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チェルシー、ノルマはまさかの…。エース流出、補強禁止、DF再編。終わりにすべき泡沫の恋【粕谷秀樹のプレミアリーグ補強診断(5)】

9/13(金) 10:20配信

フットボールチャンネル

 2019/20シーズンは、夏の移籍市場が終了した。この夏も各チームで様々な移籍があったが、それぞれ主要クラブの動きはどうだったのだろうか。今回はプレミアリーグでおなじみの粕谷秀樹氏がチェルシーの補強を読み解く。(文:粕谷秀樹)

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●アザール不在に解決策はなし

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 補強を診断するまでもない。18歳未満の選手を獲得する際にルール違反を犯し、チェルシーはこの夏と来年1月の移籍市場で身動きひとつできなくなった。また、エデン・アザールがレアル・マドリーに新天地を求め、ダビド・ルイスもイングランドの市場が閉鎖する8月8日に、ローカルライバルのアーセナルに去っていった。昨シーズンとの戦力比は明らかな大幅ダウンである。

 とくにアザール離脱の穴は大きすぎる。昨シーズンのプレミアリーグで16ゴール・15アシストを記録。チェルシーが挙げた総得点63の49%に絡んでいた大エースの代役を、だれが務められるというのだろうか。

 クリスティアン・プリシッチが近未来のアイコンだとしても、まだまだアザールの域には達していない。ウィリアンやペドロは有能なチャンスメーカーで、オリビエ・ジルーのポストワークも貴重な武器だが、いずれも決定力に欠ける。

 アザール不在をどのようにカバーするかは、今シーズンのチェルシーが抱える難しすぎるテーマだ。解決策はおそらくない。

 D・ルイスとチェルシーは、双方合意による契約解除に至った。フランク・ランパード新監督も、リーグ開幕前日の公式会見で次のように述べている。

「彼(D・ルイス)と本音で話しあった結論が移籍だった。ピッチ上には常に闘いが存在し、先発の座も実力でつかみ取らなければならない」

 ランパード監督は自由競争を促したが、D・ルイスは定位置の確保を求めたのだろう。考え方に大きな差があるのだから、残留は難しい。この機に乗じたのがアーセナルだ。D・ルイスとは旧知の間柄であるディレクターのエドゥが、わずか数時間で交渉をまとめたという。

●ダビド・ルイス退団で守備陣はどうなる…?

 しかし、チェルシーにすれば頭が痛い。D・ルイスはプレシーズンツアーに帯同し、日本では専門誌のインタビューで今シーズンの抱負を語っている。ポジションを約束しなかったとしても、ランパード監督は重要人物のひとりとして位置づけていたに違いない。それほどの男が移籍市場の最終日に退団した結果、センターバックは再編を余儀なくされた。

 膝の故障で戦列を離れているアントニオ・リュディガーが戻ってくるまで(10月中旬復帰予定)、アンドレアス・クリステンセン、フィカヨ・トモリ、クルト・ズマの3選手で持ちこたえなければならない。

 一昨シーズン、アントニオ・コンテ監督(当時/現インテル・ミラノ監督)が採用した3バックで、クリステンセンは才能が開花した。昨シーズン、ズマはローン先のエヴァートンでDFの軸として活躍した。しかし、対戦相手がタフにチャレンジしてくると、両者とも浮足立つ傾向にある。

 とくにズマはボーンヘッドが少なくない。開幕節のマンチェスター・ユナイテッド戦でPKを与え、4節のシェフィールド戦でもオウンゴール献上した。

 エンゴロ・カンテは最終ラインの前で必ずや奮戦し、今シーズンもチームのカギを握るはずだが、D・ルイス離脱のダメージはどこまで軽減できるだろうか。前出のシェフィールド戦も、2点のアドバンテージを守り切れなかった。ホームゲームにもかかわらず……。

●ビッグネームが加入を受諾するはずがなく…

 昨シーズンの終盤まで、マウリツィオ・サッリは続投する意思を固めていた。しかし、アザールから「マドリーに移籍したい」と打ち明けられ、補強禁止処分も免れないとなったとき、気持ちがぐらつき始めた。そしてユベントスがマッシミリアーノ・アッレーグリ解任と同時に、サッリに秋波を送る。

 イタリア人の監督にすれば好機到来である。サッリはわずか1シーズンでセリエAに舞い戻っていった。

 補強が禁止され、アザールが移籍したチェルシーは、監督にとってリスクが大きすぎる。オファーが届いたとしても、ビッグネームが受諾するはずがない。現場復帰を目論むデイビッド・モイーズ、アラン・パーデュー、サム・アラダイス、もしくはOBのマーク・ヒューズに何かの間違いでもコンタクトを取ると、サポーターの暴動を引き起こす。この夏、チェルシーは監督の人選も困難を極めた。

 ビッグネームが引き受ける確率はゼロに等しかったのだから、世間が納得するのはOBの帰還しかない。プレミアリーグの勝ち方を熟知し、チャンピオンズリーグの難しさも経験している者ならなおさらだ。ランパードを新監督に招聘した上層部の選択は、ベストといって差し支えない。

 ペトル・ツェフをテクニカル&パフォーマンス・アドバイザー、クロード・マケレレをテクニカルメンターに起用。新監督を支えるスタッフにも黄金時代の主力を配した。サポーターも心を躍らせているに違いない。

 だからこそオーナーのロマン・アブラモヴィッチ、CEOのマリアナ・グラノフスカヤ、さらにチェルシー担当のレポーター、そしてサポーターも、新体制に時間の猶予を与える度量が必要だ。

●重要なのは順位ではなくユース出身選手の育成

 現役当時のランパードはフットボール史上に残る名MFだが、監督としてはひよっ子だ。昨シーズン、チャンピオンシップのダービー・カウンティを昇格プレーオフに導いただけで、指導者としての力量は未知数である。

 ましてプレミアリーグには、マンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラ、リバプールのユルゲン・クロップといった名将がにらみを利かせ、クリスタル・パレスを率いるのは百戦錬磨のロイ・ホジソンだ。

 また、ウォルヴァーハンプトンのヌーノ・エスピリト・サントは知略家として知られ、ブライトンのグラエム・ポッターは、特異なゲームプランを駆使するマルセロ・ビエルサ(現リーズ監督)をして、「信じがたいほどのアイデアマン」と言わしめた。

 ゲームの読解力で、ランパードは彼らに遠く及ばない。ここに補強禁止と、アザールとD・ルイスの退団もマイナス要素として加味される。新人監督には過酷すぎる条件だ。

 したがって、今シーズンのノルマはトップ10。ウォルヴァーハンプトンとレスターが充実しているため、ヨーロッパリーグの出場権確保も簡単ではなくなってきた。しかし、チェルシーを知るランパード監督のもと、ユース出身のメイソン・マウント、ルベン・ロフタス=チーク、カラム・ハドソン=オドイが紆余曲折を経て成長すれば、サポーターも大喜びするに違いない。

 これまで、監督を軽視してきた上層部が考えを改めるいい機会でもある。チェルシーを買収した後、アブラモヴィッチは暫定人事も含めると、20年で17人も監督のクビを挿げ替えてきた。泡沫の恋は、そろそろ終わりにした方がいい。

(文:粕谷秀樹)

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最終更新:9/13(金) 10:57
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