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思い出として死者のタトゥーを残しませんか

9/12(木) 15:28配信

ニューズウィーク日本版

<大切な人を亡くした遺族が望めば、遺体のタトゥーを皮膚とともに切り取り、額に入れていつまでも飾っておけるように加工するビジネスがある>

遺体のタトゥーを皮膚ごと切り取って保存用に加工し、思い出の品に生まれ変わらせるビジネスがアメリカにある。

【動画】額縁に入った故人のタトゥーを見る

オハイオ州のマイケル・シャーウッドと息子のカイルが2006年に立ち上げた「セーブ・マイ・インク・フォーエバー」だ。カイルがオーストラリアのナインニュースに語ったところによれば、きっかけはマイケルが友人から「自分が死んだ後、タトゥーを保存したい」と言われたこと。

「タトゥーは立派なアートだし、思いも込もっている。だったら死後も保存しても構わないじゃないか」と、その友人は言った。「遺灰を骨壺に入れたり、大切な人の名前を墓石に刻んだりするのと同じことだ」

シャーウッド親子はその後、切り取った皮膚を生きたままのような状態で保存する方法を調べ始めた。3~4カ月かかる場合もあるというその工程を、2人は明かそうとはしない。加工賃はタトゥーの大きさにもよるが、英インディペンデント紙によれば1000ドル程度が一般的だという。

<ランプシェードにするのはお断り>

遺族がタトゥーの保存加工を希望する場合、葬儀場からシャーウッド親子に連絡がくることになっている。加工を終えた皮膚は、タトゥーの鮮やかな色と図柄はそのままにシリコン加工された平らな紙のような質感になる。「作品」は、額装されて遺族の元に届けられる。

シャーウッド親子は、これまでに遺体のさまざまな部分にあるタトゥーの保存加工を行ってきた。二の腕から背中まで背面を大きく切り取った見事な作品も幾つかある。

だが顔や性器のタトゥーはサービス対象外。故人のタトゥーでブックカバーやランプシェードを作って欲しい、という依頼も断っている。「遺族の最後の望みを叶えるのが僕らの仕事だ」とカイルはワシントン・ポスト紙に語った。「遺体の一部を見世物にすることじゃない」

<先駆者は戦前の日本人>

遺体のタトゥーを保存したのは、セーブ・マイ・インク・フォーエバーが初めてではない。20世紀前半、日本の医学博士で梅毒が引き起こす皮膚の病変についての研究を行っていた福士政一が、刺青(タトゥー)に覆われた部分の皮膚が病変に侵されないことを発見。それから福士は、遺体の皮膚の刺青部分を保存するようになった。第2次大戦の頃までにはその数は2000点にのぼった。多くが戦時中に失われたが、息子の福士勝成が標本を引き継ぎ、現在は東京大学の病理標本室に保管されている。

著名なタトゥー・アーティストであるエド・ハーディーの回顧録『夢を着よう/タトゥーと私の人生』に勝成の話が出てくる。それによれば彼は、慈善病院を訪れて患者に刺青を完成させる費用の負担を申し出て、彼らが望めば死後に遺体の皮膚を切り取って保存することを約束して回っていたという。

(翻訳:森美歩)

K・ソア・ジェンセン

最終更新:9/12(木) 19:46
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