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日本の水が標的に!? 世界の水事情は急変中!―世界の水ビジネスの今―

9/16(月) 18:00配信

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世界の水事情は急変中。日本が水メジャーの標的になっているとされ、水道の将来を考えるには、世界の水市場の動向や構造を知ることが欠かせない。『日本の「水」が危ない』六辻彰二 著より)

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【水ビジネスを活性化させる四つの変化】

  コンセッション方式の導入により、これまで「水鎖国」に近かった日本の市場は、海外企業にも開放された。しかし、水メジャーと呼ばれる欧米の巨大な水企業は、世界各地で少なからず悪評を買ってきた。日本が水メジャーの標的になっている以上、水道の将来を考えるには、世界の水市場の動向や構造を知ることが欠かせない。そのために、以下ではまず、世界の水ビジネスについてみていこう。

 さまざまな批判を招きながらも、世界の水ビジネスはこれまでになく活発化している。オランダの資産運用会社RobecoSAMによると、2014年に約6000億ドル(約60兆円)だった世界の水ビジネスの市場規模は、2018年に7000億ドル(約70兆円)に達した。この驚異的なまでの規模とペースからすれば、日本の2018年改正水道法は、周回遅れでも逆行でもない。ただし、世界で活発化する水ビジネスの多くは、先進国よりむしろ開発途上国でのものである。

  日本総研の調査によると、東南アジアでの民間企業に経営される水道の給水人口は、2007年には3億1500万人だったが、2012年までに4億1130万人に増加した。この間、西ヨーロッパでの民間企業による給水人口が1億8100万人から1億8860万人と微増だったことを考えると、たとえ民営化率は低くとも、東南アジアの方が水市場としての将来性は大きい。東南アジアだけでなく、ラテンアメリカや中東でも、水ビジネスの活発化はうかがえる。

 なぜ、水ビジネスは活発化するのか。そこには、大きく四つの理由があげられる。

 第一に、人口増加と都市化だ。日本では人口減少が進んでいるが、地球人口は増加の一途をたどり、国連は2030年には86億人を超えると推計している。とりわけ開発途上国での人口増加が目立つが、これと並行して都市化も進んでいる。人口密集地が増えると、19世紀の欧米諸国と同じように、コレラなどの感染症対策として、水道の普及が課題になる。

 第二に、開発途上国で経済成長が進むなか、富裕層や中間層を中心に、ライフスタイルに変化が生まれていることだ。人間が消費する水のうち、最も多いのは農業用水で全体の約70%を占め、これに工業用水(約20%)、生活用水(約10%)と続く。生産活動が活発化することで、農業、工業での消費量も増えているが、それを上回るほどの勢いでシャワーやトイレなどの生活用水の使用量が増えているのである。

 第三に、貧困対策として安全な水の確保が国際的な目標になっていることだ。2015年に国連で採択された世界全体の開発のための「持続可能な開発目標」(SDGs)では、「全ての人々に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する」ことが盛り込まれている。2015年段階で、地球人口の29%が安全に管理された飲料水にアクセスできず、61%が安全な下水システムにアクセスできていないとみられており、SDGsでその改善が盛り込まれたことは、いわば開発途上国での水道の普及にお墨付きが与えられたことをも意味する。

 そして第四に、地球温暖化である。地球全体で気候が変動するなか、日本では大型台風やゲリラ豪雨といった「過剰な水」が問題になりやすいが、これとは逆に干ばつなど異常な水不足に見舞われる国が少なくない。水が十分手に入らない状態を「水ストレス」と呼ぶが、アメリカのシンクタンク世界資源研究所のシミュレーションによると、2040年には水ストレスが「非常に高い」国は世界全体で33カ国、「高い」国は26カ国にのぼると推計される。「非常に高い国」にはサウジアラビアなど砂漠の国が目立つが、「高い国」のなかにはアメリカ、オーストラリア、中国、インドなども含まれる。こうした国では、それまで以上に安定的に水を供給する必要があるため、水道の需要が増えているのだ。

文/六辻彰二

最終更新:10/21(月) 16:18
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