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東京五輪、お台場会場は大腸菌だらけ? トイレ簡易処理水を放流

9/12(木) 11:17配信

週刊金曜日

 日本トライアスロン連合は8月17日、来年の東京五輪・パラリンピックのテスト大会を兼ねて行なわれたパラトライアスロンのワールドカップを、会場の都立お台場海浜公園(港区)の水質悪化のため、スイム(0・75キロメートル)を中止し、ラン(2・5キロ)、バイク(20キロ)、ラン(5キロ)のデュアスロンで実施した。水質検査で大腸菌の数が国際トライアスロン連合の基準上限の2倍を超え、水質リスクが4段階で最悪のレベル4と判定された。

 東京都の小池百合子知事は8月23日の定例記者会見で、お台場の水質対策について「効果があったことが認められておりますので、来年の本番では、三重のスクリーンを張っていく」と述べた。「スクリーン」とは、本来は海洋土木工事で汚染拡散防止用に張るポリエステル製の幕だ。今夏のテスト大会では一重だったのを来夏の本番では三重にするというのだ。

 確かに、都と東京2020組織委員会が、昨年7月から9月にお台場で行なったスクリーンの実験では、大腸菌は三重のスクリーン内では調査期間すべてで基準内だった。だが、同時に行なわれたスクリーン外の水質水温調査では、台風などの影響で大腸菌の数値が調査した27日間のうち12日間で水質基準を超過していた。

 また、水温については基準を超えた日はなかったが、スクリーン内側は外側と比較して平均約1度(最高3・8度)高かった。スクリーンを張ればある程度大腸菌は抑制できるが、水温が上がってしまうのだ。都と組織委は今後、スクリーンを開閉する対策を検討するとしている。

【レガシーになる水質改善策を】

 これに対して、お台場を泳げる海にする活動を長年続けている港区の榎本茂区議(都民ファーストの会)は「都はお台場を普段は遊泳禁止にしています。東京湾は通常干満差が2メートルあり、スクリーンを三重にしてもすき間から汚濁物質や雑菌は入ります。一緒に研究している東京大学の鯉渕幸生准教授(水工学)も同意見です」と言う。

 そもそも、東京湾岸にはタワーマンションなどがどんどん建設されているのに、下水処理場の処理能力が追いついていない。

 加えて現在都内23区の下水道の約8割がトイレや台所などからの汚水と雨水を一緒に処理する合流式という問題もある。処理能力を超えた分は、下水処理場の浄化槽を通さず、塩素をまぜただけの「簡易処理水」として放流されるだけでなく、約700カ所の下水排水口から越流水として河川に直接放流される。お台場に近い芝浦水再生センター(港区)の場合、都の下水道局によれば、「簡易処理水」だけで2018年度で年間83日間放流、放流量は1500万立方メートル、東京ドーム12杯分以上にのぼる。都は、区部の合流式を分流式に改築するには、「総額で約10兆3000億円程度と想定」、改築に消極的だ。

 榎本さんは、五輪・パラリンピックのレガシー(遺産)になる水質改善策を提案している。お台場に近接する有明水再生センター(江東区)の高度処理水を圧力をかけて流して大腸菌の流入を抑え、硫化水素などの発生源のヘドロを浚渫、その上に砂をまく案だ。

 だが、筆者の取材に、都は「榎本さんの提案は承知しているが、三重スクリーンは効果が出ています」と答えた。榎本さんは、小池知事に直接提案するつもりだ。

 別のレガシーの提案もある。東京湾の干潟保全に取り組む「三番瀬を守る連絡会」の中山敏則代表世話人は「東京湾は天然の下水処理場である干潟に囲まれ、江戸前の海の幸に恵まれていました。が、埋め立てが進み、現在自然の干潟は三番瀬と盤洲干潟くらい。水質浄化力のある干潟や藻場を増やせばレガシーになります」と話した。

 都も汚濁物を従来の2倍除去できる高速ろ化施設を来夏までに6カ所の水再生センターに導入するなどの対策をとってはいるが、水質が大幅に改善されるかは未知数だ。いずれにせよ本番をスクリーンに頼るのはその場しのぎだ。

(永尾俊彦・ルポライター、2019年8月30日号)

最終更新:9/12(木) 11:20
週刊金曜日

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