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困窮している人を「だったら働けよ」とさげすむ社会の、居心地悪さ

9/19(木) 11:01配信

現代ビジネス

自分より低賃金で働く人がいる。最低限ギリギリで生活している人もいる。それは放置して当然のことなのだろうか? 人は自分の勤勉さや能力にふさわしい報酬を得るものだと考えれば、疑問の余地はないように思えるが、はたしてそうだろうか。

納税額の低い人を「税金泥棒」と見なす社会は、どう克服されてきたか

ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジの犯罪心理学者であるジュリア・ショウ氏は、9月12日に発売された著書『悪について誰もが知るべき10の事実』で、こうした格差や不平等がそこら中にある世の中を理解するために、人びとは落ち度のある被害者を意図的に作りだすという。

自分が最下層に転落しないのは、自分に力があるため。人が転落するのは、その人に落ち度があるため。そう考えれば、私たち善人には絶対に悪いことが起こらないと、確信することができる。悪いことが起きた人は、能力がなく、落ち度があるからだ。

ここでも「悪」の仮面をはがそう。一見まともそうな、そんな考え方がどれだけ「必要悪」の名の下に私たちの社会を狂わせているのか。本の抜粋からお届けしよう。

「悪の権化」八つの特徴

 奴隷所有主たちは一体どのようにこの産業との関わりを正当化するのだろう? ロイ・バウマイスターによれば、特定の人やおこないを「悪の権化」と感じるとき、そこには八つの特徴がある。ケビン・ベイルズはバウマイスターの考えを練り上げ、奴隷制を理解するための自分の論考に応用し、「悪の権化には……八つの特徴がある。その大半が奴隷制の一般的な認識にも当てはまる」とした。この特徴をまとめると次のようになる。括弧内はベイルズが追加した奴隷制の場合だ。

 1 悪人は故意に人に危害を加える(奴隷所有者は奴隷に繰り返し残忍な仕打ちをする)。
2 悪人は人を苦しめる喜びに突き動かされる(奴隷所有者は奴隷を鞭打つことにサディスティックな喜びを感じる)。
3 被害者は潔白で善良だ(奴隷にされるようなことを何もしていない)。
4 悪人は自分たちとは違う人間、敵、部外者、外集団だ(奴隷所有者は私たちとは違い、私たちにはけっして所属できず、けっして所属することのない集団に属している)。
5 悪人は昔からずっとあのようだった(奴隷制はずっとこんなふうに、すべてを暴力で支配し、乱暴を働いてきた)。
6 悪人は秩序、平和、安全の対極にあるものの象徴だ(奴隷状態とは、暴力、破壊、家族の崩壊、安全の完全な欠如を意味する)。
7 悪人はうぬぼれ屋であることが多い(奴隷所有者は自分は奴隷より優れていると信じている)。
8 悪人は、感情、特に激情や怒りのコントロールができない(奴隷所有者の激情は奴隷が耐えるべき恐怖のひとつだ)。

 しかし問題もある。これを読み、この八つの基準すべてに当てはまることなどまずない、あり得ないのではないかと思ったなら、あなたは正しい。この八つの要素、特に最初の六つは、バウマイスターが悪の権化の神話と呼んだものだ。ひとつひとつ見ていけば、社会が悪と呼ぶ特徴と考えられるものもあるが、まとめてひとつのイメージとして捉えることはできない。誇張し、過度に単純化することで、他者を害する者たちから自分を遠ざけようとしているだけだ。

 バウマイスターとベイルズは、私たちは人間や行動を悪の権化と考えるのかもしれないが、実はそれは適切ではなく、なんの役にも立たないイメージだと主張する。人間や行動はもっと微妙なものだからだ。

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最終更新:9/19(木) 15:55
現代ビジネス

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