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映画『ある船頭の話』:オダギリジョーが監督としてこだわり抜いた映像世界

9/17(火) 17:18配信

nippon.com

監督がオダギリジョーだからこそ実現したのは重厚なキャストだけではない。ウォン・カーウァイ監督の『恋する惑星』(1994年)や『ブエノスアイレス』(97年)の撮影監督として知られるクリストファー・ドイルが、「ジョーが監督をするなら」と名乗り出た。新潟県の阿賀野川、福島県の只見川、奥会津の霧幻峡など、厳寒と猛暑が襲う過酷なロケ地で撮影された詩情あふれる美しいショットの数々は、この世界的な巨匠とのコラボレーションなくして生まれ得なかっただろう。

さらに衣装デザインには、黒澤明監督の『乱』(85年)で米アカデミー賞を受賞したワダエミが参加。独特な素材や色の組み合わせにより、時代や場所を超えて想像力が広がる作品世界を彩っている。また、アルメニア出身の世界的ジャズ・ピアニストとして知られるティグラン・ハマシアンが映画音楽に初挑戦したのも、オダギリ監督の熱意あってのこと。何度も修正の要望に応じ、映像美に完璧にマッチした豊かな旋律を響かせている。

世界的な才能を結集しながら、日本ならではの自然美あふれるロケーションを厳選し、日本が誇る名優たちを配した『ある船頭の話』は、ゴンドラの行き交う水の都、ベネチアでも大いに話題を集めたようだ。常に妥協を許さず、世界を舞台に本物と接してきたオダギリジョーが、長年培ってきた映画作りの知見と人脈を最大限に注ぎ込んだ労作。時に穏やかに流れ、時に激しく渦を巻く、こだわり抜いた映像美に身を任せたい。

作品情報

・脚本・監督:オダギリ ジョー
・出演:柄本 明、川島 鈴遥、村上 虹郎/伊原 剛志、浅野 忠信、村上 淳、蒼井 優/笹野 高史、草笛 光子/細野 晴臣、永瀬 正敏、橋爪 功
・撮影監督:クリストファー・ドイル
・衣装デザイン:ワダエミ
・音楽:ティグラン・ハマシアン
・配給:キノフィルムズ
・製作年:2019年
・製作国:日本
・上映時間:137分
・新宿武蔵野館ほかにて全国公開中

【Profile】

渡邊 玲子 WATANABE Reiko
映画配給会社、新聞社、WEB編集部勤務を経て、フリーランスの編集・ライターとして活動中。国内外で活躍するクリエイターや起業家のインタビュー記事を中心に、WEB、雑誌、パンフレットなどで執筆するほか、書家として、映画タイトルや商品ロゴの筆文字デザインを手掛けている。イベントMC、ラジオ出演なども。

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最終更新:9/17(火) 17:22
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