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「親ハラスメント」に悩み続けて…。リアル毒親体験を描いた『母がしんどい』田房永子さんの生き方

9/11(水) 21:00配信

レタスクラブニュース

母親が自分の宿題をやってしまう、突然決められる習い事、喧嘩したら職場に抗議の電話…。

母親との関係に苦しむ全ての人に送る「母がしんどい」。【私のお母さんは怒ると豹変します】

これ全て、ある母親と娘との実話。

コミックエッセイ「母がしんどい」は“毒親”に育てられた娘が苦しみ抜いた末に自立し、自分なりの幸せをつかむまでを軽快なタッチで描いたもので、さまざまな反響を呼んでいます。

今回、著者の田房永子さんにお話をお聞きしました。

その言葉は、母親との関係に苦しむ全ての女性へのメッセージです。

■ 「親に従ういい子」に見せておいて、自分の人生はあきらめていませんでした

――『母がしんどい』には、お母様のほかに、お父様も登場しています。田房さんから見て、お2人はどんな方ですか?

「子どもの頃は、母のことは情緒が豊かで愛情深い人、父は寡黙な人だと思っていました。両親と付き合うのが困難になった29歳の時は、それまでの印象とまったく別のものになり、ひどい人たちだと感じるようになりました。そこから親と距離を置いて10年以上経ち、自分の人生を両親に振り回されない自信がついてからの2人の印象は、自分とは違う時代を生きた人たち、という感じです」

――自分なりにご両親と闘って、自信を持たれたんですね。小さいころの田房さんは、今、改めて思い返すと、どんなお子さんでしたか?

「『おかしい』『なにこれ?』『どういうこと?』と思ったら、大人に質問したり、しつこくそのことを覚えている子どもだったと思います。だいたいのことは『大人になればわかる!と言われていたので、『大人になってこれがどういうことだったのか知りたい』とノートにメモしているような子どもでした。小学校の先生からは露骨に嫌われていましたね。小さいころから絵を描くことが好きで、小学校5年生の時には漫画家になると決めていました」

――著書にはお母様のさまざまなエピソードが描かれていますが、いつごろから「うちのお母さん、変わってるかも…?」と思い始めたのでしょうか?

「小・中学の時も母の理不尽には怒りを感じてましたが、基本的に母が正しいと思っていたんです。でも、高校に入っても毎日のように母が罵ってきたりするので、高2のある日、『本当にこいつはおかしい』と心の中の呼び名が『こいつ』になった瞬間がありました」

――実の母親を『こいつ』とは、普通の子どもはなかなか思わないですよね。お母様はある日突然、ピアノなどやバレエなどの習い事に通わせたかと思ったら、意思も確認せずいきなりやめさせたり、私立中学受験なども独断で決めていました。かなり振り回されたと思うのですが、どのように感じていましたか? 

「私は、黙って親に従うタイプではありませんでした。『嫌だ』と思ったら泣いてわめいて大絶叫し、自分の要望を母に懇願する子どもでした。でも、母はその上をいっているので、結局は母の思いどおりになります。

親が子どもを思いどおりにするのは、脅したり泣き落としたりすればいいのでとても簡単です。例えば『学校のみんなに言う』とか『じゃあ出て行け』とか。親にそこまで言われたら子どもは逆らえません。子ども側としては命や人生と引き換えに親の言いなりになる、という感覚なのです。だけど親は『説得できた』『子どもは納得した』と思うことができます。親というものは、子どもにとってすべての権力を所有する支配者なので、権力をそういう風に使うこともできるんです。だけど私は、母にそういうことを繰り返されているうちに母を内心バカにするようになりました。本当は『あきらめ』て母に従っているのですが、母からは『従って』いるように見える。そして私としては自分の人生についてはまったく『あきらめ』ていない。母を『こいつ』と思うことは一見よくないことに思えるけど、そうすることで当時の私はいろいろなバランスをとっていたんだと思います。」

■ 母の言動は親から子へのハラスメント。今では少し理解もできるように

――田房さん、精神的に強かったんですね。そんなお母様の言動はかなり偏っていますし、自己中心的なのですが、「子どもが憎い」という感情は見当たらず、お母様なりに田房さんを愛し、大切に思っていたことも伝わってきます。小さいころはたくさん抱っこしてくれたり、なにかあると「あなたを愛しているのよ」と言ったり。

「少し前はこんなことまったく思えませんでしたが、母は愛情がたくさんある人だと今は感じます。その発信方法や距離の取り方が当時はだいぶおかしかった、とは思いますが。母と平和に接することができるようになっても、『この人の娘は本当に大変だっただろうなあ』と感じることがあります。そういう時は、大人になって“親に人生を振り回されない自信のついた”私が、“親に人生を振り回されて苦しんでいた”子どものころの私をねぎらうことに集中することにしています。不思議な癒やしの時間が過ごせます」

――その後、田房さんは結婚し、子どもにも恵まれました。いまの田房さんから見て、当時のお母様の言動を理解できる部分はありますか?

「自分が親になってみて、理解できる部分もあります。『あ~、なるほど、こういう時は、そういうことをしたくなる気持ちになるんだな』とか。自分が母と同じようなことを子どもにしてしまう時や、してしまいそうな時、している人を見た時に思うのは、『私(親)自身が不安なんだな』ということです。

親は、自分自身の不安や心配事を、子どもの問題としてすり替えてしまうことができます。子どもに問題が起こっていると錯覚してパニックになってしまったりということを親は起こしやすい立場です。親である自分の言動の影響で子どもがそうなっている場合に、親は自分のせいではない、と切り離してしまえることができます。例えば、上司の命令でやった事を、上司本人がその命令を忘れていたりとぼけたりしてこちらのせいにされたり、立場を脅かされて無茶な要求を通されたりするのはパワハラと呼ばれますが、親子関係にもそういったハラスメント的なことが起こります。」

――“親ハラスメント”ということですか!?

「親子は、親という強者(支配者・権力者)と、子どもという弱者(被支配者・被権力者)で成り立っているので、そこにハラスメントが生まれるのは自然なことだと思います。もはや、そこに両者がいるだけでハラスメントは起こっている、くらいの感じです。そこを強者側が自覚しているかいないかで、子ども側の苦しさはだいぶ変わると思います」

――親から子どもへのハラスメントとは、考えたことがなかったです。

「子どもを持った瞬間に、自分が急に強者側になってしまう。だけど同時に、親にとって子どもである自分もいるわけですよね。子どもが20歳くらいになった時、親が親としての権力を意識的に手放してちゃんと世代交代している家庭もあるように思います。だけど、孫ができても、親の座を降りない親もいます。親の座を降りない親の子どもは、自分自身が子持ちになっても親からハラスメントをナチュラルに受けている状態だったりします。そういう、親にとって弱者のままの状態で、自分自身が子どもにとっての『強者』になったという自覚を持つのはものすごく難しいと思います。

親が自分に嫌なことをしてくるのは『私が悪いからで、私のためなんだ』と思ったままで、子育てをするのはとても大変なことだと思います。それは、親から傷つけられたことを肯定して、自分の心の傷を放置している状態だからです。自分の心がボロボロに傷ついていて、さらに現在進行形でどんどん傷つけられるという環境で、自分の子どものことは傷つけないように接するなんてことは、人間にはなかなかできることではないと思います。やはり、相手が親であっても、自分がされて嫌だったことは絶対に拒絶したり、つけられた傷を癒やすためにその本人と距離を置いたりすることが、とても大切なことだと思います。

私の母は、そういうことをまったく知らずに私を育てていたんじゃないかなと思います。だから、当時の私があれだけ苦しかったのは当然のことだと思います。母と父が憎くて、心の中で気が済むまで恨みまくりました。人からどう思われても、そうやって自分の味方をして自分のことを10年間ねぎらい続けて、やっと『両親もいろいろあったんだろうな』と思うようになりました」

■ 理不尽な言動を“許す”ことでは解決しない。自分の子どもにも影響を与えます

――苦しかった体験を赤裸々にコミックエッセイを描いてみて、周囲の反応はいかがでしたか?

「こんなことで母をしんどいとか言うな! と怒られると思っていましたが、主人公のエイコに同情する意見が圧倒的に多く、『私も同じ環境で育ちました』という人たちともつながることができました。一方、テレビで紹介された時のお茶の間の反応は『お母さんを許してあげて』というものが多かったです。『お母さんだって大変だったのよ』とか『お母さんだって人間なんだから』とか。だけど『母がしんどい』人は、母の暴言や凶行をずっと『私が悪いんだ』と思い、延々と許してきた人なんです。『今度こそはわかってくれるはずだ、お母さんなんだから』『お母さんだって苦労してるんだから』『お母さんだって人間なんだから』と、ずっと許してきた人たちです。それが限界に達し、底をついて『これ以上許していたら私の人生がめちゃくちゃになる。もしかして許さなくてもいいんじゃないか? 許さないという生き方もあるんじゃないか?』と気づいた人たちなんです。そういう人たちに対して『許してあげて』という言葉は完全にお門違いで、トンチンカンでしかありません」

――結局、自分で体験していなければ、苦しんできた人の本当の気持ちは理解できないかもしれませんね。

「『親は大切にするべき』等、世の中で当たり前の通俗として浸透していることというのは、意外と個人の心に染みついていて、何よりも強固な決まりとして強烈に自分に作用している場合があります。

自分の中で『いい年になって親のことを恨んでいたりするのはみっともない』とか『許してあげるのが大人なんだ』と思っていると、表面的に『許した』『自分には何も問題はない』と思い込むようになります。本当は自分の心は傷だらけで悲鳴を上げているのに、それを自分自身が黙らせてしまうんです。でも、それだと心は全く解決していないどころか悪化します。自分に対しての信頼がなくなるので、今度は自分以外の誰かにわかってもらおうと、心の悲鳴が外側に向けてどんどん大きくなります。それはいろんな形で現れます。周りの人の目が気になりすぎるようになったり、クレーマーになったり、キレやすくなったり、悲しんで落ち込むことがひどくなったり、日常を逸脱した行為や、様々な行動で自分へのメッセージを自分が出してくるようになります。

それは実は自分の『問題』であり『悲鳴』なのに、自分では『私はもう親を許したし、何も問題がない』と思っているので、『問題は別の人のものだ』と感じるようになります。その『別の人』になりがちなのが、自分の子どもなのです」

――心を抑えてきた自分が、子どもにも影響を与えるのですね。

「そう思います。だからいつも、自分の心に注目して、自分は子どもにとって強者なんだと自覚を持つようにしています。だけど、子どもに対する自分の態度や接し方が、ひどいなー、うまくできないなーと思うこともしょっちゅうあります」

今では両親との付き合い方に自分なりの基準も持てるようになったという田房さん。『母がしんどい』には、毒親との関係に苦しんでいる女性だけでなく、子育て中のママへのアドバイスも多く隠されているような気がします。1人で悩まずに、まずは読んでみてはいかがでしょう。何か解決の糸口が見えてくるかもしれません。

取材・文=岡田知子(BLOOM)

最終更新:9/11(水) 22:35
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