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近鉄・三原監督の退任騒動はなぜ起こったのか/週ベ回顧

9/20(金) 10:14配信

週刊ベースボールONLINE

 昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

東京はペプシとの交渉を打ち切り?

 今回は『1968年11月25日号』(初出修正)。定価は60円。

 近鉄・三原脩監督が突然、退団声明をした。
 68年、就任1年目の三原監督の下、春の珍事とも言われ、万年最下位のチームが春は首位にも立っての4位。球団も三原も続投のつもりだった。
 事態が動いたのは、11月5日、近鉄本社での佐伯勇オーナー、芥田球団社長とのトップ会談だった。
 そこで三原は、佐伯オーナーから契約について「来年も今年のままで頼む」と言われ、顔色が変わった。

 67年オフ、三原と近鉄の契約は契約金なしの1年契約。大洋とケンカ別れのような形で飛び出しただけに、1年目は条件度外視で就任要請を受けた。しかし、しっかり結果を出したにもかかわらず、なぜ同じなのか、の思いが強かったようだ。
 さらに言えば、近鉄は内々で三原監督に「契約金ありの2年契約」を提示していた。それをオーナーが突然覆したことで不信感も生まれた。

 三原は再度、芥田社長と会って確認したが、「1年契約は会社の最終決定」と言われ、その場で辞意を伝えた。

 三原監督は芥田社長の早大の後輩。佐伯オーナーも「芥田に頼んでおけば大丈夫」と思ったのかもしれない。その後、近鉄はあわてて慰留に動いたが、三原は交渉自体を拒否。 
 8日には自宅で会見を開き、
「私はオーナーに逆らって飛び出した人間です。説得されても、はい、そうですかとは残れません」
 と語った。

 よくある話なのだが、これは近鉄本社と現場の意識の違いもある。本社にすれば、球団は「カネばかり食う道楽者」。高校出の選手に1000万、2000万と契約金が動くことへの反発もあった。
 4位とはいえ、赤字が画期的に解消されたわけでもなく、「財布のひもをゆるめる必要なし」となっていたらしい。佐伯オーナーのバファローズ愛は有名だが、その社内の声との折り合いが、「同じ条件」だったのかもしれない。

 このとき、10日、南海監督をやめたばかりの鶴岡一人に、東京の永田雅一オーナーがGM就任を要請する話をしたが、その席で2人が佐伯オーナーに電話を入れ、「パ・リーグのために三原を離すな」と伝えたという話もある。

 ともあれ、近鉄は一転、熱心な慰留交渉を開始。
 問題は“落としどころ”だった。三原が近鉄の監督の継続をしたいのは、分かっていた。
 ただ、三原が振り上げたこぶしをどう下ろさせるのか。

 近鉄は芥田を交渉役から外すとともに、三原が世話になっている財界の人など、さまざまな立場の人から話してもらったようだ。
 三原は最後、「私が反発を続ければ面倒になる。私は良識ある第三者の意見に従った」と辞意を翻したという。

 実は、当時、監督と球団の契約は、実はかなりあいまいなものだった。
 水原茂が巨人監督時代、一度も契約書をかわしたことがなかった、というのは有名な話だが、三原はそれをよしとせず、常に契約書を交わし、また、現場を知らぬ親会社からの口出しを極端に嫌った。三原によって球界全体の監督、さらにはコーチ陣の待遇が上がっていたのも事実らしく、かつて鶴岡が、
「監督稼業が潤うようになったのは三原さんのおかげだ。三原さんの家には足を向けて眠れない」
 と語ったことがある。

 鶴岡と言えば、阪神から監督就任要請があったが、これはとん挫。ヘッドコーチ・後藤が内部昇格で監督になりそうだ。  
 阪神は監督、コーチとの契約がもっともあいまいだった球団とも言われ、契約書がないのはもちろん、契約金や契約期限の提示もなかったという。

 以下、小ネタを小刻みに足す。
 表紙は巨人・王貞治と日米野球で来日中のカージナルスのセペダだが、巻頭対談は王とギブソンだった。
 今回の日米野球で2試合を完璧に抑えながら、以後、投げなかった阪神・江夏豊。どうしてなのかと思っていたが、球団命令で出場辞退になっていたらしい。シーズン中の疲労も考え、「これ以上、投げさせられたらたまらん」ということだった。
 ただ、正直、見たかった。あのときの江夏なら、あと2試合くらい投げても完璧に抑えていたはずだ。
 大げさと思うなかれ、そうしたら日米の野球史に新しい1ページが加えられただろう。

 東京とペプシの交渉は、どうやらダメになったようだ。永田オーナーは、
「できることなら日本の会社のほうが気心が知れていて具合がいい。アメリカとは合作映画をつくったことがあるが、お金にルーズで手を焼いたので」
 と話していた。

 とはいえ、球団の累積赤字はすでに14億円とも言われていた。今は知己の岸元首相に仲介を頼み、2社と交渉中とのことだ。

 ドラフト間近、神宮の怪物、法大の田淵幸一のインタビューがあった。意中の球団を聞かれ、
「在京のセ・リーグで優勝のできる球団です。それ以外ならノンプロに1年くらい行くかもしれません」
 と語った。巨人一本か。

 では、また月曜日に。
 
<次回に続く>

写真=BBM

週刊ベースボール

最終更新:9/20(金) 12:15
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