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「働き方改革」の目的を履き違えた企業の「本末転倒」な実態

9/20(金) 11:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

中小企業の人手不足が深刻化しています。2018年上半期における「人手不足倒産」の件数は3年連続で前年同期を上回り、2013年1月の調査開始以降の半期ベースでも最多を記録しました。中小企業が生き残るためには、まずは冷静に問題点を分析することが求められます。そこで本記事では、菓子卸・流通業でナンバーワンの利益率、在庫回転率、返品率の低さを実現した株式会社吉寿屋の神吉武司氏が、中小企業の問題点について解説します。

パフォーマンスの向上に成功している企業はごく僅か

新たな人材を採用するのが難しく、定着しないので育成もままならない──。この負の連鎖を断ち切るためにも、今いる社員のパフォーマンスを引き上げて仕事の効率を高めていくことが重要です。

しかし、日本企業の労働生産性が世界各国と比較しても低いというのはよく知られた話で、OECD(経済協力開発機構)のデータによると、日本の時間あたりの労働生産性(就業1時間当たりの付加価値)はアメリカの3分の2の水準に留まり、OECD加盟35カ国中20位でした(2016年度)。主要先進7カ国で見ると、データが取得可能な1970年以降、日本は最下位の状況が続いています。

日本政府はこの不名誉な状況を改善するべく「働き方改革」を打ち出し、労働生産性の向上に向けて国を挙げて動き始めました。中小企業の業務改善の取り組み状況を見る限り、それなりの効果は出ているようです[図表1]。

しかし実際には、労働生産性を高めるために社員のパフォーマンスを引き上げようとしても、なかなか思うように効果が出ていない中小企業が少なくないようです。

理由(1) 利益還元の目的と手段をはき違えている

社員のパフォーマンスを高めるインセンティブ(目標達成に向けた動機付け)としてよく利用されるのは「賞与」でしょう。期末に税理士と確定申告の打ち合わせをした際、思った以上に利益が出ているのが分かると、決算賞与を支給することがあるはずです。決算までに社員に支給額を通知し、実際に支給することができれば全額損金計上が可能なので、税理士から勧められることもあるでしょう。

このように確定した利益の一部を還元する取り組み自体は有意義だと思いますが、問題は“その目的”が何かということです。仮に目的が節税だった場合、社員に報いるのは「手段」になってしまいます。

利益が出ない年は税金対策の必要はないわけですから、手段である決算賞与やご褒美も必要ないことになります。それでは何のための利益還元なのか、本来の目的が見失われてしまいかねません。

本来の目的とは、社員を幸せにすることであり、そのための手段として決算賞与や報奨を渡すべきなのです。この目的に照らして考えれば、利益が出れば賞与を出し、出なければ渡さないという選択にはなりません。たとえ赤字になっても、社員に対する経営者の感謝の気持ちや誠意を見せる努力が大切なのです。賞与や報奨の金額の過多は関係ありません。社員に幸せになってほしいと願う経営者の思いが社員に伝わり、組織が一つになっていきます。

この目的と手段をはき違えている限り、インセンティブで社員のやる気や能力を引き出すことはできないと心得てください。

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最終更新:9/20(金) 11:00
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