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加害者の体液を自分で採取できる「#MeTooキット」はなぜ批判されたのか?─考案したのは性暴力被害者

9/19(木) 19:00配信

クーリエ・ジャポン

性暴力被害にあった時に加害者の体液を採取し、DNAを証拠として保存したり、血液や尿を検査して薬物反応を調べたりするための「レイプキット」という検査キットがあることをご存知だろうか。日本ではあまり知られていないが、一部の警察や病院の緊急外来で利用することができる。

アメリカではレイプキットの存在は知られているが、被害者の中には様々な事情で被害直後に病院に行くことができない人もいる。そうした被害者のために、アメリカのふたりの女子学生が自宅で証拠の保存ができるレイプキット「#MeTooキット」を発表した。まだ企画段階で、2020年春発売予定だという。

ところが、このキットが司法界を中心に大きな批判を呼んでいる。「ヴォックス」や「CNN」「バズフィードニュース」など、アメリカの複数のメディアが報じた。

「#MeTooキット」のコンセプトを発表したのは23歳の大学生マディソン・キャンベルだ。彼女自身、大学のキャンパス内でのレイプ被害にあった経験をもとにこのキットを考案した。

「性的暴行の被害を受けたあと、私は自分自身の体に触ることができず、誰かに触られることも不可能でした」と彼女は「ヴォックス」に語っている。なぐさめようと友人がハグをしてくるのさえ嫌で、第三者に診察されることなどありえなかった。

キャンベルはこの経験をもとに、被害者には自宅という落ち着いた空間で証拠を集める権利があると考えるようになった。キットを使えば、加害者の体液を採取し、保存することが可能だという。また、携帯アプリも開発し、被害者が証拠を残す際に支援する。

しかし、司法界からは厳しい批判が寄せられた。8月末、ミシガン州検事総長のダナ・ネッセルは販売停止命令を出し、警告を発している。

「証拠を守るためには非常に厳密なやり方があります。証拠は裁判所に届けられ次第、永久に保存され、どんな方法であれ変質されることが決してないよう信頼できる人の手にゆだねられます」

「自宅での証拠集めキットは多くの性暴力サバイバーが必要とするヘルスケアを提供しません」

「医学的検査はきわめて重要です。なぜなら、それにより傷を特定し、治療したり、妊娠やさまざまな性病や外傷を予防したり治療したりすることが可能になるからです。また、医療の専門家はメンタル面での必要なサポートを特定し、被害者を支援することが可能です」

弁護士のモニカ・ベックも、このキットで集められた証拠は裁判で使用できないとして、「CNN」で批判を述べている。

「被告人側の弁護士が、自宅で集めた証拠をどのように扱うか想像してみてください。率直に言って、サバイバーが訴訟を受理されるだけでもすでにとても難しいことなのです。これは、状況をより複雑にするだけです」

こうした批判に対して、マディソン・キャンベルは「バッスル」で釈明した。「私たちは女性ふたりで立ち上げたブルックリンの小さな会社です。私たちはただ、レイプ被害に会った人たちを助けるソリューションを提供したかっただけです。でもそれが考えられないような大騒ぎになってしまいました」

「ヴォックス」によれば、不法移民やトランス女性は差別を恐れて病院へ行くことをためらう可能性があり、この意味では「#MeTooキット」は被害者のニーズに応えてもいるという。

「バズフィード」によれば、「#MeToo」キットは初めての試みではなく、先月すでにアマゾンで販売が開始された「プリザーブ・キット」という証拠保存キットもある。商品化したのは、プリザーブ社の創設者で元FBI捜査官のジェーン・メイソン(59)だ。彼女によれば77%の性暴力被害者は、被害を通報しない。彼女はそうした被害者を守りたいのだという。

しかし、「プリザーブ・キット」もニューヨーク州の最高法執行官レティシア・ジェームズ司法長官からの販売停止命令を受けている。

「ヴォックス」は「キャンパス・レイプを終わらせる」という団体の広報担当者モーガン・デューイの言葉を引いて記事を締めくくっている。デューイはテクノロジーによって被害者のためのソリューションを作り出そうとする試みは評価しつつも、こうしたテクノロジーは「文化を変えることはできず」代わりに「自分の身を守る責任を被害者に負わせている」と言う。

結局、大切なのは文化や社会の側の認識を変えていくことなのかもしれない。

COURRiER Japon

最終更新:9/19(木) 19:00
クーリエ・ジャポン

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