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賞金3億円の大型科学賞、ブラックホール撮影に授与

9/11(水) 7:11配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

科学の壁を突き破った「ブレイクスルー賞」が発表、トウガラシ研究も受賞

 科学界のアカデミー賞とも言われるブレイクスルー賞の受賞者が発表された。人類が初めて目にした巨大なブラックホールの画像、神経変性疾患を引き起こすもつれたタンパク質、痛みを脳に伝える経路など、科学の壁を突き破った研究が表彰される。

ギャラリー:ブラックホールの謎に迫る宇宙の画像 6点

 ブレイクスルー賞は主要な各賞の賞金が300万ドル(約3億2000万円)と、科学分野では最も賞金額が高い。ユーリ・ミルナー氏やマーク・ザッカーバーグ氏ら、シリコンバレーの大物たちが出資し、生命科学、基礎物理学、数学の3分野における最先端の業績を称える。また、他の有名な科学賞と違い、少数の選ばれた個人ではなくチームが受賞することが、ブレイクスルー賞では珍しくない。

 例えば、今回の基礎物理学ブレイクスルー賞は、M87銀河の中心にある巨大ブラックホールを画像化した「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT:事象の地平線望遠鏡)」チームのメンバー347人に授与されることが発表された。人数があまりに多いことから、秘密保持のため、受賞について知っていたのはメンバーのうち1人だけだった。

「ほかのメンバーに伝えるのが待ちきれません。ずっと黙っているのが大変でした」。こう話すのは、プロジェクトリーダーで、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのシェップ・ドールマン氏だ。

 今回の発表ではブラックホール撮影のほかに生命科学で4組、数学で1人と、計6チームの受賞が発表された。受賞者は、11月3日に米カリフォルニア州のNASAエイムズ研究センターで開催される授賞式で表彰され、ナショナル ジオグラフィックが生中継する。今回受賞した研究のうち、二つを以下に紹介する。

ブラックホール撮影、次の目標

 M87の中心にあるブラックホールは、質量が太陽のおよそ65億倍に相当する。地球に近いものとしては屈指の大きさであり、EHTのターゲットとして申し分なかった。

 2017年4月、プロジェクトチームは世界各地の6つの天文台にある8台の望遠鏡を結び、実質的には地球サイズの望遠鏡を作り上げた。そしてその望遠鏡をM87に向けた。目標は、光さえも逃れられない質量の塊、ブラックホールを撮影することだった。

 今年4月、チームはその画像を発表した。燃えるような色をしたリングに囲まれ、ぽっかり開いた暗い穴が写っている。

「このプロジェクトの大部分は、リスクを覚悟し、障害があってもやり続けることでした。天文台に対して、望遠鏡を使わせてほしい、そして新しいことをやりたいと説得する必要がありました。各望遠鏡にそのような資金が出ておらず、それができるような設計もされていなくてもです」とドールマン氏は話す。この過程では、上級科学者から若手研究者まで、EHTコンソーシアム全体で尽力しなければならなかった。

 チームは現在、地球に最も近い超大質量ブラックホールの画像化に取り組んでいる。「いて座A*(エースター)」と呼ばれ、私たちがいる銀河系の中心で高速回転しているブラックホールだ。また、これら2つのブラックホールをとらえた動画の作成も目指している。

「今、我々が大きな関心を向けているのは、初のブラックホールの動画をリアルタイムで制作し、ジェットの噴出を観察したりすること、ブラックホールを周回する物質を用いてアインシュタインの理論を検証することです」とドールマン氏。「時空を研究する、全く新しいアプローチです」

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