ここから本文です

日韓関係の険悪化は中国にもマイナス

9/9(月) 18:00配信

日経ビジネス

 日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)は日韓、ひいては日米韓の軍事協力を象徴する協定だ。安全保障上、この協定の持つ象徴的な意味は、実体以上にはるかに大きい。国家の最重要課題は、自国の安全と繁栄の確保にある。GSOMIAは、何よりも安全保障の観点から、その可否が導き出されるべき性質の問題なのだ。北東アジアの安全保障環境をどう認識し、それにどう対処するかというのが可否を判断する基本だ。

 ところが韓国においてこの問題は簡単に日本問題、すなわち歴史問題の中に放り込まれてしまい、感情の渦巻く内政問題となってしまう。日韓がこの協定をめぐる交渉を始めて以来、常にそうだった。今回も内政問題化し、結局、政治的に利用された。安全保障の視点が消えてしまうのだ。

 軍事安全保障の世界は、まず脅威認識があり、それに対処する戦略があり、戦略を実現する戦術がある。常時見直す必要はあるが、この、全ての根本である脅威認識は簡単には変わらず、戦略も戦術も基本的には安定している。この視点から眺めればGSOMIAを破棄する安全保障上の理由はない。北朝鮮の脅威はむしろ増大している。北朝鮮の核兵器にどう対処するかという挑戦はより一層深刻となっている。中国が軍拡路線を続ける限り、米国を含む近隣諸国に対する脅威と圧力は増大する。日本も韓国も単独で、この脅威の増大に対処するすべはない。日米韓3国の安全保障体制は必要であり、不可欠なのだ。

 韓国の不幸は、安全保障の持つ重要性に関する国内コンセンサスがない点にある。大統領が代わり、政権党が代わるごとに、そこが動揺する。日米韓3国の軍事協力体制を強化することが韓国の絶対的国益だというコンセンサスができなければ、韓国は結局、自国の安全保障を危うくしてしまう間違いを犯す。より多くの国民がこのことを認識し、政権交代が安全保障政策の動揺をもたらさないようになることを願う。ポピュリスト政治に対する最善の対抗策は、国民がしっかりすることなのだ。

 韓国によるGSOMIA破棄は中国を喜ばせるだけとの見方が広まっている。だが中国にとって、韓国のGSOMIA破棄が作り出した状況は決してプラスだけではない。マイナスもある。複雑なのだ。

 軍事安全保障の観点から見れば、米国のミサイル防衛の重要な一角を担うTHAADミサイル(地上配備型ミサイル迎撃システム)の韓国配備の方が影響ははるかに大きい。中国の対米ミサイル攻撃能力に直接、大きな影響を与えるからだ。だから中国は韓国に対し尋常ならざる圧力をかけた。

 しかし中国は、日韓GSOMIAに象徴される日米韓の軍事協力の強化が、中国とロシアを押さえ込む米国の大きな戦略の一部だと見なしている。これが破綻することは中国に対する圧力がそれだけ低下することを意味し、中国にとってプラスとなる。

1/2ページ

最終更新:9/9(月) 18:00
日経ビジネス

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事