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男性が術後に死亡した「東大病院マイトラクリップ事件」の疑惑

9/18(水) 7:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

2018年10月7日、東京大学医学部付属病院循環器内科で41歳の男性が亡くなった。治療のために施行された僧帽弁のカテーテル治療(マイトラクリップ)手術の直後であったことから、東大病院の対応に疑惑の声があがっている。そこで本記事では、坂根Mクリニックの院長であり、「現場からの医療事故調ガイドライン検討委員会」委員長を務めた坂根みち子医師が、「東大病院マイトラクリップ事件」の疑惑について解説する。

東大病院でマイトラクリップ手術後に男性が死亡

【本稿の要点】

●東京大学医学部付属病院でマイトラクリップ手術後に亡くなった人がいる

●東大は原病(拡張型心筋症)による死亡としたが、事実はカテーテル操作の合併症(血気胸)による死亡と思われる

●遺族への説明が不十分だった

●死亡診断書の記載には問題があった

●院内の検討会での検証が機能していない?

●合併症による死亡は、現在の医療事故調査制度では報告する必要はないが、その際、院内できちんと検証して医療の質と医療安全システムを改善させる必要がある

●東大の対処法に問題があり、医療界全体が「隠蔽体質」だと誤解されうる

2018年10月7日、東京大学医学部付属病院循環器内科(小室一成教授)で41歳の男性が亡くなった。死亡診断書には「特発性拡張型心筋症による慢性心不全の急性増悪」と記載されていたが、亡くなったのは、その治療のために施行された僧帽弁のカテーテル治療(マイトラクリップ)手術の直後だった。だが、死亡診断書にそれを読み取れる記載はなかった。

この問題は、独自に調査報道するNGO「ワセダクロニクル」が詳細な報道を続けており(http://wasedachronicle.org/articles/university-hospital/h8/)、本年1月以降は、大手各社のメディアも後追い報道をしている。東大の小室一成教授は、3月末に行われた日本循環器学会最大の学術集会である、日本循環器学会総会の今年の会長だったために、薄氷を踏む思いだっただろう。

筆者は、循環器専門医であり、一般社団法人日本医療法人協会・医療安全調査部会の委員として医療事故調査制度にも関わっているため、この問題には注視してきた。小室教授の学会長としての仕事も無事成功裏に終わった時期でもあり、世間を騒がしているこの問題をいつまでも放置するわけにはいかない。この件の何が問題なのか述べたい。

結論からいうと、この件は、カテーテル合併症による死亡であった可能性が高い。

手術を開始したものの、カテーテルでマイトラクリップを留置するところまでいかなかった。その手前、心房中隔に穴を開けてカテーテルを進めるべきところで、ずれた場所を焼灼してしまい、肺を傷つけ血気胸を起こしてしまった可能性が大きいのだ。結局、心房中隔を穿通できず、手術は途中で中止となっている。

ここまでは、侵襲的な医療行為を行う以上起こり得ることである。だがそこに重大な問題が隠されている。術直後の胸部レントゲン写真で気胸を見逃し、気づくのが丸1日遅れたのである。

もともと重症低心機能だった患者である。循環動態の悪化は、病状をドミノ倒しのように悪化させていった。マイトラクリップ手術が途中で中止となったのが9月21日。翌日には血気胸に気づかぬまま、集中治療室から一般病棟に転出し、その後急変、26日には一度心肺停止となるも、集中治療が功を奏し一旦回復基調。だが、再び状況は悪化し、手技から16日後に敗血症性ショックで亡くなっている。

さて、問題はここからである。まず、遺族にカテーテル手術の合併症で血気胸を起こしたことが事態を悪化させた可能性について十分な説明をしていない。死亡診断書にも死因を「慢性心不全急性増悪」とし、その原因として「特発性拡張型心筋症」としか書かれていない。

そして、解剖は遺族が希望しなかったということで行われなかった。確かに拡張型心筋症による慢性心不全であったことは間違いない。だが、この時急変したきっかけは、血気胸である。血気胸の診断の遅れが治療の遅れを招いた。診断が早ければドミノ倒しを防げたかもしれない。痛恨の見逃しである。

その事実を遺族にきちんと伝えず、死亡診断書にも書かなかった。本来なら、事実を話した上で、遺族には真摯に謝罪し、原因解明のために、解剖をお願いするのが筋であった。

10月7日に男性は亡くなり、10月19日には、院内での検討会が開かれている。医療安全の担当者が出席しているところも見ると、M&M(Mortality & Morbidity)カンファランスと思われる。

M&Mカンファは死亡症例や重大な合併症を来した症例を対象に、悪い転帰に至った原因を医療システムや環境・組織レベルであぶり出し、次の失敗を回避することで医療の質向上をめざすカンファランスである。個人の責任を追求するのではなく、何が起こったのか、なぜ起きたのか、どうすればよかったのかを検証していく。

東大で比較的すぐにこのカンファランスが行われたところは、一見システムが機能しているように見られる。このような検討会は院内調査が主体であり、そこでの討論・再発防止策を現場へフィードバックし、医療の質と安全を自律して高めていくことが極めて重要な点である。だが、その後の東大の対応を見ていると、東大のM&Mカンファは形骸化しているのではないかという疑いが残る。

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最終更新:9/18(水) 7:00
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