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トッテナム、エリクセン残留は吉か凶か。内部分裂回避なら初タイトルも十分狙える【粕谷秀樹のプレミアリーグ補強診断(6)】

9/13(金) 10:31配信

フットボールチャンネル

 2019/20シーズンは、夏の移籍市場が終了した。この夏も各チームで様々な移籍があったが、それぞれ主要クラブの動きはどうだったのだろうか。今回はプレミアリーグでおなじみの粕谷秀樹氏がトッテナムの補強を読み解く。(文:粕谷秀樹)

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●DFライン、懸念は右サイドバックの陣容

【補強診断】良好
【疑問点】エリクセンの残留、右サイドバックの質量
【キープレーヤー】エリクセン
【ノルマ】なんらかのタイトル、CLベスト8以上

 この1~2年、トッテナムのセンターバックは再編が噂されていたが、マンチェススター・ユナイテッドへの移籍が濃厚だったはずのトビー・アルデルヴァイレルトも残留し、すっかり落ち着いた。

 彼とヤン・フェルトンゲンのベルギー代表デュオが基本で、バックアッパーにダビンソン・サンチェスとファン・フォイス。プレミアリーグとチャンピオンズリーグでローテーションできる陣容だ。

 左サイドバックもベン・デイビス、ダニー・ローズ、そしてフラムから獲得したライアン・セセニョンの三枚を揃えている。なにかにつけて文句が多いローズは首脳陣の信頼を損ね、セセニョンの適性もおそらく一列前だが、このポジションの量は申し分ない。

 しかし、右サイドバックは質量ともに不足している。パリ・サンジェルマンから入団後、3シーズン目を迎えたセルジュ・オーリエは、戦術理解度が依然として乏しい。カイル・ウォーカー・ピータースは線が細い。重量級FWと対峙した場合はイニシアチブを握られる危険度が高すぎる。

 サンチェスやアルデルヴァイレルト、そしてフォイスも対応可能だが、キーラン・トリッピアのアトレティコ・マドリー移籍で人材不足がわかっていたからこそ、ナポリのエルサイド・ヒサイ、ノリッジのマックス・アーロンズにアプローチしたのだろう。

 マウリシオ・ポチェッティーノ監督と折り合いが悪かったトリッピアの退団は避けられなかったものの、セットプレーのキッカーも含め、戦力的に少なからぬマイナスを招いている。

●エリクセン移籍問題でチーム創りは混乱

 第3節のニューカッスル戦に0-1で敗れた後、とあるメディアがポチェッティーノ監督に質問した。

「なぜクリスティアン・エリクセンを先発に起用しなかったのですか」

 ポチェッティーノ監督は苛立ちを隠せず、身振り手振りまで大きくなっていった。

「もし3-0とか4-0で勝っていれば、そのような質問はなかっただろうね。あなた(質問者)の意図は理解しているつもりだが、現状をどのように説明すればいいのか、皆目見当もつかない」

 イングランドの移籍市場が終了した8月8日にも、「もうすぐ新シーズンが開幕するというのに、出ていくのか留まるのか、ハッキリしない選手がいる。この時点でチーム創りに支障をきたすなんて、想定外だ。われわれは混乱している」と、不満を露わにしていた。

 補強はポチェッティーノ監督のプランどおりに進まなかった、ということなのだろう。昨シーズン終盤に移籍を示唆していたエリクセンがレアル・マドリー、もしくはユベントスに去り、彼を抜いた形で新チーム始動。だからこそジオバニ・ロチェルソをベティスから獲得した。

 ブルーノ・フェルナンデスとの交渉も個人の合意は取りつけていた。彼が所属するスポルティングが最終段階で移籍金の上乗せを要求したため破談となったが、これもエリクセンの退団に備えた善後策である。

 ところが、どこからも具体的なオファーが届かず、イングランドの市場は8月8日に、ヨーロッパ主要国も9月2日に閉じられた。こうした状況下では、さしものポチェッティーノ監督もエリクソンは使いづらい。去就が微妙な選手を起用した場合、「このクラブから出ていきたいヤツをなぜ使うのですか」と周囲が不満を抱くからだ。内部分裂につながりかねない。

結局、エリクセンは残留した。ポチェッティーノ監督も、「問題はかたづいた。パーティーでも開くか」と笑顔を浮かべた。ハリー・ケインやソン・フンミンとの連係を踏まえると、今シーズンもエリクセンが攻撃のタクトをふるうのだろう。

 しかし、定位置を確保できるはずの者がベンチに追いやられ、ベンチには入れたはずの選手が戦力外に近くなる。あくまでも実力の社会だ。エリクセンに罪はないが、トッテナムに大きなしこりを残しかねない夏の人事だった。

●それでもやはりエリクセン。残留は大きな戦力に
 
 その一方でエリクセンの残留は、極めてポジティブな考え方もできる。基本陣形を中盤ダイヤモンドの4-4-2に設定し、2トップの背後にエリクセン、右インサイドはクラブレコードの5500万ポンド(約71億5000万円)でリヨンから獲得したダンギ・エンドンベレ、左に打開力と決定力を兼ね備えたロチェルソ、アンカーにモハメド・シソコ。プレミアリーグ、いやいや、ヨーロッパでもトップクラスの陣容だ。

あるいは4-2-3-1で、二列目は右からソン、デレ・アリ(ラメラ)、エリクセン。中盤センターはエンドンベレとシソコが重厚感をもたらす。そして4-3-3の中盤は、右インサイドがエリクセン、左にロチェルソ、アンカーがエンドンベレだ。エリクセンの残留とエンドンベレ、ロチェルソの加入は中盤に厚みをもたらし、より多くのタイトル獲得が現実味を帯びてくる。

 さらに、ボールさばきが巧みなハリー・ウィンクス、汎用性の高いエリック・ダイアーも貴重なアイテムで、前線にはスピード豊かなルーカス・モウラまで擁擁している。試合中の陣形変化を得意とするポチェッティーノ監督は、すでにいくつかのプランを練っているに違いない。

 そして、エリクセンに不満を持つ者がいるのならば時間をかけて説得し、心のわだかまりをのぞくことだ。人心掌握も指揮官の重要な任務である。

 ケインはケガさえしなければ、放っておいても25得点以上が計算できる。ソンは決して疲れない、超ウルトラ・スーパータフネスだ。右サイドバックに不安はあるものの、戦力値は昨シーズンを上まわった。リヴァプール、シティとの差を詰められなかったとはいえ、プレミアリーグのトップ4は外さないだろう。

 したがって今シーズンのノルマはふたつ。ポチェッティーノ体制下では初となるタイトル(リーグカップでも構わない)と、チャンピオンズリーグでの上位進出。戦力値は昨シーズンを上まわっているのだから、少なくともベスト8だ。決して高望みではない。

(文:粕谷秀樹)

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最終更新:9/13(金) 10:56
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