ここから本文です

温暖化対策の切り札・EVにも逆風か、研究が進む環境汚染と車の関係

9/9(月) 6:01配信

ダイヤモンド・オンライン

● 車からマイクロプラスチックも排出

 大気汚染対策、あるいは地球温暖化対策として、電気自動車(EV)は現時点で最も有効な対策のひとつといわれている。欧州のメーカーは、こぞってEVを筆頭にしたプラグインハイブリッド(PHEV)などの電動車両の開発推進を明らかにしている。ところが、ノン・エグゾースト・エミッション(NEE、排出ガス以外からの排出物)に関する研究・調査が進み、今後はEVにも逆風が吹きそうな風向きだ。

 英国政府は7月、「クルマの排出ガス以外の汚染物質(NEE)対策が必要だ」という研究結果を明らかにした。ここでいうNEEとは、タイヤの摩耗、ブレーキパッドの摩耗、道路の損傷などから発生する微粒子を指している。こうした微粒子はマイクロプラスチック(一般的に直径5mm以下)と呼ばれ、海洋汚染の原因と指摘されている。

 実は英国の環境・食料・農村地域省は2018年の段階で、マイクロプラスチックが海洋環境に与える影響について調査結果を発表。「タイヤと道路が摩耗に伴って発生するマイクロプラスチックが海洋に流れ込んでいる」と報告していた。雨で粉塵が川に流れ込み、海に到達する。海まで流れていったマイクロプラスチックの多くは、海底に沈殿していく、と推定されている。マイクロプラスチックの増加は、海洋の生態系に影響を与える恐れがある。壊れた生態系を元に戻すのは難しい。

 NEEは、大気汚染の原因にもなる。英国政府の研究は「30年にはクルマから排出される微小粒子物質PM2.5は、全体の10%を占めるだろう」と指摘している。排出ガス規制強化による大気汚染の改善は認められているのだが……。

● クルマは超電導の非接触で走る乗り物に?

 英国は40年からガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する方針だから、場合によっては“タイヤレス、ブレーキレスで、排出ガスゼロのEV”の開発を、自動車メーカーは迫られるのかもしれない。そうなると、クルマは超電導の非接触で走る乗り物になるのだろうか。

 英国政府は「より汚染物質を出さないタイヤやブレーキのスタンダード設定」に向けて動いているという。さすがに、タイヤとブレーキなしの車両開発を求めてはいないようだ。しかし環境保護団体からは「それでは手ぬるい。市の中心部から個人車両をすべて排除すべきだ」という極端な意見も出ている。

 こうなると、もう“個人が乗用車に乗る行為自体を禁止する”以外の対策はなくなってしまう。政府が規制を設ければ、汚染物質の排出が少ないタイヤやブレーキの開発は可能だろう。だが、タイヤと道路、ブレーキローターとブレーキパッドというように、摩擦力を利用している限り、排出物質は決してゼロにはならないだろう。また、マイクロプラスチックの排出を抑制したタイヤやブレーキを商品化するには、研究開発費がかかる。そのコストは、製品に反映され、最終的にはユーザーが負担することになる。

 政府へのアドバイスを行った大学教授は「これまで政府は増え続ける都心部の交通へのひとつの回答として、“道路幅を広くする”などの対策をとってきた。しかし、それは渋滞対策にはなっても、公害対策にはならなかった。今後政府が求めるべきは、公共交通の充実により、都市の中心部に個人がクルマを乗り入れない社会だろう」と語っている。

 しかしこれを実現するには、都市の外側で大型駐車施設の完備が必要だ。また、郊外からスムーズに通勤できる交通システムを確立しなければならない。どうしますか?ボリス新首相。

 (報告/土方細秩子、まとめ/CAR and DRIVER編集部)

CAR and DRIVER

最終更新:9/9(月) 6:01
ダイヤモンド・オンライン

記事提供社からのご案内(外部サイト)

週刊ダイヤモンド

ダイヤモンド社

19年9月21日号
発売日9月17日

定価710円(税込み)

特集 日韓激突!
ものづくりニッポンの悪夢
特集2 ウェブサイト価値 2019
特集3 チェンジリーダーの哲学

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事