ここから本文です

イノベーションはどこまで「管理」できるか 清水洋・早稲田大商学学術院教授に聞く

9/12(木) 12:03配信

日経BizGate

イノベーションには経験的なパターン

 ビジネスの最前線で「イノベーション」という言葉を聞かない日はないだろう。1100社を超える日本の上場企業が、決算報告書の中でイノベーションを取り上げている。その数は10年前の4倍以上に増えた。しかし肝心のイノベーション創出に、なお試行錯誤のケースは少なくない。どう具体的に促進していくのが、最新の経営学の成果を清水洋・早稲田大商学学術院教授に聞いた。

 ――経済学のシュンペーター教授が1911年にイノベーションの重要性を指摘してから100年以上たちました。英国における産業革命以降の研究では、イノベーションには経験的なパターンがみられるのですね。

 「イノベーションが継続的に生まれるには(1)イノベーターが報いられる、(2)権威主義からの脱却、(3)低い資本コスト――の3条件が必要です」

 「イノベーションには、あたかも野生動物のようにさまざまな習性があります。1度軌道に乗り始めると加速度的に進んでいきます。従来の市場の需給関係を壊して不均衡を創出したイノベーションが、次のイノベーションを呼び、新知識への投資は後続の研究開発にとって重要なインプットになります。新しいビジネスチャンスを求めて国境を越え自由に移動し、群生するイノベーションの性質もあります」

 ――人々の生活様式を変えるような画期的なイノベーションは自然に波及していくものなのですか。

 「大きな経済的価値を生み出すラディカル(急進的)なイノベーションは、それが生まれた時点では、粗削り過ぎてほとんど使いものになりません。人工知能(AI)のアイデアは1950年代から議論されていました。自動運転技術の原点は78年です。改良を重ねていくことで実用化につながるのです。経営学の研究ではプロセスを改善していく累積的なイノベーションの重要性が何度も認識されています」

 「米ハーバード大とコーネル大の研究者は、既存企業の強みを破壊するようなイノベーションは新規参入者が開発していた一方で、累積的なイノベーションは既存企業からもたらされていたことを明らかにしています。日本の場合、累積的なイノベーションには優れているものの、急進的なものは少ないと指摘される理由のひとつは、米国に比べての新規参入の少なさにあります」

1/4ページ

最終更新:9/12(木) 12:03
日経BizGate

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事