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増える人手不足倒産…「社員を軽視している会社」の断末魔

9/15(日) 11:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

中小企業の人手不足が深刻化しています。2018年上半期における「人手不足倒産」の件数は3年連続で前年同期を上回り、2013年1月の調査開始以降の半期ベースでも最多を記録しました。中小企業が生き残るためには、まずは冷静に問題点を分析することが求められます。そこで本記事では、菓子卸・流通業でナンバーワンの利益率、在庫回転率、返品率の低さを実現した株式会社吉寿屋の神吉武司氏が、中小企業の問題点について解説します。

中小企業を困らせる「採用」「定着」「育成」の三重苦

日本経済は2008年のリーマンショックで大打撃を受けましたが、2012年末を境に持ち直しの動きに転じています(2017年度版「中小企業白書」)。景気の回復傾向を受けて企業収益は過去最高水準を記録し、高齢者や女性の活躍推進といった政府主導の雇用促進で就業者数も増加するなど、数字のうえでは経済の好循環が見られるようになりました。

ところが帝国データバンクの調査を見ると、そうも喜んではいられません。景気回復で仕事量は増えているものの、肝心の働き手が足りずに仕事を請けられず、倒産を余儀なくされてしまう中小企業が増えているのです。

2018年1月~9月の人手不足倒産(社員の離職や採用難などで収益が悪化し、倒産に追い込まれること)は299件発生し、負債総額は417億円でした。件数は3年連続で前年同期を上回り、2013年1月の調査開始以降の半期ベースでも最多を記録。2013年以降のピークは件数が340件、負債総額は541億円で、その更新が視野に入っています。

せっかく仕事が増えて売上の拡大が見込めるにもかかわらず、倒産する企業が増加している背景には、「採用」「定着」「育成」という人材の問題があります。

問題(1) 採用しようにも優秀な人材が来ない

景気回復によって増産体制をしく場合、製造業者であれば設備を増強することで生産の受け皿を広げることは可能です。自己資金で賄うのは難しくても、増産の事業計画を立てて銀行にプレゼンすれば融資を引き出すことはできるでしょう。

しかし「人」の場合はそういうわけにはいきません。少子高齢化によって労働人口が減少していることに加え、空前の売り手市場が続く近年、即戦力となる優秀な人材を獲得することは困難です。

厚生労働省の推計によると、働き手となる生産年齢人口(15~64歳)は2015年の7728万人から2065年に4529万人にまで落ち込むとされています。1年刻みで見ると毎年64万人ずつ減っていく計算ですから、決して少ない数ではありません。

一方、昨今の景気回復で有効求人倍率は1.6倍(厚生労働省、2018年6月発表)を記録。企業が人手不足と感じる指数は大企業でマイナス23ポイント、中小企業でマイナス37ポイント(マイナス幅が大きいほど人手不足と感じる企業が多いことを示す)となり、特に大企業のマイナス幅は26年ぶりの水準となりました(日銀短観、2018年10月発表)。この四半世紀の間で、大企業の人手不足と感じる度合いが最も高くなっているということです。

一方の求職者にとっては空前の売り手市場です。大手志向が根強く残る日本では、ブランド力があり、待遇も良い大企業への就職を希望する人が多く見られます。まして人手不足感を強める大企業が採用活動に力を入れるなかでは、ブランド力も資金力もなく、人材募集に十分な資金を投下できない中小企業ではもはや太刀打ちできません。結局、小さな企業ほど大手以上に人手不足感が増していき、人材難を理由とした倒産が現実味を帯びてしまうのです。

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最終更新:9/15(日) 11:00
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