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Jリーグ副理事長・原博実氏が語る「VARを遅れて導入するメリット」

9/13(金) 21:36配信

footballista

原博実Jリーグ副理事長インタビュー

JリーグはVAR導入準備を急ピッチで進めているようだが、VARは単純なルール変更とは違い、設備と人材育成に大きなコストがかかる。リーグとしても慎重な判断が求められる難しい案件だ。そこでJリーグとしてのVARの準備や考え方について、原博実Jリーグ副理事長に取材を敢行。メディアでも多くの関係者がVARについて疑問を抱えており、最終的にはインタビュアーの清水英斗に加えて取材同行者が入り乱れての質問合戦となったが、原氏は一つひとつの質問に対して丁寧に答えてくれた。

インタビュー・文 清水英斗
編集 MCタツ
写真 六川則夫

■JリーグがVARを導入する経緯

清水「今日はVARについて聞く企画なんですけど、その前にすごく聞きたいことがあって。『Jリーグジャッジ リプレイ』という番組に出てますよね。原さんの立ち位置ですけど、ちょっと演じてませんか?」


原「どういうことですか?」


清水「審判委員会のメンバーだし、本当はルールを勉強しているのに、あえて知らないふりをして聞いたり、話したりしてる気がして」


原 「鋭いところを見ていますね」


清水「(笑)」


原「選手やサポーターの目線を考えずに細かい話に終始してしまうと、みなさんがついてこれなくなるのではないかと思っていまして。僕の場合、現場でやっていた感覚を大事にしようと思っていて、これはこう考えるんじゃないかと、指導者の目線に徹しているのは確かにありますね」


清水「見ていて感じますよ。もちろんルールは大事ですけど、同時にルールはサッカーを見ている一般の感覚に従って、どんどん変化するものでもあって。小川さん(JFA審判委員長)はよく、『ルールはみんなのもの。レフェリーだけのものじゃない』と言いますけど、『Jリーグジャッジ リプレイ』はその雰囲気を出しているなと個人的には思います」


原「あの番組は視聴者が多くて、お子さんにも見ていただいています。試合視察に行くと『ジャッジ リプレイ、見てます!』って声をかけられますしね」


清水「おー」


原「昨日も女の子に『私も見てます』と言ってもらって。ありがたいことだと思っています」


清水「お子さんも見てるし、選手も見てますよね。この前も選手がTwitterで投稿してましたし」


原「呉屋(大翔)選手ですね。実は、(取材の)2日前にスタジアムで会いました。そうしたら『すいません、ツイート』って言われたのですが、私は全然気にしていません。確かに『足に当たっている』って彼が主張するのは理解できますし。ただ、あれは『ファウルを取らなくてもいい』という意見と、『呉屋にはもっと点を取ってもらいたいから耐えて粘ってゴールしてほしい』というのを言っただけで、それは正解がないことです。選手もそうやって見てくれているのはうれしいことです。『Jリーグジャッジ リプレイ』のおかけでルールの理解度も上がったと思っています。以前なら、“DOGSO”(ドグソ)って何?という状況だったのではないでしょうか」


清水 「(笑)。『決定的な得点の機会の阻止』の略語ですね」


原「DOGSOが成立する4条件は何ですか?とか、そこまで知ろうとするのは、すごく大事なことです。あの番組は今年やってきただけでも、だいぶいろいろなことが理解されてきたと思います」


清水「これほどみんなが一緒に、ルールについて考える機会は今までなかったし、すごく大事だと思います。いや、なぜ今日、最初にこの話を振ったかというと、今後VARを導入するにあたって、『Jリーグジャッジ リプレイ』でやっているような、「ルールはみんなのもの」という感覚と、学ぼうとする基盤がないと、VARを導入しても意味がないと思っているからです。審判の見落としが減っても、判定に好き勝手に不満を言うだけなら、結局、VARを入れても全体の満足度は高まらない。あの番組の雰囲気が、今後の大切なベースになるのかなと注目してます。

 そんなわけで、JリーグはこれからVARを導入していくわけですが、原さんはVARをどう捉えているんですか?」


原「昨年、ルヴァンカップのプライムステージからVARを導入することを決めました。去年から一部の審判員はVARのトレーニングをしています。当初は、2021年のJ1リーグ全試合導入を目指して準備をしてきましたが、世界の流れも踏まえて、来年からJ1リーグ全試合導入になったとしても対応できるように審判員養成のスピードを加速させています」


清水「原さん個人も、『VAR導入は待ったなし』という感覚ですか?」


原「僕は、選手だけでなくレフェリーにもミスがあるのがサッカーの本質と思っていましたので、VAR導入に否定的な意見を持っていた時もあります。ただ一方で、VARをまったくトレーニングしないわけにはいきません。なぜなら、日本人のレフェリーがFIFA(国際サッカー連盟)やAFC(アジアサッカー連盟)の大会を担当する時に、VARに慣れていなければならないからです」


清水「確かに」


原「実際に良いところもあると思います。もし、VARを導入していれば今年の浦和対湘南戦であったようなゴール判定をめぐる問題はなかったでしょう。シンプルにゴール・ライン・テクノロジーだけでいいのでは?という意見もあります。ただ、それはそれでお金がすごくかかります。まずは、ルヴァンカップでVARを導入し、結果を検証する必要があります。『導入しない』と決めてしまうと、人も育ちません。今は準備をしながらルヴァンカップのプライムステージを見ていくという感じですね」


清水「まずはそこで何が起きるか、ですね」


原「VARは、“はっきりとした明白な間違い”をなくすことが大原則ですが、客観的な事実に関する部分であればすごく細かいところにも介入しなければならない時もあるというのがVARの難しい点だと考えています。例えば、オフサイドのシーンで『5mm出ていた』などミリ単位の判定をする時などです。当初は、明らかな人の間違いや、明らかなPKのみに介入するのかと思っていましたが、他国リーグが運用を突き詰めているのを見ているとだんだん細かくなっていって、『それもうサッカーじゃないのでは?』という感覚になってしまう時もあるので、そのバランスをどう取るかが難しいと思います」

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最終更新:9/14(土) 10:44
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