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敬老の日に考える「親の介護」のお金の話

9/16(月) 12:00配信

BEST TIMES

親が子供の将来で頭を悩ませるのは「教育費」。子供が親の将来で身悶えるのが「介護費」。愛情にも「お金」がかかる。今回は介護にかかるお金の話。もちろんこれは人それぞれだが、一般論の情報を押さえておくと「損出」をいかに抑えるかが見えてくる。コラムニスト吉田潮さんが父の介護(施設)でかかった「お金」の話を「きれいごと」抜きに語る。

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●「介護とお金」の情報を正確に知る

 子供にとって親孝行としての介護問題は行き着くのは2つの論点になる。

(1)自分の人生(仕事)と介護のバランスが求められる「経済的問題」。
(2)両親は子供が自分の人生を貫くことを願っている「信義的な問題」。

 それは見事に「勘定」と「感情」の葛藤である。今回は「勘定」のお話。在宅介護も、施設介護でもかかるのは「お金」。介護の問題でぶち当たる大きな壁はお金の問題に尽きる。今回はきれいごと抜きにまず、そこの問題に触れたい。また私の父の場合は特養老人ホーム(以下、「特養」)の選択をしたので、施設介護サービスの費用について書くことにする。
 基本的な前提として親の介護に子供が金を出してはいけない。絶対に。
 親の介護では「無理」をしてはいけないのが原則であると同時に、ご両親が存命の場合、私の場合は母の生活をしっかりと持続的にすることも、重要だからだ。父は、認知症をともない社会生活一般の業務が不能になったのではあるが、その父を介護する母も日々「老化」し、時には体が弱ってきていることを見落としがちである。拙著『親の介護をしないとダメですか?』を校了してから二度も母は入院しているのだ。


 さて、あなたのご両親の年金はどれくらいあるのか。その種類は国民年金なのか、厚生年金なのか、企業年金なのか、また受取額は月ベースでどれくらいなのかを「知る」ところからはじまる。この現実に向き合うことで親の介護にかけることができる「サービス」の内容、選択肢が見えてくるからである。また介護保険(40歳から徴収される)も、親の負担額がどれくらいかなどを正確に知るべきである。
 子供ならうすうす自分の両親の社会的地位(あくまでも収入面)は、幼い頃から肌感覚で気づいていると思うが、介護サービスの局面で向き合わざるを得ない。あくまでも一般論で言えば、上記社会保障費をすでに払っているならば、それ相応の介護サービスを享受できることも知っておくべきだろう(利用しない手はないのだ! )。

●父の「年金収入」はどれくらいあるの? 

 ざっくりぶっちゃけると、父の年金収入額は企業年金と厚生年金で、月に約23万円ある。月額20万円のホームなら入れる、と思うかもしれない。
 ただし、父を高額な施設に入れれば、母の生活が苦しくなる。母自身は国民年金のみで月6万円に満たない収入だ。父の年金からホーム代を除いた残りと、母の年金で暮らしていかなければいけない。家のローンは退職金で完済してあるので家賃支払いはないが、約3万円の管理費・修繕積立費は毎月支払っている。その他、生活費や税金、保険などの支払いもある。母の月額生活費が10万円以下というのは、決して安心できる金額ではない。
 特養老人ホーム(以下、「特養」)は、「2割負担」の父の場合、月額14~15万円(多床室)と安めだが、「要介護3(日常生活一般を「自立」してできない状態)」以上でないと入れないし、何年も入居待ちしている人も多いと聞く。要するに、「月額20万以上の壁」は越えられなかった。母が心穏やかな老後を過ごせるように、と考えると、やはり特養がベストな選択肢だと悟る。

 つまり、私の家族が父の介護に取り組むスケールとしての介護サービスは、母の安定的な生活維持を考えるならば、特養という選択が「ベター」だったとも言える(このあたりの介護「設計」をマメにやることが重要)。
 先に「2割負担」と書いたが、それって何のこと? お答えする。
 介護保険の「利用者負担割合」のことで、年金収入等の金額によって、負担する割合が増えるという仕組みだ。1年の収入が280万円未満の人は「1割負担」、つまり1割の金額で各種のサービスを受けられる。280万円以上の人は「2割負担」、そして2018年8月からは、340万円以上の人は「3割負担」という枠ができた。
 この枠組みで言うと、父は「2割負担(23万円×12ヶ月=276万円)」なのだ。たとえば1万円の介護サービスなら、父は2000円で受けることができる。1割負担の人は1000円だ。ご両親の年金の収入額で一気一憂する必要もないことをあえて記しておく。

●介護の壁は「サクっと」乗り越えるべし

 もちろん、特養以外の選択肢はある。ここでは端折るが、民間企業が運営する「有料老人ホーム」、石原慎太郎が入居したことでも有名な「サ高住(介護サービス付き高齢者向け住宅)」もあるが、前者は月額最低20万円で、後者はそれ以上だ。地方公共団体や社会福祉法人が運営する特養は20万円以内で済む。
 問題はここからである。特養の入居までは、大きな壁がある。それは、「要介護3」以上の認定がいることだ。
 認知症と診断されたといえども「介護認定」は簡単には進まない。なぜなら、子供にとって「ボケ老人」であることを世間で相談する(つまりカミングアウト)ことに躊躇する人が多いからだそうだ。「うちはまだ大丈夫」、「家族でなんとかする」って思っているうちにその家族が「介護疲労」で「介護うつ」が生じ、打ちひしがれるなんてケースはざらだからである。

 もう一度確認する。親の介護で「無理」をしてはいけないのだ。その具体的な対処法は、「地域包括支援センター(高齢者の相談窓口)」にすぐ相談すること。恥も外聞もなく、他人に頼る権利を行使することなのだ。
 介護の壁は介護する「家族自身」が勝手にこしらえてたりしているのだ。ここはサクッと簡単に飛び越えてほしいと思う。経済的問題を含めた最良の選択肢を地域包括支援センターの情報から的確に進むことができるからだ。
 

 

文/吉田 潮

最終更新:9/16(月) 12:00
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