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日本企業の失敗の原因と15年越しの仮説検証――【自著を語る】『日本企業における失敗の研究』

9/17(火) 6:30配信

Book Bang

権威への挑戦

 私のこれまでの研究生活を振り返ると、その通奏低音は正統派に異を唱えることだったと言えるかもしれない。といっても、権威に逆らうのが目的ではなく、主流や通説と現実との間のギャップがいつも気になり、それを埋めたいという動機によるものだった。

 その始まりは、大学院生時代に、当時の社会学の世界的権威のパーソンズ教授の来日講演の際に、「先生の理論はスタティック(静学)で社会の変化には適用できないのではないか」と質問したことであり、その代償として、その後、彼の理論をベースに社会システム論を展開していた社会学の権威らに睨まれることになった。

 しかし、もっとも大きな挑戦は、戦略論の権威とされているポーター教授の競争戦略論がスタティック理論であることを批判して、筆者なりのダイナミック戦略論の構築を試みたことだった。

日本企業の薄型TVウォーズにおける敗因

 今般、有斐閣より出版した『日本企業における失敗の研究』は、そのダイナミック戦略論によって日本企業“戦史”上の最大の敗戦で、日本経済の失われた30年の主因となったエレクトロニクス産業の没落の、そのまた主因となった(液晶テレビ等をめぐる)薄型TVウォーズにおける敗因とその敗戦責任(者)を明らかにしたものである。

 経済、経営等にはあまり関心のない方々でも、今、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)などのいわゆるプラットフォーム企業が覇権を確立し、その個人情報管理がグローバルな大問題になっていることはご存知であろう。ところが、この、インターネット関連の最先端の事業分野における日本企業の存在感は希薄で、中国企業の後塵も拝しているが、その起点となったのが薄型TVウォーズにおける敗戦であった。そして、それによる資金不足と戦略無策のゆえに日本企業はその後、スマホと、液晶および有機ELパネルでも敗退し、しかも、薄型TVに固執している間にGAFA等が開拓したプラットフォーム事業でも大きく立ち遅れてしまったのである。昨今、世界を騒がしてる次世代高速通信規格(5G)をめぐる“覇権ウォーズ”でも蚊帳の外である。

 薄型TVウォーズのもっとも重要な敗因は、各社の戦略が不適切だったこと、より具体的には、環境の変化に合わせて(より理想的には環境の変化を先取りして)戦略を形成し、また転換していく能力――すなわち「ダイナミック戦略能力」――が欠如していたことであった。たとえば、緒戦に圧倒的な勝利を収めたシャープとパナソニックは、いずれもその時の戦略を墨守したために、最終的には惨敗した。

 また、次いで重要だったのは、「トップ・マネジメントの選任・継承に関するコーポレート・ガバナンス」の欠如だった。薄型TVウォーズは十年近くにわたったためにその間にウォーズを主導したトップから次の経営者への交替があったが、先任トップが“院政”を敷いて後継トップの戦略に影響を与え、それが各社の“負け方”をより悪いものにしたのである。この他では、とくに、トップ・マネジメントの「敗戦責任」とはいかなるものかを明らかにしたことと、ビジネススクール教育の重要性を指摘したことを記しておきたい。

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最終更新:9/17(火) 6:30
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