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CL決勝前、 クロップは何をした? 「仮想スパーズ」の周到な情報戦

9/17(火) 21:41配信

footballista

文 結城康平

 ユルゲン・クロップ率いるリバプールが欧州の頂点に立つ悲願を成し遂げた時、主将のジョーダン・ヘンダーソンは感情を抑えることができなかった。熱くチームを牽引するドイツ人指揮官と、信頼という鎖で団結したチーム。彼らの勝利は、多くのフットボールファンの感情を揺さぶった。しかし、情熱の裏で「緻密なアプローチ」が存在していたことは興味深い。ベンフィカBを指揮するレナト・パイバが、ポルトガル紙『ア・ボーラ』に語った内容は人々を驚愕させた。

 「クロップとラインダースは、ベンフィカBとトッテナムのプレースタイルに共通点を見出していた。決勝戦の準備をすることを目的に、彼らはトッテナムの分析と模倣を依頼してきた。我われは攻守、2つずつの局面をコピーすることになる。彼らのビルドアップにおける典型的なパターンを模倣し、ストライカーはCBの中間でプレーする」

 実際、ベンフィカBとの「非公開トレーニングマッチ」は一部メディアに報道されており、両チームの選手が円になって説明を聞いている写真も公開されている。YouTubeでポルトガルサッカーを解説するジョアン・ゴンサルベスは、当時トレーニングマッチについて「メディアはベンフィカBとのトレーニングマッチに興味を示していないようだ」と言及していた。しかし、実際はクロップとリバプールにとっては「準備の大詰め」となる重要なゲームだったのだ。

なぜ、ポルトガルのBチームなのか?

 ベンフィカBとの試合をセットアップしたと報じられているのが、クロップの「右腕」であるペップ・ラインダースだ。自らを現実主義者と明言するオランダ人コーチは、細部にまで気を配った戦術によって「違い」を生み出す。決勝後、彼は「勝者を観察すれば、細部へのこだわりが見えてくるはずだ。ベンフィカBとのトレーニングマッチは良い例だね」とコメントしている。ポルトの育成部門で長年を過ごしたラインダースは、当時の同僚に接触。ベンフィカBを紹介されると、迷うことなく指揮官に直接コンタクト。練習試合の実現において重要な役割を果たした。

 ドイツ『ビルト』紙によれば、パターンの模倣は主に3人の「裏方」によって指示された。ベンフィカBを指名したのはクロップとラインダースだが、トッテナムのコピーを担当したのはゲーム分析を担当するマーク・レイランド、敵チーム分析を担当するジェームズ・フレンチ、クロップの「眼」と呼ばれるアシスタントコーチのペーター・クラビーツだった。特にクラビーツはスカウティング歴が長く、マインツ時代から徹底した分析能力を評価されている。

 プレミアリーグのライバルたちを丸裸にする男が、トッテナムのパターンを徹底的に分析。実務的な面で活躍したのが、ポルトガル人のフレンチだ。ポルトガル語を母国語とするアナリストは、ベンフィカBのポルトガル人選手とのコミュニケーションに奔走。「ゲームモデル」を重視するウェールズでも経験を積んだ青年は、見事にベンフィカBにトッテナムを模倣させた。

 相手のCBに近いポジションを好むデレ・アリ、中央に入り込むエリクセンとスペースに駆け上がるトリッピアー。リバプールの分析陣は、ブラジル人のビニシウス・フェレイラを「エリクセン役」とするなど、ベンフィカBの選手に「個々のプレースタイルを、徹底的に模倣させる」試みに挑戦した。クロップは、組織されたリバプールのプレスを何度か回避することに成功したベンフィカBを称賛したという。

 「情報戦」という観点も見逃せない。イングランドのチーム相手の練習試合は情報漏洩のリスクが高く、スペインもポチェッティーノにとっては見知った土地だ。ロリスが正GKを任されているので、フランスも安全ではない。だからこそ、彼らはポルトガルの地を選択。気味が悪いほど静かに、周到な準備を進めてきた。選手個々のレベル差を考慮しても、徹底的な分析によって「相手チームの再現」が可能になってきている現代フットボールでは、「ジョーカー」となるカードを隠し続けなければならなくなっているのかもしれない。

最終更新:9/17(火) 21:41
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