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苦境に喘ぐジェフを救うために――佐藤勇人が示す覚悟と献身ぶり

9/19(木) 12:25配信

SOCCER DIGEST Web

水戸戦では7試合ぶりの勝利を手繰り寄せる

 千葉の今季初の逆転勝利を告げる笛の音がフクアリに響くと、佐藤勇人はその場に崩れ落ちるように膝をついた。
 
 J2の32節で水戸と対戦した千葉は2-1で勝利。白星は25節の琉球戦以来で、ホームのフクアリでの勝点3獲得は23節の福岡戦以来だ。勝ち切った達成感と歓喜に感極まってうずくまった男を、後ろから抱きかかえるようにして立ち上がらせたのは、彼の双子の弟の佐藤寿人だった。
 
 J2でチームワーストタイの4連敗で迎えた30節の町田戦で、21節の徳島戦以来のスタメン出場を果たした佐藤は、試合前のロッカールームやウォーミングアップ時にチームメイトに向かって、そして自分にも言い聞かせるようにこう言った。
 
「プレッシャーを感じられるのもプロのスポーツ選手、サッカー選手ということだから、最後はもう楽しんでやれるくらいの気持ちでやろう」
 
 それまで試合をピッチの外から見ていて感じるものがあった。
 
「勝たなくちゃいけない。でも、勝てていない。連敗している。みんながすごくプレッシャーを感じていると思った。このタイミングで自分にチャンスが来て、自分の役割はハッキリしている。正直、自分はピッチでできることは限られている部分があるけど、ピッチ外のところ、みんなの顔を見ながらというところの役割は自分にある。プレッシャーを感じるのはそれこそ自分でいいし、他の選手には持っている良いものを出してほしいと思うから、自分はみんなの分を背負うつもりでやっていた」
 
 メンタル面をカバーするだけではない。30節・町田戦の後半、佐藤は中盤に生まれるスペースに意図的にポジションをとった。一度攻めたら終わりがちな千葉の攻撃に連続性を持たせるため、相手のクリアなどセカンドボールを拾い、相手陣内でサッカーをすることでリズムを作ろうとしたのだ。

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「守」から「攻」へのスピードを上げるために――

 その町田戦は1-1で連敗を止めたが、続く新潟戦は1-2の敗戦。佐藤が3試合連続スタメンで挑んだ前述の32節・水戸戦は、18位のチームが危機的な状況から脱するためにも、台風15号で被災した千葉県民に勇気を与えるためにも勝利が必要だった。佐藤は可能な限りダイレクトパスでスピーディーに展開した。
 
「自分たちは『守』から『攻』になった時がすごく遅いので、そのパワーとスピードを活かすためにはワンタッチ(パス)が必要だと思う。ボールを奪ったあとにワンタッチ(パス)で展開することによってスピードも上がるので、なるべくシンプルに有効なワンタッチ(パス)でやりたいなと思っていた」
 
 その効果もあって千葉はリズムよく攻めた。水戸に先制されて迎えた39分にはクレーベのゴールで1-1に追いつき、PKを決めれば逆転という60分の場面では、PKキッカーのクレーベにプレッシャーをかけようとする水戸のGKの松井謙弥の前に、佐藤は立ちはだかった。
 
「もちろん相手チームはクレーベにプレッシャーを与えると思う。でも、あのPKはクレーベが蹴ってくれたけど、チームのものだし、そのチームのものを背負ってクレーベが蹴ってくれているので。なるべくクレーベには変な影響がないように、クレーベにも『みんなで点を取りに行くんだ』というのが伝わるようにと思った」
 
 クレーベは落ち着いてPKを決め、その後、チームは水戸の反撃を受けるも、苦しい時間帯を耐え切って、7試合ぶりに勝点3を得た。佐藤は試合出場が危ぶまれるほどの痛みがある箇所を抱えながらも、試合終了の直前まで最前線へ走ってボールを追い、球際で身体を張って、攻守にアグレッシブなプレーを見せ続けた。
 
「自分も千葉県民としてパワーをもらいました。チームはまだ厳しい順位にいるので、今日みたいな試合をやってひとつ、ひとつ順位を上げていきたいし、千葉県民の皆さんが少しでも笑顔になれるように、勇気を与えられるようにやっていきたい」
 
 佐藤のように今のチームに必要な要素を考え、実践する献身的なプレーが増えれば、千葉は苦境から脱出できるはずだ。
 
取材・文●赤沼圭子(フリーライター)

最終更新:9/19(木) 12:25
SOCCER DIGEST Web

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