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ECB「包括的な金融緩和」実施も…市場では金利が上昇したワケ

9/14(土) 7:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

9月12日、欧州中央銀行(ECB)は理事会を開催し、ECBが市中銀行から預金を受け入れる際の預金金利を-0.4%から-0.5%とする0.1%の利下げを決定。背景には、英国の合意なき離脱や、米中貿易摩擦を「抜き」にした、欧州経済の後退が関係しているという。この発表を受け、トランプ米大統領がいち早く反応した。Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence BankのCIO長谷川建一氏が解説する。

欧州中央銀行が0.1%の利下げを発表

9月12日、欧州中央銀行(ECB)は理事会を開催し、ECBが市中銀行から預金を受け入れる際の預金金利を-0.4%から-0.5%とする0.1%の利下げを決定した。さらに、いわゆる量的緩和(QE)を再開し、今年11月から月額200億ユーロの債券買入れと、銀行を対象とした長期資金供給オペ(TLTRO)の条件緩和を決定した。包括的な追加金融緩和である。

ドラギECB総裁は、理事会後に会見し、これまで検討を重ね実施する用意があると述べてきた手段を実行に移したと述べ、前回7月の理事会以降に入手したデータからは、ユーロ圏経済の脆弱性が一段と増し、顕著な下振れリスクとインフレ率が抑制されており、物価が上昇しない状況を今回の判断の理由として説明した。

ECBは前日11日に2019年と2020年の成長率見通しを下方修正し、2019年は1.1%、2020年は1.2%成長にとどまると公表していた。なおドラギ総裁によれば、この予想には、英国がEUからの「合意なき離脱」に至ることや、米中通商摩擦の一段の激化は勘案されていないとのことである。つまり、現状でも、ユーロ圏経済の成長には暗雲が立ち込めているということになる。

しかし、再び量的緩和まで踏み込んだ今回のECBの包括的な追加金融緩和策が、ユーロ圏経済を支えるのにどれほど効果を発揮するかについて、市場は懐疑的である。ドラギ総裁も、「財政政策が主導する時期に来ている」と述べて、金融緩和より財政による景気刺激策の重要性を訴えたほどである。なお、債券買入れの再開に関しては、ワイトマン独連銀総裁、ビルロワドガロー仏中銀総裁、クーレECB専務理事の3人が反対に回り、ECB理事の間でも、政策の効果に対して疑問があることを知らしめた格好である。

そのため、包括的な金融緩和策が導入されたにも関わらず、市場では金利低下ではなく、金利が上昇する動きとなった。ユーロ圏の経済見通しが悪化するなかで、ECBとしては手持ちのカードで可能な手を尽くしたことを示したといえる。年内のECBの追加緩和観測は、むしろ後退して、2年ドイツ国債は金利が急上昇している。

なお、ECBは、マイナス金利政策の深堀りによって、銀行の収益力が低下し経営体力が弱ることで貸し渋りにつながるとの批判にも配慮し、銀行の負担を緩和する措置として、超過準備の一部につきマイナス金利を免除する預金金利の階層化を実施する。また、TLTROの金利も引き下げ、銀行の負担増加に繋がらないよう配慮した。

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最終更新:9/14(土) 7:00
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