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なぜ嫌われたのか? パで阪急を優勝させないための包囲網ができていた/週ベ回顧

9/16(月) 10:14配信

週刊ベースボールONLINE

 昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

敗れざる者 「悲運の名将」と呼ばれた男、西本幸雄

南海に対する無気力試合続出?

 今回は『1968年10月28日号』。定価は60円。

『パの優勝戦線を狂わせた八百長説の真相』とあったが、まだ、あの事件の発覚前だ。“八百長”という言葉も安易に使われていたし、首脳陣、選手たちも軽く考えていたところがあった。
 というか、「ご当地選手に花を持たせる」という言葉もあるように、日本の文化として、勝敗に「情」をはさみやすいところがあったのも確かだ。

 阪急と南海の激闘となっていたパ・リーグ。10月1日、阪急─南海最後の2連戦を前に、阪急・西本幸雄監督は「どんなことをしても勝ちたい。南海に連勝することで優勝をあきらめてもらいたい」と熱く語った。
 この時点で阪急は南海に3ゲーム差の首位。担当記者たちは「なんで、あんなにムキになっているのだろう。もっと気楽にやればいいのに」とクビをひねった。

 しかし、現実に阪急が南海に連敗した後、何やらきな臭い試合が続く。
 
 なぜか知らないが、阪急は当時のパで嫌われていた。東京は西本監督の古巣だから分からないことはないが、東映、西鉄にもそんな雰囲気があった。
 急に強くなったことへのやっかみかもしれないし、西本監督が、寡黙なわりに攻撃的な発言をすることが多かったのもあるかもしれない。

 このとき南海に対し本気だったのは、三原脩監督の近鉄だけだったと言われた。話が前後してしまうが、南海は以後、10月3日から閉幕まで8勝2敗。負けた2つは、いずれも近鉄戦だった。
 
 いずれにせよ、ややこしいうえに憶測もたっぷり入った記事の要約だ。読み終わってもすっきりはしないと思う。

 3日の南海は東京戦だが、東京は初戦に今季初先発の八木沢荘六を送り、延長14回で敗戦。翌日、西宮球場で東京ナインに阪急・真田重蔵コーチが、
「お前らは、いい加減にしとけよ。あんまり目にあまることをしとると、この世界から抹殺されるぞ。真面目にやらなあかんぞ」
 と冗談めかして言ったとある。4日は、どちらも試合がないから、次の日、日生で試合の東京にグラウンドを貸したということだろうか。

 6日からの南海─東映3連戦も不可解だ。東映は中軸の張本勲、毒島章一をスタメンから外し、3連敗。張本は打率が下降気味だったので、タイトル狙いの時期の“いつものこと”だったかもしれないが、毒島は翌8日の阪急戦ではスタメンに戻っていた。
 投手も初戦が今季2勝の伊藤、2戦目が今季初登板の石井だった。特に石井は、打撃投手として一軍に帯同していた選手だったらしい。
 この3連勝で南海は阪急に0.5ゲーム差まで迫った。

 さすがの西本監督も「こんな馬鹿な話があるか。こんな馬鹿なことをする奴は誰も相手にしなくなるし、ほかの仕事についても馬鹿にされるだけや。自分で自分の誇りを傷つけているのやないか」と吐き捨てるように言ったという。

 その後、南海は東京、西鉄に4連勝。阪急も6日の対近鉄ダブル2試合目から4連勝で、79勝50敗で並んだ。
 いずれも11日が最終戦で、阪急が東京戦、南海が近鉄戦となっていた。

 11日の試合は、阪急が9回裏、1対2から四番の矢野清の同点打で延長に入り、11回裏、今度は同じ矢野のサヨナラ弾で勝利。7分後、南海が敗れ、阪急の連覇が決まった。
 試合後、西本監督は「価値ある優勝だった」と声を詰まらせながら言ったという。

 このように「あそこだけには勝たせたくない」とばかり他球団にあっさり負けた例は、実は少なからずある。

 有名なのは62年のセだ。
 大洋は阪神と優勝を争っていたのだが、終盤戦の9月19日、最下位の国鉄に敗れた際、大洋・三原脩監督が「死に馬に蹴られたようなものです」と発言。これに国鉄・砂押監督が「死に馬にだって意地はあるぜ」と憤慨。国鉄は残りの阪神戦3試合に全敗した。

 しかも阪神戦で三塁コーチスボックスに立った砂押監督は、ホームランを打った味方打者と握手もせず、顔を背けたり、絶好のチャンスで、投手の金田正一が監督の指示が出る前にベンチから出て審判に代打と告げ、まったくやる気のないスイングで空振り三振したこともある。
 このときは阪神ファンからはやんやの歓声が飛んだという。
 試合後、「あれは片八百長ではなかったか」と報道陣に聞かれた砂押監督は、
「男の意地さ」
 と言った。

 ただ、国鉄は9月27日から閉幕までの9試合で、阪神戦の3敗を含め、1勝8敗。ただ単に弱かっただけ、ともいえる。
 それ以前に「男の意地」という言葉が、あまりに軽い。

 なお、この号では、すでに巨人─阪急の日本シリーズ第1戦も掲載。実は11日の試合は、第1戦の前日だった。試合は、前日の余韻を引きずる矢野の2ランもあって阪急が先勝している。

 では、またあした。
 
<次回に続く>

写真=BBM

週刊ベースボール

最終更新:9/16(月) 10:14
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