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森を追われたインコ、ブラジルの都会を飛び交う

9/17(火) 7:11配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

干ばつと森林火災を逃れて州都に700羽、鳥たちにとって最後の手段

 インコを研究する生物学者のラリッサ・ティノコ氏が調査の日々を過ごすのは、熱帯雨林の奥深くではない。ラッシュアワーで混雑する、ブラジル中西部マットグロッソ・ド・スル州の州都カンポ・グランデだ。

ギャラリー:希少な美しきコンゴウインコたち 写真9点

 6月の冬のある日、ティノコ氏はお決まりのルートを車でめぐった。緑の多い郊外、空いた駐車場、大きな野菜畑を過ぎ、にぎやかな通りに出るそのルート上には、ルリコンゴウインコの巣が158カ所ある。ここカンポ・グランデには、少なくとも700羽のルリコンゴウインコが暮らしている。

 だが、巣はすべて留守だったようだ。午後の大渋滞をのろのろと進むなか、「アーバン・バーズ(都会の鳥)プロジェクト」の一員でもあるティノコ氏が、突然「あっ」と声をあげた。

 前方に、陽の光を受けたルリコンゴウインコの鮮やかな胸と、大きく広げた翼が見えたのだ。本当にあっという間に視界から消えたものの、数秒後には大きな鳴き声がした。コンゴウインコが近くの木に止まったのだとわかる。

自然を追われて都会へ

 この街に初めて数十羽のルリコンゴウインコが姿を現したのは、1999年のこと。パンタナールなどで発生した深刻な干ばつや森林火災から逃れてきたのだ。パンタナールはカンポ・グランデから約150キロ離れたところにある、日本の本州の8割ほどの広さがある大湿原だ。

「ここの環境は過ごしやすいという噂が、インコたちの間で広まったみたいです」とスミレコンゴウインコ研究所の設立者で代表者のネイバ・ゲーデス氏は話す。カンポ・グランデのコンゴウインコを調査するアーバン・バーズ・プロジェクトは、この研究所の活動の一環だ。

 実際、カンポ・グランデでは2018年に巣の数や繁殖数が急増した。ティノコ氏の調査によれば、前年の133羽を上回る、184羽のルリコンゴウインコのひなが都市部で生まれたという。

 国際自然保護連合(IUCN)によれば、ルリコンゴウインコの個体数は、主に森林破壊によって南米各地で減少している。連邦政府のデータによれば、マットグロッソ・ド・スル州の森林が減る速さは過去20年間で落ちてきているとはいえ、農地や牛の放牧地はいまだに少しずつ増え続けている。

 このまま森林破壊が続けば、インコたちがさらに生息地を追われかねない。彼らにとって都市での生活は理想とは言えないが、最後の手段なのだ。近年の調査によると、ブラジルではルリコンゴウインコの増加が示唆されており、カンポ・グランデから各地へ広まっている可能性がある。

「サンパウロ州やパラナ州のような、かつて彼らが姿を消した地域でも再び見られるようになっています。これは個体数が増加している兆候かもしれません」とゲーデス氏は話す。

 今のところ、ルリコンゴウインコはカンポ・グランデ市民に愛されている。街の公式シンボルとして、土産物になったり、公的の建物に描かれたり、巨大なオブジェが「コンゴウインコ広場」に造られたりしている。2018年には、インコが巣を作っている木の切り倒しを禁じる法律が、市議会で可決された。

 ゲーデス氏は、この鳥をきっかけに、ブラジルにおける保全問題への関心が広がってほしいと願っている。「コンゴウインコが、環境への真の取り組みの旗印となるよう、努力していかなくてはなりません」

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