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「仕事第一主義」が夫婦の崩壊と男性の孤立を招く

9/19(木) 6:00配信

JBpress

 混沌とした社会に振り回され、理想と現実の落差に苦悩を抱く夫婦。夫婦崩壊を回避するためには、どうすれば良いのか。近畿大学教授でジャーナリストの奥田祥子氏が、長期にわたる取材を重ね、夫婦の実態に迫った。(JBpress)

 (※)本稿は『夫婦幻想』(奥田祥子著、ちくま新書)より一部抜粋・再編集したものです。

■ ネガティブな夫婦の形

 取材対象者の多くが口にした言葉からは、目の前の現実から目を背け、「幻想」の中だけにしか夫婦像を描けない男女の悲哀を感じずにはいられなかった。と同時に、苦悩し、憤りながら、それでもなお、夫婦にかけがえのない関係性を求め続ける人間の性(さが)に、私は幾度となく激しく心揺さぶられたのである。

 古くは「家庭内離婚」「濡れ落ち葉」「くれない族」から、「熟年離婚」「卒婚」「鬼嫁」まで、夫婦をめぐる問題や現象、新たな形態などをまるでキャッチコピーのように面白おかしく表現した言葉は、いつの時代にも事欠かない。それほどまでに「夫婦」は常に耳目を集めてきたといえるだろう。大半がネガティブに捉えた概念でありながらも。

■ 仕事一辺倒のツケ

 男性の「孤独」が顕在化するのは、定年退職後ということになるだろう。だが、それは妻など身近な人間だけでなく、周囲の誰から見てもそうとわかるほど顕著に現れるのが「定年後」ということであって、正確には定年を迎えるずっと以前からすでに、男性は孤独を感じ始めている。そうして、いつからか、それは「孤立」へと深刻化していくのだ。

 なぜ、男性は孤独、そして孤立に陥りやすいのか。大きな要因は仕事第一主義である。

 高度経済成長期に成熟した「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業は、「一家の大黒柱」として家庭での権威を保証する代わりに、妻子を養うために仕事に身を投じる重量を男たちに課し、男性と仕事を物理的にも精神的にも密着させた。仕事中心の男性が、職場以外の場での人間関係が乏しくなるのは当然のことともいえる。

 仕事一辺倒で家庭を顧みてこなかったツケが回ってきたかのごとく、男たちの心はさまよい、孤独感が募り、やがて孤立化していくという悪化の一途をたどっているように見える。

 わが子の自立を促すためにも、父親の役目は欠かせない。それは物理的な関与の大きさに限ったことではない。

 父親の役割をしっかりと果たしてこなかったために、父親の務めから卒業する、つまり「卒父」などできるわけがなく、自身が人生の次のステップへと進んでいけないのだ。こうした父親としての姿勢・あり方が、夫婦関係においても悪影響を与えているのである。

 「卒母」を果たし、新たな自分のための人生を歩み出す女性が続々と出現しているのに対し、男性は前へと歩を進める妻子から取り残され、充実した残りの人生を送ることが難しくなってしまう場合が少なくないのである。

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最終更新:9/19(木) 6:00
JBpress

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