ここから本文です

コロンボ刑事 古びたレインコートに漂う親近感と貫禄

9/18(水) 6:05配信

NIKKEI STYLE

《ダンディズム おくのほそ道》

 19世紀の英国からフランスへと広がったダンディズムとは、表面的なおしゃれとは異なる、洗練された身だしなみや教養、生活様式へのこだわりを表します。服飾評論家、出石尚三氏が、著名人の奥深いダンディズムについて考察します。

【写真はこちら】ダンディズム おくのほそ道 コロンボ刑事のコート

■衣装はピーター・フォークが自前で用意

 ピーター・フォーク演じる「刑事コロンボ」は2018年、放送開始50年を迎え、昨年は多くの名作が再放送されました。

 「刑事コロンボ」で個人的な思い入れがある作品は1973年の「偶像のレクイエム」です。これには往年の名女優であるアン・バクスターが出演していますが、それとは別に、衣装デザイナーのイーディス・ヘッドが、一瞬顔を出しているのです。撮影所の中という設定なので、リアル感を出すためだったのでしょう。

 イーディス・ヘッドは今や伝説的な存在です。「ローマの休日」でオードリー・ヘップバーンの衣装をデザインしたのも、イーディス・ヘッド。ヒッチコックの「裏窓」の衣装もそう。アカデミー衣装デザイン賞を8回受賞してもいます。

 イーディス・ヘッドは小柄で控えめな性格といわれており、瞬時とはいえ、よくもまあ「偶像のレクイエム」に出たなあという思いがあります。その意味でも貴重な映像でしょう。

 イーディス・ヘッドの存在からも分かるように、映画の作品にはすべて衣装担当がいます。テレビドラマもそう。68年に「刑事コロンボ」が始まるときにも、コロンボ刑事用の衣装がそろえられていました。でも、ピーター・フォーク自身はそれがお気に召さなかったのです。なにか、わざとらしい衣裳だと思ったのでしょう。

 「ふと家の2階のクローゼットにあったレインコートを思い出したんだ。勘が働いたとしかいいようがない」

 クローゼットの奥に打ち捨てられたような、古いレインコートがあることを思い出した。それこそがピーターの思うコロンボの印象にぴったりだったんです。その古いレインコートに合わせて、ネクタイは捨てようと思っていた、くすんだグリーンの1本を締めた。さらには、他の衣装も自前でそろえてしまいました。彼自身が著した『ピーター・フォーク自伝』には、そのように出ています。

 この1着、ここでは「コロンボ・コート」と名づけたいのですが、ピーター自身はあくまでも「レインコート」だと考えていたらしいのです。でも、レインコートにしては少し丈が短かすぎるように見えますが。

 余談ですが、足元にはイタリア製のショート・ブーツを合わせました。これもむかし、ピーターがイタリアで買った古物であるとのことです。

 もしコロンボが月並みな刑事の服装だったら、あれほどのヒット作品になったでしょうか。疑問です。あたかも隣のおじさんのように思えたから親近感が湧いたのではないか。

1/3ページ

最終更新:9/18(水) 6:05
NIKKEI STYLE

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事