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認知症の母と暮らす脳科学者が見つけた“希望”

9/10(火) 7:50配信

東洋経済オンライン

アルツハイマー型認知症と診断された実母と生活をともにし、今も様子を見続けている、脳科学者の恩蔵絢子さん。母と暮らす中で、認知症の症状が進んでも、本人の趣味嗜好が生活の希望となることを感じたという。
今回は、30~40代の脳にまつわる「感情」「理性」「記憶」の問題に答えた前回記事からさらに踏み込み、認知症の脳について考える。

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前回記事:脳科学者が語る「直感をバカにしてはいけない」

■治療法がないのであれば、母の自尊心を保つ行動を

 ――恩蔵さんのお母様について教えていただけますか? 

 2015年1月から、私の母は日常の中で、小さな勘違いが増えていきました。例えば、すでに買ったはずの生活用品を買い足したり、三分咲きの桜を見て「桜が満開!」と言ったりしました。

 それを見た娘である私からは「えっ?」というようなびっくりした顔を向けられる。それで、母も自分のミスに気づいてしまう。母は家族から驚かれ、本人も混乱し落胆するという、とても苦しい時期を過ごしました。

 自分の脳科学の知識を基に母を見ると、「どうも新しく脳に入ってきた情報を定着させる海馬に問題がありそう。おそらく母はアルツハイマー型認知症だ」と見当がつきました。でも私自身が母の状態を受け入れられず、病院に行くのをためらっていました。結局、母がアルツハイマー型認知症と診断されたのは、それから10カ月後でした。

 認知症の解明はまだ進んでいません。アルツハイマー型認知症の人の脳には、脳が自ら分解して回収しきれなかったゴミのような物質(老人斑と神経原線維変化)がたまっていることはわかっています。

 しかし近年、老人斑のもととなるアミロイドβを取り除いても、アルツハイマー病の進行は止められないとの研究報告が複数なされました。現在認可されている薬は、神経細胞の伝達をよくし、進行を遅らせるには効果があるかもしれないというもので、アルツハイマー型認知症を完全に治療することはまだできないのが現状です。それ以外に治療法がないのであれば、母の好きなものを生活の軸に据えて、楽しく暮らそうと考えました。

 ――お母様の好きなものは何ですか? 

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最終更新:9/10(火) 7:50
東洋経済オンライン

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