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知られざる「北極の落雷」まで検知、地球規模のセンサーネットワークの潜在力

9/20(金) 8:11配信

WIRED.jp

北極で雷雨が発生したのは、2019年6月28日と8月10日のことだった。北極での雷雨は非常に珍しいが、気候変動が激化するにつれ、それも珍しいものではなくなりつつあるのかもしれない。

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この誰もいない場所で起きた雷雨については、ヴァイサラ(Vaisala)という企業の助けがなければ、存在すら知られなかっただろう。同社はセンサーのネットワークと三角測量によって落雷の発生を特定し、そのデータを米国立気象局(NWS)などに提供している。世界規模のネットワークのおかげで、6,000マイル(約9,656キロ)離れた場所の雷も検知できるという。

「この比較的新しいシステムによって、ここ5年から10年の間で最北端の地で落雷を検出する能力が劇的に向上しました」と、アラスカのフェアバンクスにあるNWS地方本部の気象学者、アレックス・ヤングは言う。「30年前であれば、こうした事象が起きても誰も気づかなかったでしょうね」

雷が出すのは、音や光だけではない

本題に入る前に、雷がどのようにできるのかをおさらいしよう。

太陽によって地球の表面が温められると、空気や水分が上昇して水滴ができる。太陽のエネルギーが十分にあれば、温かく湿った空気が上昇し続ける一方で、大気中の冷たい空気は下降する。これによって、大きな対流雲[編註:積乱雲もこのひとつ]が生まれ、そこで電荷が発生することで雷が生じるのだ。

北極の空気は通常、そこまでの対流を起こす熱をもたない。しかし、現在のような気候変動の時代に、「通常」などもはや存在しないのだ。

ヴァイサラにとっての幸運は、雷がさまざまなかたちで自らの存在を知らせることである。われわれ人間は、閃光や、耳をつんざくような音によって雷の発生を知る。一方、われわれは感知できないが、落雷による大電流は電波バーストも引き起こしている。

雷が出す「電波」を受信

落雷のほんの一瞬、稲妻は巨大な電波塔のようなはたらきをする。「雷の放電が地面に達するとき、電荷が数キロメートルにわたって空中を伝わることもあります。この放電が、空中の一時的なアンテナとして作用するのです」と、ヴァイサラの科学研究員を務めるライアン・サイードは説明する。

この雷からの電波を検出するには、大気の特性を利用しなくてはならない。地球の大気上層内には、原子が電離しイオン化した電離層(電離圏)という領域がある。この電離層が、電波のかなりの部分を地上に跳ね返してくれるため、それをヴァイサラのセンサーが検出できるというわけだ。

ヴァイサラのセンサーは、AM放送を受信するためのループアンテナを大きくして、かつ感度を高めたものだと考ればいいだろう。

「十分に感度の高い受信機があれば、遠く離れた距離からでも電磁波の放射を検出できます」とサイードは言う。「われわれは世界中に設置した数十の受信機を使って、北極を含めたあらゆる地域の雷を監視できます」(下の動画は、世界中で起きている落雷を視覚化したものだ)

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最終更新:9/20(金) 8:11
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