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【投資環境の見通し】米中対立再燃を受けたシナリオ再検討

9/10(火) 6:30配信

幻冬舎ゴールドオンライン

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「ハウスビュー/吉川レポート」を転載したものです。

米中対立が再びエスカレート

米中通商対立の根本的な解決は容易でないことはもともと明白だったが、大阪G20サミット以降、互いに限定的ディールに絞って交渉し、大枠は一旦凍結する局面に入ったのではないかとみられた。しかし、8月に入り米トランプ政権が対中制裁関税追加方針に転換(8月1日)、両国が報復を応酬(8月23日)するなど想定以上にエスカレートすることになった。

支持率回復を求めて農業などで短期的成果を求めた米国と、交渉時間をかける姿勢の中国との間でズレが発生したものとみられる。トランプ大統領は圧力によって妥協を引き出せると予想したのだろうが、国民に対する権威維持を重視する習近平政権は逆に態度を硬化させた。習近平政権側は大統領選挙を前にしたトランプ政権の焦燥を過小評価していたのではないかと推測される。

報復の応酬直後にトランプ大統領が交渉再開を表明したことが示すように、米中共に交渉のチャネルを閉じてはいない。

データが明らかに示す通り、通商対立が経済・金融に一定のストレスを与え始めており、状況によっては事態を管理する必要性を双方とも感じているのだろう。しかし、今回のように事態がこじれ、特に中国側が交渉相手としてのトランプ大統領に対し、不信感を強めたことは容易に推測がつく。双方にとって妥協に向けた政治的ハードルは高まっている。

世界経済の成長見通しを下方修正

このままだと、米国側の対中制裁関税は9月1日(新規の約1,000億米ドル相当に15%)、10月1日(既に実施済み2,500億米ドル相当の税率を30%に引き上げ)、12月15日(新規分1,500-2,000億ドルに15%)の三段階で追加される。中国側の報復分も9月1日、12月15日に発効する。

今後は、(1)12月より以前に、追加関税の賦課が停止・延期される、(2)9月1日を皮切りに年内に予定される関税は実施されるが、双方とも交渉のチャネルは閉ざさず、更なるエスカレーションは回避する、(3)交渉が事実上決裂し、双方が更なる措置を追加する、という3つのケースが考えられる。上で述べたように妥協のハードルは高い一方、更なる激化は危険なため、(2)のケース(既定の措置は実施するが一層の激化は回避)をメインシナリオとしたい。

世界経済への影響だが6月末までに米中が実施した政策により、世界GDPは既に0.3~0.4%程度の悪影響を受けていたと推定される。今回、ケース(2)を前提とすると、マイナスの影響は0.7~0.8%程度に(更に0.4%ポイント程度)拡大する。主要国の金融緩和策や中国の財政措置を考慮しても、世界経済を0.2~0.3%押し下げる。これらを考慮し、世界経済の成長率を2019年(3.2%→3.1%)、2020年(3.5%→3.4%)共に0.1%ポイントずつ下方修正した。また、主要国の製造業企業の景況感底入れのタイミングは来年初に後ずれするとみている。

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最終更新:9/10(火) 6:30
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