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恋愛ではなく連帯……『凪のお暇』慎二とゴンの関係は、なぜ深堀りされたのか

9/20(金) 17:00配信

文春オンライン

 恋愛ではなく連帯を描く物語、それが『凪のお暇』だ。

 一見、現在ドラマも放映され累計部数200万部も突破した人気漫画『凪のお暇』は、ひとりの「アラサー女性」の恋愛や生き方をめぐる物語に見える。主人公の凪は、会社での人付き合いや彼氏との付き合いに悩み、「お暇」つまり会社を辞め、無職期間を過ごす。そのなかで凪は自分のありかたや生き方に悩む。そして昔の自分を振り回していた、元彼の慎二、同僚、母親とも向き合っていく。――これが『凪のお暇』の主なストーリーになっている。

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 しかし凪が悩んでいるだけの話ではない。作中、凪は「お暇」を通してさまざまな人に出会う。アパートに住んでいる母娘、老女、同じく求職中の女性、とあるバーで働く女性たち。「お暇」がなかったら出会わなかったような、「ご近所さん」ともいえる人々たちと交流するのである。

 そしてアパートの隣には、とある男性が住んでいた。彼は作中「ゴン」と呼ばれ、「ゆるっとした空気」で人々を分け隔てなく包み込むキャラクターとして描かれる。ゴンと凪は、一度は恋愛関係になったが、その後「ご近所さん」に戻る……という過程が描かれているのである。

漫画にはなかったドラマのオリジナルエピソードの意味

 さて、ここで注目したいのが、漫画にはなかったドラマのオリジナルエピソードである。原作漫画では強調されなかった、凪の元彼・慎二と凪のご近所さん(凪の元彼でもある)ゴンの関係がドラマではより時間をとって描かれているのだ。

 慎二はある意味凪と同じく、空気を読みつつ生きるサラリーマンである。慎二は一見有能に見え、凪よりも「うまく」生きているように見える。しかしドラマでは、そんな慎二自身も自身の生きづらさに気づき、過呼吸になったり、会社を休んだりすることになる。

 強調したいのが、ここで会社を休むことになったきっかけが、凪ではなく、ゴンだということだ。

「性的な関係を含む恋愛」と「性的な関係を含まない連帯」

 普通に考えれば、「凪のお暇」の話なんだから、凪がきっかけで慎二は自分自身と向き合う休みを手に入れる……というストーリーにするのが穏当だろう。しかしこのドラマはそうしていない。慎二は、自分の彼女だった異性の凪ではなく、ともすれば恋敵ともいえる同性のゴンとの関係を形成する。1週間の夏休みをとった慎二は、その間ゴンの部屋にいることになるのである。

 さらに、ゴンは行きつけのバーで、凪についてこのような会話を交わす。

「まさか、凪ボーイのこと、2人でシェアでもするつもり?」 

 

「え?シェア?なるほど……。」 

 

(『凪のお暇』TBSドラマ第8話)

 少し解説をすると、アメリカのジェンダー研究者であるイヴ・セジウィックは「ホモソーシャルとは、女性を共有することで男同士の絆を強めている関係性だ」と述べたが、凪・慎二・ゴンの間にはそのような関係性が横たわる。つまり、人々のつながりにも「性的な関係を含む恋愛」と「性的な関係を含まない社会的な連帯」の両方があるということなのだが、『凪のお暇』は一見前者を描いているように見えて、実は後者を描いた物語ではないか……と指摘したい。

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最終更新:9/20(金) 17:00
文春オンライン

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