ここから本文です

【書評】共生社会への旅:ケニー・フリース著『マイノリティが見た神々の国・日本』

9/9(月) 14:31配信

nippon.com

泉 宣道

ユダヤ系米国人の著者は究極のマイノリティ(少数派)である。足に障害があり、LGBT(性的少数者)、そしてエイズウイルス(HIV)患者だからだ。2度にわたる日本滞在を踏まえた本書は、障害をテーマとした日本印象記である。

障害を持つガイジンの居心地

著者は1960年9月ニューヨーク生まれの詩人・ノンフィクション作家。コロンビア大学芸術大学院でMFA(美術学修士)を取得。現在は米国のゴダード大学で教えている。日本滞在は最初(2002年5~11月)が日米芸術家交換プログラムの来日フェローとして、2度目(2005年9月~06年6月)はフルブライト奨学生だった。

「私には生まれつき両脚に欠けている骨があって、足の形が普通とは違っている」。下肢が短く、身長150センチの著者は「動き回るためには特別にデザインされた矯正用の靴と杖が必要である」

本書の副題「障害者、LGBT、HIV患者、そしてガイジンの目から」にあるように、著者は先天的な障害を持ち、ゲイ(男性同性愛者)である。2度目の訪日直前にはHIV陽性と判明、死の恐怖と隣り合わせのマイノリティになった。

日本滞在の主目的は「日本の障害者の生活を研究するため」だった。著者は研究者、芸術家、市井の人々らと幅広く交流した。札幌、『遠野物語』で知られる遠野、『奥の細道』に出てくる松島や平泉、熱海、弘法大師が開いた高野山、旧暦10月には八百万(やおよろず)の神々を迎えるという出雲大社など全国各地に精力的に足を運んだ。

広島には2回訪問し、被爆者たちにインタビューした。広島再訪では「原爆乙女」の生存者から生々しい被爆体験だけでなく、戦後、米国に渡り整形手術を受けた経緯や苦悩などを聴いた。率直に語ってもらえたのは「私の障害のせいだろうか」と著者は自問する。

マジョリティ(多数派)の“普通の人”から見たら、マイノリティである障害者は“普通ではない人”とみなされやすい。障害者である著者は「母国であるアメリカでは、部外者でないにもかかわらず部外者としての扱いを受ける」

ところが、日本では障害者としてより、部外者である外国人として扱われた。日本滞在中は「自分の国でのように障害者として扱われず、他のガイジンと同じ扱いを受けている」と感じたのだ。

「日本では、もし人が私をじろじろ見ていたとすれば、それは私がガイジンだからだ。日本では人々が私の障害についての感情を表に出さず、私も通りで嘲笑的な言葉を浴びせかけられるようなことはなかった」

1度目の滞在では都内のアパートに住んだ。「私は日本で、なぜこんなに心地いいのだろう。なぜ東京は、こんなに短い滞在でしかないのに、非常に多くの点でわが家のように思えるのだろうか」

「日本でくつろいだ気持ちでいられる理由は、それほど明確ではない。日本文化の中の何かが、私を受け入れてくれる」

1/5ページ

最終更新:9/9(月) 14:31
nippon.com

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事