ここから本文です

ソニー「α7R IV」レビュー。フルサイズ初の6000万画素超えは伊達じゃない

9/17(火) 6:15配信

PHILE WEB

フルサイズミラーレス機をリードしているソニーから、クラス最高となる有効約6100万画素センサーを搭載したフラッグシップモデル、「α7R IV」が登場した。価格はオープン。市場想定価格は40万円前後だ。今回、本機を使う機会を得たので、その実力や感触をレポートしよう。

インプレッションに入る前に、本機のポジショニングを紹介しておこう。今からおよそ6年前、世界に先駆け35mmフルサイズセンサーを搭載したミラーレス機「α7」を発売したソニー。その後シリーズには、無印のスタンダード機に加え、高感度志向の「Sシリーズ」、そして、高画素機の「Rシリーズ」が登場。そして高速性に特化した「α9」がラインアップされた。本機は、その「α9」と並ぶダブルフラッグシップ機である。

ネーミングからわかるように、本機はRシリーズ第4世代目となるモデルだ。約2年前に発売された先代機「α7R III」は、有効約4240万画素の裏面照射型CMOSセンサーを搭載していたが、本機は画素数が一気に約1.44倍となる有効約6100万画素へと向上。現行他社モデルを含め、フルサイズセンサー搭載機では唯一の6000万画素オーバーを実現している。

さらに、画素数が増えているにもかかわらず、常用感度は先代機同様、最高ISO32000を実現。ダイナミックレンジ(明暗の再現域)も、14段から15段へと広がるなど、スペック上、マイナス要素はない。

連写性能は最高秒間10コマ。AF測距のカバーエリアは画面全体に対して、先代機の約45%から74%カバーと大幅に広がり、動物対応の瞳AF機能、トラッキングAF機能など最新の機能も搭載。さらにEVF(電子ビューファインダー)は先代機の369万ドットから、最先端の576万ドットへ高精細化されている。

ただ、実際に進化を遂げた面は、これらのようにスペックに現れる部分だけでなく、実際に使ってみなければ、そのよさが伝わらない部分も多い。そう、スペックだけで語れないのが、本機「α7R IV」の難しさであり、楽しさでもある。

■現状最高レベルの超高精細な描写力

それでは早速インプレッションに移ろう。やはり最大の注目点は、有効約6100万画素センサーによる高精細な描写だ。先代機に比べ、約1.5倍近い画素数アップは伊達じゃない。

この画素数で、等倍表示をする意味性はさておき、PCディスプレイ上で撮影画像を表示し、どんどんと拡大していくと、「こんなにも写っているのか!」と感動を覚えるほどの精細感である。先代機でも十分過ぎる解像度を備えていたが、本機はさらに余裕のある高精細さを備えている。

A3プリントどころか、ポスターサイズのプリントにも十分耐えるレベルであり、冷静に考えると「ここまで必要か?」と思ってしまうものの、広大な風景を撮っても、肉眼では気付かないほど細部までキッチリと写り、実に気持ちがよい。ポートレートでは、瞳の毛細血管や毛穴まで容赦なく写してしまう、恐ろしいまでの実力だ。

また、これだけの高画素数となると、横位置で撮ったカットをトリミングして縦位置で使っても、必要十分な画素数を保持できるため、納品後、どのように使われるかわからないプロ用途でも威力を発揮するだろう。

さらに本機には、“APS-Cクロップ”と呼ばれる、画面中央のAPS-Cサイズの範囲だけで撮影するモードも備えており、同モードを使えば、同社のAPS-C用レンズでの撮影もできる。この場合でも画素数は約2600万画素もあるので、A3プリントくらいなら楽々カバーできる。

フルサイズ対応レンズ装着時に、同モードを使用すれば、焦点距離が1.5倍の望遠撮影になる点も隠れたメリット。望遠側が足りない時にも便利だ。撮影画像のデータサイズも小さくなり、連写時の連続撮影枚数も約3倍に伸ばせるなど、超高解像度を必要としない動体撮影などでは、特に重宝するだろう。

■明暗の再現域や超高感度もハイレベル

本機のような高画素モデルは、解像度は高いものの、センサーの画素密度が高いため、超高感度画質の低下やダイナミックレンジ(明暗の再現域)が狭くなる傾向がある。だが、今回本機を使用した範囲では、その懸念はほぼなく、実質的に先代機と同等か、やや勝るほどの性能を実現している。これは大きな魅力である。

超高感度域については、2400万画素クラスのモデルに比べ、強いとはいわないが、それでもISO3200程度までは安心して使えるレベル。また、動体撮影ではISO6400も多用したが、十分実用に耐えるという印象だ。ISO12800まで上げると、流石にノイズや細部の潰れが見られるが、SNSなどで利用するのであれば、実用の範疇といえるだろう。

また、ダイナミックレンジがクラストップレベルとなる15段もあるため、かなり明暗比の高いシーンでも、白飛びや黒つぶれを最小限に抑えたデータが得られる。これも本機ならではの魅力だ。JPEG撮影では、その恩恵を積極的に体感する機会が少なく実に残念だが、RAW撮影すると、現像工程でその再現域の広さにきっと驚くことだろう。

■改善されたグリップ感と操作性

そして、本機を手にしてすぐ気付くのが、ホールド感の向上だ。α7シリーズの美点である小型軽量さはそのままに、先代機よりグリップが大きめになった。これにより指がかりがよくなり、望遠ズームや大口径レンズなど、重めのレンズを装着した時の安定感が大幅に向上している。また、それに伴って、シャッターボタンの角度なども見直されており、シャッターもより押しやすくなった。シャッターの感触も、先代機と明らかに異なるフィーリングだ。

本機はシャッターユニットも新規開発されている。ちょうど「α7R II」の振動の少なさ(音は賑やか)と、「α7R III」の静かさ(振動は若干感じる)のいいとこ取りをした感じだ。実はこれが、今回「α7R IV」を使用した上で感じた、もっとも大きな改善点かも知れない。撮影時の軽快感や安心感が向上しており、振動も少なく、微細なブレによる画質低下にも効果的だ。

とはいえ、フラグシップ機として考えると、他社製のフラグシップミラーレスほど、静かで振動が抑えられているわけではないため、もうワンランク動作時の質感を向上させてほしかったというのが正直なところ。もちろん、実用上は何の問題もないし、先代機よりも明らかに進化はしているのだが、フラッグシップと謳うのであれば、こちらも欲をいわせてもらいたくなってしまう。

■αシリーズの強みであるAF性能がさらに進化

αシリーズが得意とする分野にAFがある。もちろん、本機にもその血統はきちんと受け継がれている。先代機「α7R III」に比べ、AFの位相差測距点が増え、カバーエリアも広がった。さらに、AF測距点を変更する操作部も改善。大幅に操作しやすくなった背面のジョイスティックや、反応のいいタッチパネル操作も軽快だ。

中でも、捉えた測距点のピントを追い続ける「リアルタイムトラッキング」は、動体撮影に実に便利だ。一度、測距したい部分を指定してしまえば、被写体が移動しても、フレーミングを変えても、その部分のピントを粘り強く追い続けてくれる。そのため、AF測距点を意識することなく、実に心地よく軽快に撮影に集中できる。この機能が動画撮影時にも利用できる点も見逃せない魅力だろう。

進化した「瞳AF」も実に便利だ。今回の試用では、AIを活用した動物対応の瞳AF機能を、動物園で試した。ちなみに動物の瞳検出は一部の動物のみの対応となり、実際に試したところ、鳥や魚などの瞳は検出できないようだ。

だが、トラやレッサーパンダなど、顔の中のパーツの配列が、比較的人間に近い動物であれば、柵越しであっても、動き回っていても、十分に高い確率で、自動的に瞳を捉えてくれる。対応する動物であれば、自分のペットを撮る人にもきわめて有効な機能といえるだろう。

なお、AF測距ができるレンズの開放F値も、先代機のF8からF11に拡大。これにより、F5.6クラスのズームレンズに、2倍のテレコンバーターを装着しても、AF撮影ができるようになっている。

■高画素機のイメージを覆す軽快な連写性能

連写性能はAF/AE追従で最高秒間約10コマと高速。もちろん有効約6100万画素の高解像で、コンティニュアスAF、瞳AF、リアルタイムトラッキングを駆使した高速連写ができるわけだ。ここまでの性能を備えていれば、大半のスポーツ撮影でも対応できるだろう。

しかも、先代機に比べ、バッファーメモリーが約1.5倍に大容量化しており、高画素機にもかかわらず、RAW+JPEG(圧縮)時でも、最大約68コマも連続撮影できるのは、結構心強い。

ちなみにファイルサイズはRAW撮影で1コマ約60MB、 JPEG撮影で1コマ約20MB程度のため、連写撮影を行うとSDカードへの書き込みにはそれなりの時間がかかる。そのため、高速連写を繰り返すような撮影では、高速なUHS-II規格のSDカードをぜひ利用したい。

ただ、バッファーメモリーの容量は十分にあるので、通常のスナップ程度なら、UHS-I規格のSDカードでも、さほど不便を感じることはない。また、ファインダー内に、SDカードへの残り記録枚数も表示されるので、意外に待たされ感は少ない印象だ。

また、本機は5.5段分の補正効果を謳う「光学式5軸ボディ内手ブレ補正」も搭載。確かに有効約6100万画素もの超高解像度となると、微細なブレが画質に大きく影響するので、もう必須の機能といってもいい。ただ実際に試用した感触としては、効果は明確に感じられたものの、やや控えめという印象を受けたのも事実。おそらくこれは、画素数が上がったことで、相対的に微細なブレが目立ちやすくなったことも関係しているのだろう。

■一方、EVFや背面液晶の色差にはやや課題も…

ファインダーはカメラの命。一眼レフの時代もそうだったが、ミラーレスの時代になり、さらにその感を強くしている。本機のEVF(電子ビューファインダー)は、クラス最高576万ドットの解像度となる有機ELファインダーを搭載。先代機が369万ドットだったため、その解像度は一気に約1.5倍となったわけだ。

実際に覗いてみると見え味は悪くない。周辺部まで、さほど歪みを感じることもない。ただ、スペック値ほどの高精細さは感じられない。ただこれは、出荷時設定で、EVF表示の設定が「標準」になっているのが原因。設定を「高画質」に切り替えると、かなり印象が変わり、細部まできちんと表示されるようになる。

おそらく、バッテリー寿命(撮影枚数)を少しでも多くするためだと思われるが、誤解してしまう人も多いだろう。そのため店頭などで本機のEVFをチェックする時は、ぜひ、この設定を変えてから試していただきたい。

一方、個人的に一番気になったのは、撮影画像と背面液晶、そしてEVFの色や明るさの違いだ。今回のデモ機では、わずかではあるがグリーン方向に表示色が寄っており、筆者はいまひとつ安心して撮影ができなかった。

もちろん、背面液晶とEVFの両方とも、明るさと色温度をそれぞれ個別に調整することは可能だ。だが、調整は横軸(ブルー/アンバー)方向のみで、縦軸(マゼンタ/グリーン)方向がないため、その差を埋めることができなかった。デバイスの個体差もあるので一概には言えないが、できれば、より緻密な色調整機能の追加を、今後のファームアップで実現してほしい。

■真の意味でのオールマイティーな超高画素機

厳しいことも書いたが、フルサイズミラーレスの第4世代モデル「α7R IV」は、ユーザーに一切の我慢を強いることなく、超高画素の世界を堪能させるハイエンドモデルといえる。

圧倒的な高解像度と豊かな表現力を、日常で使えるフレキシビリティな形で、気軽に持ち歩ける携帯性の高いボディにパッケージングした、とても実用的かつ実践的なモデルに仕上がっている。

そのため、本機1台で、緻密な風景写真から、動きのある人物や動物、スポーツ撮影、さらにカジュアルなスナップショットまでも、超高精細にカバーできる。真の意味でのオールマイティーなモデルだ。

また、APS-Cクロップ撮影時でも、2600万画素で撮影できるため、普段はコンパクトなAPS-C用のパンケーキズーム「E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS」や、高倍率ズーム「E 18-135mm F3.5-5.6 OSS」を装着して、APS-C機のように持ち歩ける点も隠れた魅力だろう。

実売価格はボディ単体で40万円前後。高額ではあるが、本機に魅力を感じ、その価格に納得できるなら、迷うことなく購入すべきモデルだろう。ソニーのハイエンド機は、ほぼ2年に1度のモデルチェンジであり、ファームアップによる進化も期待できるため、向こう2年間くらいはバリバリ第一線で活躍してくれるはずだ。

ただ一方で、そう遠くない未来、イメージセンサーが劇的な進化を遂げることも予想される。特に機械的なシャッターが不要となるグローバルシャッター搭載センサーが実用化されれば、圧倒的な高速化を実現したモデルが登場することも想像に難くない。また同社は、高感度指向の「α7S II」後継機を開発中であることも明言している。

本機は極めてバランスのよい超高画素機ではあるが、高速性能や高感度性能に特化しているわけではない。そのため、本機の購入を検討するのであれば、本機最大の魅力である“超高画素”をどう評価するかがポイントになりそうだ。

■追う立場から追われる立場へ

“フルサイズミラーレス”というカテゴリーを切り拓いたソニー。これまで一眼レフを追う立場だったが、他社がこぞって同カテゴリーに参入した今、“フルサイズミラーレス”のリーディングカンパニーとして、追われる立場となった。

もちろん6年の先行期間に蓄積したノウハウに加え、イメージセンサーを自社系列で内製できる点は、同社のきわめて大きな強みであり、今後もセンサー技術を核とした進化で先陣を切るのは、ほぼ確実だ。

「α7R IV」は、それら同社の強みが遺憾なく発揮された意欲機であり、機能や性能、実際の写りはまさに第一級の実力。バランスのよさもピカイチといっていい。そのため、仕事用カメラとしてはとても魅力的だし、レンズ性能をフルに発揮してくれる頼もしいボディではある。これほど理性的で、仕事をきちっとこなすカメラは、そうそうない。これだけの完成度を備えたカメラだけに、次にどんな世界を見せてくれるのかという期待も高まる。

だが一方、他社の最新ハイエンドミラーレス機は、性能はもちろん、“使った時の心地よさ”をとても重視した作り込みをしている。それはメカ部や操作部、ファインダーなど、視覚や触覚に訴える感性的な部分の完成度が、撮影時の気持ちを大きく左右し、結果として、いい作品を生み出す重要な要素であるからだろう。

追う立場から、追われる立場となったソニーが、これから取り組むべきは、性能の向上はもちろんのこと、道具としてのさらなる心地よさの追求ではないだろうか。今回「α7R IV」の試用を通して、そのような印象を強く持った。機能や性能重視の理性的なカメラとして進化を遂げてきた「αシリーズ」が、いかにして感性的な部分を纏っていくのか。今後の展開に大いに期待したい。

山田久美夫

最終更新:9/18(水) 20:10
PHILE WEB

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事