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海面上昇に対する「水上都市」という可能性

9/17(火) 8:10配信

WIRED.jp

人類が引き起こした気候変動により、今世紀末までに海水面が少なくとも26インチ(約65cm)上昇することが予測されている。たいしたことがないとは言えない状況だ。

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22世紀の中ごろまでに世界の主要都市の多くが海水に浸かり、一部の島国においては国全体が水没してしまうだろう。そこに住む人々は移動しなければならないが、一体どこへ行けばよいのか。

国際連合人間居住計画(国連ハビタット)は、この問題の解決策として「水上都市」の実現性を検討する第1回目の会議を招集した。会議はニューヨークのイーストリヴァー沿いにある国連本部で開催されたが、その建物自体も100年以内に海水に浸かる可能性があり、会議の開催地としてふさわしい場所だったといえる。

そこでは数十人の科学者や技術者、アーティスト、投資家たちが、「オセアニックス・シティ(Oceanix City)」について検討した。これから先、海上の文明にとって拡張可能なプラットフォームをつくろうとするものだ。

オセアニックス・シティという名のもとになったのは、ヴェンチャー企業のオセアニックス(Oceanix)である。仏領ポリネシアで観光大臣を務めた経験があり、水上浮遊都市計画のヴェテランとも言えるマルク・コリンズが、海上居住地の建設を目指して設立した。コリンズは2017年にブルー・フロンティアーズも共同で設立しており、同社は水に浮く住宅やオフィス、ホテルなどを仏領ポリネシア沖に建設する計画を進めていた。

海上に浮かぶモジュール式のコミュニティ

オセアニックス・シティはブルー・フロンティアーズとは異なり、平等主義の精神をより強く意識して考案したものだとコリンズは説明する。「リッチな人々に向けた豪奢な施設をつくろうとする人はいません。そういった提案ではないのです」。代わりに、自国の海岸線が海に飲み込まれる危機にある人々のニーズに応えられるような水上都市の建設が検討されている。

オセアニックス・シティは、有名なデンマークの建築家ビャルケ・インゲルスが国連やマサチューセッツ工科大学(MIT)などの専門家数十人と協力して設計したものだ。自身もハウスボートに住んでいるインゲルスによると、水上都市の住民たちは100パーセント再生可能エネルギーを利用し、植物由来の食物を食べ、廃棄物を出さない。リッチな人々だけでなく、すべての人々に手ごろな住宅を提供するという。

地上にあるほとんどの都市が、ここで掲げられた目標のごく一部を達成することでさえ苦戦している。しかしインゲルスとコリンズは、難題の多い海上という環境でこれらの目標を達成できると確信しているのだ。

オセアニックス・シティのベースになるのは、広さが4.5エーカー(約18,000平方メートル)の六角形の浮遊式プラットフォームで、最大300人が居住する予定である。これらのプラットフォームはモジュール式で、海面を埋めるようにつなぎ合わせて、さらに大きなコミュニティを形成できるのだ。

それぞれのプラットフォームは、「バイオロック(biorock)」をアンカーとして使用し、海底に固定される。バイオロックはコンクリートよりも堅く、海中にあるミネラル分を使って成長するため、時間が経つにつれてさらに固定強度を高められる。これらのアンカーが人工岩礁のもとになり、水上都市周辺の水界生態系を回復させる可能性もある。

各プラットフォームの具体的なデザインは、コミュニティのニーズや置かれる場所次第だとインゲルスは言う。例えば、波の衝撃を抑制するための防波堤として機能するものや、農業専用に利用されるものもあるだろう。

また、すべてのプラットフォームは、水上都市を持続可能なものにするため、水耕栽培用の温室や、ホタテガイなどの魚貝類を養殖する場所、再生可能エネルギーを動力源として海水を淡水化する施設などとしての役割を担うことになる。

プラットフォームはすべて、最大級のハリケーンにも耐えられるように設計されているが、初めのうちは異常気象の影響をほとんど受けない場所に設置するとコリンズは話している。

海水の受動式淡水化や高効率の波力発電など、この構想を実現するために必要な技術の多くは、まだその初期段階にある。そのため、コリンズとインゲルスは将来にむけた持続可能な技術を支援する役割をも水上都市に与えている。水上都市を実現できなかった場合には、開発過程で生まれたすべての技術が陸上コミュニティで利用できるのだ。

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最終更新:9/17(火) 8:10
WIRED.jp

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