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頼もしき男たちの帰還。/FOR REAL - in progress -

9/17(火) 10:59配信

週刊ベースボールONLINE

優勝を目指して戦う横浜DeNAベイスターズ。その裏側では何が起こっているのか。“in progress”=“現在進行形”の名の通り、チームの真実の姿をリアルタイムで描く、もう一つの「FOR REAL」。

DeNA・伊藤光 好結果を呼ぶ「粘り」「つなぎ」の意識

 7月30日、スワローズとのナイターゲームは、もう終わりに差し掛かっていた。

 勝利まで、あと1アウト。S.パットンのスライダーに中村悠平がバットを出す。打球はファウルチップとなり、キャッチャーミットに当たった。

 その直後、伊藤光は左手をミットから抜いた。薬指に痛みが走ったからだ。

 高速で飛び交う硬球が捕手の体を襲うことは珍しくない。多少の痛みは日常茶飯事――。伊藤はまたミットを構え、152kmのストレートを捕球した。その次のボールを中村が打ち、セカンドフライで試合は終わった。

 事の重大さに気づくのは、翌朝になってからだ。腫れと痛みが尋常ではなかった。

「我慢してでもやるっていうのは当たり前なんですけど、それ以上のものを感じたので」

 この時期、一軍にいた捕手は伊藤光と嶺井博希だけだった。すぐにトレーナーに連絡を入れ、病院に向かう。診断は――剥離骨折。左手薬指の骨に2カ所、剥離が見つかった。伊藤光が振り返る。

「何もないほうがいいとは思いながらも、(剥離骨折と聞いて)まあそうだろうな、と。これを我慢してやることが自分にとっていいのか、チームにとっていいのか、という考えは浮かびました。でも、左手だったので。捕球はかなりの衝撃があるし、自分でも『厳しいな』と感じてしまった。右手だったらよかったのになって……」

 8月7日、マツダスタジアムでのカープ戦。宮崎敏郎の第4打席は6回にやってきた。島内颯太郎の3球目、150kmのストレートにフルスイングで立ち向かう。

 打球がファウルゾーンに飛んだ直後、宮崎は苦悶の表情を浮かべていた。

 歯を食いしばりながら打席に戻ったが、球を見送ることさえつらそうだった。トレーナーに続いて歩み寄ってきた青山道雄ヘッドコーチは「代わろう」と促した。だが宮崎は「この打席だけは行かせてください」と直訴した。再び打席に戻ると、151kmのストレートに果敢にバットを出した。グリップにかけた左手は、ファウルの衝撃をもろに受けた。

 宮崎は言う。
「激痛でした……。正直、最初のファウルで『これはダメだな』って思ったんですけど、右手一本でなんとかしようって気持ちのほうが強くて。まだ(打てる)可能性はゼロじゃないので。(2度目のファウルの後)振り向いたら、もう監督が来ていた。そこでこう、集中力がすぱんと……解放された感じになりました」

 この男のスイングにかける情熱は並大抵のものではない。激痛を感じながら指揮官が止めに入るまで打席に立ち続けようとし、医師から「有鉤骨骨折」の診断を言い渡されてなお、こう考えたという。

「打てる、と思いました。打ちたい、まだやれるんじゃないかって。トレーナーさんにも『大丈夫っすよね。行けますよ』という話をしました。もちろん、『ダメだ』って速攻で止められましたけど(笑)」

 2人の主力選手の相次ぐケガは、左手の骨に起きた。当初、伊藤光の全治は不明とされ、宮崎に関しては「今シーズン中の復帰は絶望」と報じられた。

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最終更新:9/17(火) 10:59
週刊ベースボールONLINE

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