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Netflix『クリスティンの奇妙なお菓子教室』で大人気!クリスティン・マッコーネルって?

9/20(金) 20:13配信

GQ JAPAN

現代に生きる女性たちの/による表現をめぐる、ライター・野中モモによる連載。第16回は、ネットフリックスの人気番組『クリスティンの奇妙なお菓子教室』で知られるマルチアーティストについてのお話。

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独学でつくり上げた奇想の世界

カレンダーが9月に切り替わるやいなや、街のお店のディスプレイを彩るカボチャやオバケや魔女や黒猫が視界に飛び込んでくるようになりました。えっ早すぎない!? もうそんな!? 今年終わっちゃう! と、焦りを感じずにいられない今日この頃。ハロウィンが秋の行事として大きなポピュラリティを獲得し、相対的にクリスマスの存在感がどんどん薄くなっていくこの流れ、きっと2010年代の日本の気分として記憶されることになるのだろうな、と思います。

渋谷の路上での大騒ぎなど、近年は一部で治安の悪化も見られるようになり、ハロウィンの流行を苦々しい思いで眺めている人も決して少なくないでしょう。確かに、ああいった場面で型にはまったハメの外しかたしかできない連中が調子に乗っているのを見てつい舌打ちしたり(だって痴漢とか許せないし)、お金持ちをもっとお金持ちにするだけの消費が煽られてないか!?(グローバル大企業のキャラクターグッズとか、かわいいけどあまりに安くてまともな労働環境で製造販売されてるとはとても思えないやつがいっぱいだし)とモヤモヤしたりしてしまう部分は私にもあります。とはいえ、集まって楽しい時間を過ごす機会は、庶民にとっていつだって尊いもの。みんながもっと自分なりに創意工夫を凝らして楽しめたら素敵なのに……。

というわけで、今回はハロウィンを迎えるにあたってぜひ参考にしていただきたいアメリカのマルチアーティスト、クリスティン・マッコーネルをご紹介します。「世間の大多数の人よりもほんのちょっとだけたくさんの魔法を求めている人間として、私は祝祭日の数々を満喫する愉快で新しい方法を夢想して1年の大半を過ごしているの」と語る彼女は、お菓子作りの名人。加えて造形作家、フォトグラファー、スタイリスト、現在はYouTuberでもあります。

もともとヘアメイクを学び、写真やデザインの仕事をしていたというクリスティンは、最初は「趣味」としてネットに投稿していたユニークな焼き菓子で注目を集めました。映画『エイリアン』に登場するモンスター「フェイスハガー」を立体的に表現したクッキーなど、SFやホラー映画、ファンタジーの世界にインスパイアされたお菓子に加えて、それらを引き立てる大道具や小道具も自作。さらに衣装も手作りし、自ら50年代テイストの「素敵な主婦」(しかし夫は不在、自分と猫だけ)や、ゴージャスな女優風スタイルで写真に収まって、愉快な奇想の世界を作り上げます。お菓子作りもすべて独学で、数年前まで簡単なクッキーやブラウニーしか焼いたことがなかったという彼女は、どんどん腕を磨いていきました。

そうしてネットの人気者となった彼女は、一昨年、はじめての著書『いかさまお菓子の本 淑女の悪趣味スイーツレシピ』(国書刊行会)を刊行しました。私はこれを翻訳する機会に恵まれたのですが、ヴィジュアルはもちろんテキストもユーモラスで洒落ていて、やっていてとても楽しいお仕事でした。ヤード・ポンド法をメートル・グラム法に換算して調整するのは本当に面倒だったけど……。その笑いのセンスと奇妙なアイデアとショーマンシップはティム・バートンの映画の大好きな部分を彷彿とさせ、そのうえ、退屈な日常をイマジネーションで変えよう! あなたもできる! と読者を優しく励ましてくれるのだから夢があります。

このようになんでも自分で作っちゃうDIYの達人として世に出たクリスティンですが、昨年にはNetflixで冠番組『クリスティンの奇妙なお菓子教室』が制作されるというまさかの展開を見せ、クリエイター兼主演女優を堂々こなしてみせました。1話30分未満のドラマ仕立てで、クリスティンと『セサミ・ストリート』などで知られるジム・ヘンソン・カンパニーによるパペットたちが一緒にお菓子作りを教えてくれます。バーレスクの女王ディタ・フォン・ティースも鏡の中のゴースト役で出演。個人では実現不可能な規模のプロダクションで誰も見たことのないものを見せようとする意欲的な番組だったのですが、残念ながら1シーズンで終了が決定してしまいました。面白かったんだけどなあ。

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最終更新:9/20(金) 20:13
GQ JAPAN

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