゆる広告チャンネルを股にかけた複雑な舵取りが必要ということだ。いまだブランド立ち上げの障壁は低いと思い込んでいるブランド創業者は覚えておいた方がいい。Facebookだけではブランドを構築できないということを。

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最終更新:9/9(月) 11:41
DIGIDAY[日本版]

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