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「ガンダム」安彦作品が描き出す人間たちの実像

9/16(月) 9:00配信

東洋経済オンライン

『機動戦士ガンダム』のアニメーションディレクターとして知られる安彦良和氏。今年NHKで放映されたアニメ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星』に心揺さぶられたファンは多いだろう。
一方で、安彦氏は専業マンガ家に転身以降、近代の東アジアを舞台に「暴力と戦争」を描く歴史作家としても人気を博している。安彦氏はなぜ、日本・中国大陸・朝鮮半島という舞台を選んだのか。
東アジアのこれからを考えるうえでのヒントを探すべく、安彦氏へ20時間に及ぶ取材を行い、その記録を『安彦良和の戦争と平和ガンダム、マンガ、日本』にまとめた杉田俊介氏と、安彦作品の愛読者であり、『アジア主義 西郷隆盛から石原莞爾へ』という著作をもつ中島岳志さんが「アジアと安彦良和」について語り合った。

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前回:「機動戦士ガンダム」と「ジブリ」の意外な共通点

前々回:「機動戦士ガンダム」から40年経て語られる真実

■安彦作品の安堵感

 中島岳志(以下、中島):ジブリ作品には、安彦作品ともつながる部分があると思います。安彦さんの『虹色のトロツキー』の中には、具体的な思想やメッセージがあるわけじゃない。その感じが好きなんです。

 ただ、この世界にはいろんな出来事があって、そこで一生懸命に生きている人間たちがいるということ。そこをひたすら描いていく。それが満洲やノモンハンだった場合は『虹色のトロツキー』のようになるし、そうでなければ『魔女の宅急便』みたいにパン屋で一生懸命働いたりすることにもなる。

 わざわざ『千と千尋の神隠し』みたいに「ここで働かせてください」って大声で叫ばなくてもいい。そういう安堵感があります。

 だから杉田さんが『宮崎駿論』で、宮崎駿の世界は『もののけ姫』以降になると、物語として空転している、と指摘していたこともよくわかる。

 杉田俊介(以下、杉田):とはいえ、『虹色のトロツキー』の物語の進み方は、『千と千尋の神隠し』と似ている面もあるかもしれないですね。

 物語がうまくまとまる前に、どんどん横にずれて、だんだん収拾がつかなくなっていく。安彦さんは、連載では方向を決めずにとりとめなく描いていたわけです。

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最終更新:9/16(月) 9:00
東洋経済オンライン

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