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陶芸作家、細野仁美が形づくる美しい草木や花々。

9/13(金) 15:01配信

フィガロジャポン

ベースの上で、草が踊り、花が浮き立ち、そして会話する――ロンドンで活躍する陶芸作家の細野仁美の作品を目の前にすると、まずその繊細さに息を飲む。そしてできるだけ細部まで顔を近づけ、美しくかたどられた花々や葉の一つ一つに目を凝らさずにはいられない。

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イギリスを代表する陶磁器メーカー、ウェッジウッド。この伝統あるブランドが昨年、日本人陶芸作家・細野仁美のジャスパーコレクション「ウェッジウッド by ヒトミ・ホソノ コレクション」を発表したことは、イギリスのアート&デザイン界で大きなニュースとなった。「ジャスパー」とは、ウェッジウッドの創始者ジョサイア・ウェッジウッドが開発したストーンウェア(せっ器)のひとつ。古代ギリシャ・ローマをテーマにした装飾で知られるシリーズだ。細野ならではの解釈で生まれた特別なコレクションがついに9月から日本でも発売される。

細野はデザインするにあたって、260年もの歴史を持つウェッジウッドのモールド(型)がすべて保存されているアーカイブから、自身のインスピレーションを喚起するものを探し出す作業から始めた。そしてその型を使って、淡い色合いのベースに細かな細工を施した作品を作り出した。

「創業時代からの型が保存されている『モールド・チャンバー』に入らせてもらい、素直に『素敵だな』と思う草木や花の型を選びました。古い型のパターンを使い、でも私の手で新しいウェッジウッドの作品を生み出せたらいいなと」

ウェッジウッドの話をしている時、細野の顔はほころび、そしてまるで言葉があふれ出すように早口になる。

細野とウェッジウッドの出合い。

細野のジャスパーコレクションが生まれたのは、2017~18年に彼女がウェッジウッドのアーティスト・イン・レジデンス(AIR)に選ばれたことがきっかけだ。

「実はAIRに選ばれる前、まだロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)の修士課程で学んでいた08年に、ウェッジウッドで約1カ月半インターンをした経験があります。その時ジャスパー・スプリック(枝や葉などの装飾模様)の制作工程を見て感銘を受けました。一つ一つが職人の卓越した技術で作られることを知り、大きな影響を受けました。私は自分の作品に、ずっとジャスパーとの繋がりを感じていました。ですからAIRの誘いはまるで夢のようなオファーでした。本当にうれしくて、すぐに『やりたいです!』と返事をしたんです」

AIRを行うにあたり「ヒトミ・ホソノのジャスパーコレクションを作ってほしい」というオファーを受け、制作に取りかかった細野。彼女のアイデアを伝統ある「ジャスパー」作品のひとつとして完成させることができたのは、ウェッジウッドが培ってきた職人の技術、そしてチームの力であったと細野は力を込めて語る。

たとえば「Kasumi(花霞) Vase」や「Haruka(陽花) Bowl」では、小花をびっしりと重ねたり、ふわりと浮くように配置している。花をただ並べて貼り付けるのではなく、自然界にある花のように、風に揺れ、各々が咲きたい場所で咲き乱れる様子を表現するにはどうしたらよいのか? また、これまでのジャスパーにはない繊細で淡い色を使いたいけれど、そんな色を作り出すことができるのか? 職人たちとたくさんのテストピースを作り、実験と工夫を重ねることで、彼女のこだわりとアイデアが作品として実現した。

「難しいことが本当にたくさんありました。でもそこで諦めるのではなくて、みんなに相談することで解決策を一緒に編み出してもらったんです。普段私はひとりでスタジオにこもって作業しているのですが、ウェッジウッドでの仕事は『チームって素晴らしい』と思える経験でした」

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最終更新:9/13(金) 15:01
フィガロジャポン

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