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『凪のお暇』中村倫也が考える、“やりたいこと”の叶え方 「初期衝動を新鮮な気持ちでキープする」

9/20(金) 12:16配信

リアルサウンド

 主人公・凪(黒木華)が、空気を読み、周りに流されるがままに生きてきた人生をリセットし、様々な人との出会いから、自身の大事な気持ちに気づいていくドラマ『凪のお暇』(なぎのおいとま・TBS系にて金曜22時放送)。視聴者からは、回を重ねるごとに、登場人物たちが自分自身と向き合っていく姿を通して、各々が受け取り感じたことを綴った、思いの溢れたコメントが寄せられている。

【写真】最終話のゴンと凪のシーン

 今回は、第9話で凪への真っ直ぐな想いを伝え、第1話から変身を遂げている安良城ゴン役の中村倫也に、これまで本作で描かれてきたテーマについて最終回を前に振り返ってもらい、本編とはまた違う目線から現代を生きる人々の悩みに答えてもらった。

■「視聴者の方それぞれのゴンの受け取り方がある」

――原作漫画では、ゴンはロン毛で髭を生やしている。そんなキャラクター像から、どのように実写のゴンを作っていきましたか。

中村倫也(以下、中村):原作モノを映像化する時にいくつか挑み方があるとして、漫画のキャラクターの服装や髪型に似せられるなら似せたほうがいいと思っています。ただ、今回のゴンは、俺がそのままやっても似合わないだろうなと。『凪のお暇』というドラマ全体の流れに、中村倫也の素材と僕が大事にしたいと思ったゴンの要素を合わせて放り込んだ時に、僕が考え得る一番効果の出るビジュアルや口調を提案してこのようになりました。ゴンの要素を並べて、そこに僕を入れて、粘土をこねたらこうなったみたいな。

――ゴンさんが、打算なく、周囲の人たちをさらりと虜にしていく感じが……。

中村:上手い?(笑)。 ありがとうございます。

――かわいすぎず、あざといとも言えなくて、嫌みもない感じで。どういう風にされているんですか。

中村:内緒(笑)。

――えっ(笑)。自然体なんでしょうか?

中村:いや、見たり感じた情報をゴンのフィルター通して次のアクションをしていくと自ずとそうなるというか。今回、「こう見せよう」とすごく意識するようなことはあまりやっていないんです。それが、視聴者のみなさんの想像を膨らませられるゴンの余地になっているんじゃないのかなと思います。

 ゴンは、自分が思って行動しているものと全く違うように相手が感じたり、ミステリアスだという風に解釈される人間で、「メンヘラ製造機」なんて呼ばれていて。だから、視聴者の方が想像力を働かせて、それぞれのゴンの受け取り方があるんだと思います。

――中村さん自身の自然体に近いのかなとも感じたんですけど、そんなわけではない?

中村:いや、僕はもっとゴリゴリの体育会系の人間なので。暴力で生きてきました(笑)。

■「ゴンの理解者はいない」

――ゴンという役を演じたことで気づいた女心とかありますか。

中村:ないっす。逆に教えてほしいです。

――では高橋一生さん演じる慎二やゴンの行動で、男性のこういうところ分かるなって思った部分はありますか。

中村:慎二もゴンも極端ですよね。学んだこと……別にないですね(笑)。

――凪ちゃんをかなり振り回してるように見えます。

中村:それはそうですね。例えば、僕もゴンにちゃんとしろよって思うことはあるんですけど、役に対して理解と弁護ができるようにならないと芝居はできないんですよ。なので、慎二に対しても凪ちゃんに対しても、否定も肯定もなくて。演じる以上、良い悪いではなく、その性格を認めて、ある程度共感できないと演じられません。だから、僕自身はゴンに対する良い・悪いの感覚は今はもう忘れちゃっているかもしれないです。だから、視聴者の方が「ああいうところあるよね」とか「あれダメだよ」と好き勝手に盛り上がってくれるのは、より楽しみにしている部分です。

――ゴンが抱えている孤独感はどう感じていますか。

中村:ドラマではゴンの抱える寂しさとかは、そこまで描かれてはいないんですよね。台本の中でふとした「……」と書かれたところとかにそのニュアンスが薄っすら見え隠れしたらいいかなという程度でやってきていました。ゴンの理解者はいないですし、友達のエリィ(水谷果穂)がゴンのことを凪や慎二に説明するシーンがありましたが、彼女もモラルがある普通の人間なので、「あんた、だからダメなんだよって」って言われ続けていますし、やっぱりゴンは心を開き切れていない。

 ゴンは、自分のちょっとした人とのズレや欠落してる部分に対して「分かってもらえないんだろうな、この感覚」と思っているから、人にも喋らないんだと思うんです。そういう思いは、芝居をしていて自分の中だけで渦巻いている瞬間はあったりします。でもそれを特段表現することもなくて、僕の中で大事なエッセンスとしてベースに持っているだけです。

――第9話で登場人物たちが「WISH」と向き合う様子が描かれましたが、中村さんは自身の「WISH」とどう向き合っていますか。

中村:小さい頃からずーっと「やりたい!」と思うことばかりで。僕が学生の時には「今の若者は将来なりたいものがないんだって」と言われる世代だったから、ちょっとギャップは感じていました。大人になって社会に出てからどう「WISH」を成立させるか悩むことは増えましたね。「WISH」を成立させるには、絶対我慢や努力が必要になるので、「WISH」を描いた当時の初期衝動を新鮮な気持ちでキープすることが、大人になると大事だなって思います。

――中村さん自身が変わりたいと思って実際に変わったことはありますか。

中村:人見知りをやめました。完全には治ってはいないと思いますけど、そうじゃないふりを貫き通していると思います。変わったのかは分からないけど、変えることに何となく成功しているのかなと。

――変わりたいと思ってからすぐ変われました?

中村:もちろん、自分の中ではギアをチェンジする時のガコガコガコっていう状態はありましたけど、180度「やめた!」って振り切ったんですよ。それを習慣にしちゃうと慣れるんですよね。でも、そこでもまた、人見知りをやめたことによる弊害や摩擦も生まれたりするんですけど。

 9話でゴンは「人って変われると思うんだよ」と話していますが、僕もどちらかというとそう考えている人間で、変われるかどうかじゃなくて、変えようとしているかどうかだと思うんですよね。でもどっかでそれをやることの労力や大変さなど色んな項目を浮かべて未然に防いじゃう。でも一回「やる!」ってなって、その状態に慣れてしまえば、きっとできるんじゃないかなと僕は考えますね。

■「空気を悪くする必要がある時もある」

――「空気を読む」ことに対してはどう考えますか?

中村:うーん、難しいですね。空気を読むのが上手いか下手かはあると思いますが、みんな自然にやってることではあるんじゃないですか?

――「KY(空気読めない)」という言葉は平成19年の流行語で、ちょうど10年くらい前です。その頃から、世間的にも強く「空気を読む」ことが意識されていて、凪ちゃんと慎二も空気にとらわれています。そういう今の時代を生きる、空気にとらわれている人たちに向けて、中村さんなりのアドバイスはありますか?

中村:優先順位を決めたほうがいいですよね。このドラマが放送されて、いろんな記事でも取り上げていただいていますが、そこに反応している読者や視聴者の方は、程度の差はあれ空気を読む・読まないということに悩んでいる人だと思うし、悩んでいるということは優先順位の上位にあるんだと思うんです。

 空気を読めなくて嫌われても自分が楽しければいいやって人もいて、その人は「自分の楽しさ」の方が優先順位が上なんだろうし。空気を読まなきゃ、読みたい、読めるようになりたいんだったら、徹底的にやってみたらいいんじゃないんですかね。大抵落ち着きどころが見つかる気がするんだけど。……空気、僕自身はよく分からないんですよ。こういう仕事だから、「いや、それ間違ってるでしょ」って言えちゃうし、それで仕事がなくなったらしょうがないくらいの感覚でやっているので……。

――相手との間柄や場所にもよりますよね。

中村:会社だと重要な時もあるんだろうし、そういった働き方をされているみなさんの「空気を読む」とは、もしかしたら僕の場合はちょっと違うのかもしれないです。空気を悪くする必要がある時もあるから。

――そうなんですね。

中村:作品を良くしたいから、みんなが楽しんで率先してやっていたり自分も楽しい時でも、みんなの笑顔を壊してもでも言わなきゃいけないことはあるから、僕の中の優先順位に則って、空気をあえて読まないという選択することはあります。でもそれが、正解かどうかも分からないですから。だから……空気っていうよりも周りに誠意を持って行動すればいいんじゃないですか? 空気なんてどうせ見えないんだから(笑)。大事なものを守ったり、大事な人を笑顔にするためにその都度行動できればいいんだと思いますよ。きっと空気を読ませようとする人が多い環境の方が問題なんですよ。今、すごい深い話になりましたね?

――はい。かなり心に響きました。

中村:よかったです。

――凪ちゃんも慎二も「お暇」しましたが、中村さんにとって「お暇」したいなと思うことありますか?

中村:適度には休みが必要だと思います。あまり長すぎても寂しいし、週1~2日休みがあればいい人間なので。家族ができて将来、「夏休みだ、正月だ、旅行に行きたい」ってなったら「お暇いただきます」って言うと思いますけど、まだ独り身なので、今はこんなペースでいいですね。仕事がなかった頃、腐るほどお暇があったので、もう困っていました(笑)。こういう仕事だから休みが多すぎても不安になるというか。

――凪ちゃんを見ていると、自分を見つめる時間は必要ですが、休み過ぎても周りと比べて不安になったりもするものなのかなと。

中村:凪ちゃんに関しては、「もう逃げちゃえば」って思います。逃げた先で見つかるものもあるだろうし、それがこのドラマのスタートでしたよね。自分を守るために無責任になる必要がある時もあるんじゃないかと。過労死みたいなの、もう嫌じゃないですか。自分の心と体を守るためだったら、会社にとっては迷惑であっても、自分を守れるのは自分だけなので、そういう責任をほっぽり出す勇気も必要なんじゃないかなとは思います。

大和田茉椰

最終更新:9/20(金) 12:16
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