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大型しゃもじが頭頂部に…上司から受け続けた理不尽な暴力とは

9/18(水) 8:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

本記事では、朝日新聞記者・牧内昇平氏の著書、『過労死: その仕事、命より大切ですか』(ポプラ社)より一部を抜粋し、長時間労働だけでなく、パワハラ、サービス残業、営業ノルマの重圧など、働く人たちをを「過労死」へと追いつめる職場の現状を取り上げ、その予防策や解決方法を探っていきます。

休日デート中、上司からの「理不尽な指示」とは

2010年初冬、全国有数の繁華街「渋谷センター街」に立つ商業ビルで、当時24歳だった青年が自ら命を絶った。ビルの4階にあるステーキ店の店長を務めていた心やさしい青年を追いつめたのは、極度の長時間労働と上司からの暴行だった…。

前回の続きです(関連記事「 極度の長時間労働と暴力で自死…残業は過労死ラインの3倍近く 」参照)。

長時間労働に加えて、古川和孝さんを追いつめていたものがあった。それを教えてくれたのは、和孝さんの職場の仲間たちだった。

「カズはいつも怒られていました。殴られることもあったんです」

泣きながら両親にそう話したのは、センター街店の元従業員で、和孝さんと交際していた中国人女性Kさんだ。Kさんは07年4月に来日し、日本語の勉強をしながらセンター街店でアルバイトをしていた。仕事を教えてくれた和孝さんのやさしい人柄にひかれ、二人は交際を始めていた。

「加害者」は和孝さんが勤めていた渋谷東口店やセンター街店を統括するエリアマネジャー職のAだった。上司とはいえ年齢は1歳しか変わらないこの男から、和孝さんは暴力や理不尽な指示などさまざまないじめ、パワハラを受けていたという。

Kさんによると、ある日和孝さんの顔がひどくはれていたことがあり、理由を聞くと、和孝さんは「Aに殴られた」と話した。亡くなる2年前の2008年9月5日には、こんなこともあった。この日は、前月から交際し始めた二人の初デートの日だった。横浜の遊園地に出かけ、6枚つづりの乗り物のチケットを買った時、和孝さんの携帯電話が鳴った。Aからだった。電話を切ると和孝さんは深いため息をついた。「店で使うソースが足りない。買って届けるように」。電話の主は、つかの間の休日を楽しんでいる和孝さんにそう命じたという。

結局二人はほとんど遊ばずに渋谷に引き返した。和孝さんは近所のスーパーでソースを買って店に届け、そのまま3時間ほど店に残って働いた。Kさんはその間、店の近くのコーヒー店で沸き上がる怒りや疑問と戦いながら、和孝さんの仕事が終わるのを待った。ソースはどこのスーパーでも手に入るごく一般的なものだった。だとしたら、その日のアルバイトが買いに行けば済むはずではないか。久しぶりの休日なのに、なぜ──?

Kさんは、このデートの時に使えなかったチケットをいつまでも捨てずに持っていた。よほど悔しかったのだろう。

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最終更新:9/19(木) 19:42
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