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1961年製のシトロエン 2CVに乗って100周年イベント会場へ。その盛り上がりに驚く!(中篇)

9/14(土) 21:11配信

GQ JAPAN

70km/h少々しか出ない1961年式シトロエン2CV AZLPで、パリから高速道路を避けて走ること200km弱。シトロエンが1938年からテストコースを置くラ・フェルテ・ヴィダムに、ようやく辿り着いた。ここで行われた創業100周年イベントは……ある程度の覚悟はしていたものの、質・量ともカルト過ぎる盛り上がり。100年に一度のミート具合、響き合うものに、唖然とするしかなかった。

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素敵な旅に必要なのはそれに見合う目的地

1919年にアンドレ・シトロエンが創業して100周年の節目を迎えたシトロエンは、今年1年を通じて、様々な記念イベントを行っているが、ヒストリック・シトロエンのオーナー向けのそれの会場として選ばれたのは、パリから西へ直線距離なら100kmほどに位置する、ラ・フェルテ・ヴィダムだ。シャルトルとル・マンとルーアンの中間、といっても分かりにくいが、限りなくノルマンディ地方に近いサントル地方の端っこの、高速道路を使っても正味2時間はかかるであろう、はっきりいって辺鄙なところだ。

そのラ・フェルテ・ヴィダムがどんなところか、簡単に説明してみよう。昔、地元の領主がルイ15世を迎えたという壮大なシャトーは、フランス革命で荒廃して久しい。その広大なドメーヌは19世紀以降、ことあるごとに売りに出され、20世紀に入ってその大部分をシトロエンの創業者であるアンドレ・シトロエンがテストコース用地として買い取った。理由は、まず公道が横切らない広大な私有地なので、秘密保持に向いていたこと。今日でも民間所有のドメーヌとしてフランスいち広大な面積を誇るとか。またパリから1時間強と近く西方に位置するため、朝パリを発って夕方に戻るのに、太陽を背にして走れる。つまり社員の労働環境面、安全とコンフォートが決定的だったという。

こうして1938年にテストコースが開設されて以来、すべてのシトロエンはここを走り込んで市販されてきた。とはいえシトロエン・オーナーにとって、ここが聖地である理由はそれだけではない。1994年にドメーヌ入口脇にある建物の屋根裏から、1939年秋のパリ・サロンでお披露目されるはずだった3台の2CV、限りなく市販版に近いプロトタイプが、戦後50年あまり経って、埃をかぶった状態で発見されたのだ。

なぜここに2CVは隠されていたのか? 一説によれば、1939年9月に勃発した第2次世界大戦の煽りでシトロエンは2CVの市販を見送っただけでなく、その優れた走破性と生産性、そしてすでにユーラシア大陸横断やアフリカ縦断を成し遂げたノウハウを、ナチスに利用されるのを恐れて隠した、とそういわれ、信じられている。実際、戦後ただちに大衆車モデルを出さなかったプジョーや、長らく公団だったルノーよりも、シトロエンが「ナショナルな」自動車メーカーとして広くフランスで受け止められているのは、「移動の自由をファシストから守った」という、その歴史にも拠るのだ。

とはいえ、革命で廃墟となったシャトー周辺に、進歩主義とアヴァンギャルドで鳴らしてきたシトロエンの車両がズラーっと居並ぶ様は、やはり穏やかならざるものというか、有り体にいってザワつかせるものがある。「闘って切り拓いてきた/いく」という、本来的には泥臭い共和国原理は、洗練やお洒落と相容れないはずなのだが、それを可能にするのがエスプリ、つまり頭回しの軽やかさ、だ。会場内には、フランス人が大好きなルイ・ド・フュネスの「サントロペ・シリーズ」のテーマ曲を軽快に流しながら、修道女と憲兵コスプレをしたメアリが巡回していた。お間抜けな憲兵少尉やスピード狂の修道女と事件を解決するというコメディ映画で、悪役の高級車を向こうに回して活躍するのがメアリや2CVだったのだ。

ちなみに意外にも、今回の100周年イベントの主催者は、公式にはシトロエンではない。数年前からシトロエンの各車種のオーナーズ・クラブを横串に連ねる団体であるアミカル・シトロエンを母体に、CCC(Celebration Centenaire Citroen、セレブラシオン・サントネール・シトロエンの略 )という100周年イベントの準備委員会的組織が立ち上げられ、メーカーとしてのシトロエンもそこに一員として参画しているのだ。確かに100周年の誕生日を祝ってもらうのに主役がど真ん中で威張っていたりでもしたら、そもそも格好がつかない。今も多くのファンを抱える成熟したブランドだからこそ、こうしたイニシアチブが可能な訳で、凡百の「自称ブランド」にはありえない枠組みといえる。

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最終更新:9/14(土) 21:11
GQ JAPAN

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