ここから本文です

「AIホスピタル」が救う、大災害時の医療難民~千葉の教訓を生かせ

9/20(金) 7:01配信

現代ビジネス

 台風による停電で完全に市民生活がマヒした千葉の惨事。こうしたとき、真っ先に犠牲になるのが持病を抱える高齢者であろう。シカゴ大学名誉教授を務めたあと昨年夏に帰国、がん研究会がんプレシジョン研究センター所長として日本の最先端医療をリードし、『がん消滅』を上梓した中村祐輔氏が、いますぐに大災害から高齢弱者を守ることができる術を力説する。

「転んで死ぬことになった」60代以上の人たち…その悲しすぎる結末

「AIホスピタル」時代の到来

 私たちの暮らしのなかにAI(人工知能)が浸透しつつある昨今。アップルの対話型AI「Siri」や、アマゾンエコー、グーグルホームなどの「スマートスピーカー(家庭用AIスピーカー)」を利用する人が増えています。

 「Siri、目覚ましを明日の6時にセットして!」
「OK、グーグル!  エアコンをつけて!」

 などと便利に使いこなしている方も多いのではないでしょうか。

 じつは、医療現場にもAIが本格的に導入され、この数年の間に大きく様変わりすると予想されています。そのなかにあって、私は内閣府で2018年度からはじまった内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の「AIホスピタル」プログラムのディレクターを務めています。

 「『AIホスピタル』『人工知能の病院』だなんて、無機質で冷たい医療になりそう。どんどん人が排除されて、コンピューターやロボットばかりになるんじゃないの?」

 そんな不安に駆られた方は、どうか安心してください。

 私が考えているのはその真逆の世界です。AIホスピタルは、「温かい血の通った医療」を再び取り戻すために推進しているプロジェクトなのです。

 私は、がん研究会 がんプレシジョン医療研究センターで「ゲノム医療」「プレシジョン医療」「個別化医療」「オーダーメイド医療」の研究開発に携わる一方で、この内閣府の「AIホスピタル」の実用化に向けたプログラムも統括しています。そのため現在は、がん研究会のある有明と、内閣府のある永田町、そして自宅とをトライアングルで通勤する慌ただしい毎日です。

 昨年夏に帰国し、久しぶりに日本の医療現場を目にして痛感したのは、診療スタッフにゆとりがないことでした。医師や看護師に「患者さん一人一人をちゃんと診たい」という気持ちがあっても、あまりに忙し過ぎて「3分診療」と揶揄される診療にならざるを得ないのが現実なのです。

 診察室で、主治医は患者さんを診ている間に電子カルテに記載しなければなりません。そのため、記録を残すことに気を取られ、まともに患者さんの顔や目を見ないまま、パソコン画面を横目に話す医師が増えています。これでは、医療者と患者・家族が信頼関係を築きにくいことは言うまでもありません。

 それをサポートする看護師も然り。プロジェクトに参加している医療機関の調査では、看護師の勤務時間の3割(2.5時間)が記録に割かれているそうで、「患者さんからゆっくり話を聞きたい」という気持ちがあっても、聞けば聞くほど記録事項が増え、超過勤務をしないと仕事が終わらない状況になってしまいます。

 このように疲弊しつつある診療現場に、さまざまなAI技術が導入されると、もっと時間に追われるのではと心配される方が多いのですが、それはむしろ逆です。医療現場の「働き方改革」を推進し、患者さんが享受し得る医療の質を高めることが、私が目指す「AIホスピタル」構想の目的です。

1/4ページ

最終更新:9/20(金) 7:01
現代ビジネス

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事