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女子大に経営系の学部設置相次ぐ、背景に一般職消滅の危機

9/20(金) 7:00配信

日経ビジネス

 女子大学に経営系の学部を新設する動きが相次いでいる。共立女子大学(東京・千代田)は2020年4月にビジネス学部を設置。武庫川女子大学(兵庫県西宮市)も同年4月に経営学部を設ける。

【関連画像】共立女子大学は2020年4月にビジネス学部を新設する

 「東京の真ん中で、ビジネスを。」

 オフィスの広告ではなく、共立女子大ビジネス学部の学生募集のキャッチフレーズだ。経営や法律、情報・統計といった通常の講義に加え、東京駅から2km弱という立地を生かし、企業の社員を招いて商品開発に取り組むといった実践型授業を設けて「就職率100%を目指す」(共立女子大担当者)という。

 女子大としては最大規模となる約1万人の学生を抱える武庫川女子大は、経営学部の新設に合わせて新校舎を建設する力の入れようだ。学外のビジネスパーソンと交流できるスペースや試作品を作れる3Dプリンター、ドローンなども設置する。将来的には、管理職を目指すビジネスウーマン向けに、社会人が必要なときに学び直すリカレント教育も取り入れる計画だという。

 両校が新学部設置に動いた背景には「一般職」の減少がある。事業会社の事務や、銀行や地方自治体の窓口業務などが女子大の学生の就職の受け皿となってきたが、金融機関などは定型的な事務をAI(人工知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)に任せて、採用を絞っている。いわゆる「総合職」に対応する人材を輩出しなければ、女子大自体の存在意義が問われかねないとの危機感がある。

 学生側の意識の変化も大きい。女子大は良妻賢母となるための一般教養を重視する傾向が強かったが、「中学や高校のキャリア教育により、実務志向が高まった」(日本総合研究所の東秀樹主席研究員)。社会で働くことを見据えた女子学生にとって、あえて女子大を選ぶ理由は薄れている。

 東京大学大学院の両角亜希子准教授(大学経営)は「大学間競争が激化する今、女子大はブランドで学生を呼べない。むしろ女子大であることはマイナスになる可能性がある」と指摘する。こうした社会の変化の影響を最も受けたのが短期大学だ。1990年代に600に迫った短大の数は、半分近くに減っている。共学化が進んだことで4年制の女子大も数をじわじわと減らしている。

 さらに少子化が進む中、女子大の経営系学部の隠れたニーズとして事業承継もあるようだ。帝国データバンクの女性社長ランキング(2019年)で、共立女子大は9位、武庫川女子大は16位と、有名総合大学に挟まれながら健闘している。両校のオープンキャンパスでは、卒業生の母親が自分の時代になかった本格的なビジネス教育を受けてほしいと娘を連れてくるケースも見られるという。

 経営系学部は、女子大にとって新たな学生獲得の機会となる一方で、総合大学と正面から競うことにもなる。両大学はきめ細かさで、学生を集める考えのようだ。共立女子大は教員の担任制や、先輩が後輩をサポートする「ラーニング・アシスタント」制度、キャリア相談を受ける卒業生メンターを設ける。武庫川女子大は、2年生後期に4カ月間のアメリカ分校への留学を用意するほか、30代の女性社会人を招いた特別講義も実施する。

 コンサルティング大手、マッキンゼー・アンド・カンパニーでの勤務経験がある武庫川女子大の岸本義之教授は「結婚や出産でブランクが生まれやすい女性は、男性よりスキルアップの意識が高くなければならない」と話し、女子大だからこそできるキャリア教育があると訴える。

 2013年に「グローバルビジネス学部」を設けた昭和女子大では、ビジネス志向の学生が学校全体に活気をもたらす効果があったという。共立女子学園総合企画室の広瀬貴博担当室長は「徹底的に勉強したいというポジティブな学生を増やし、大学全体の雰囲気を大きく変えたいと思っている」と受験生増だけでない効果に期待する。経営系の学部は女子大に変革をもたらすだろうか。

鷲尾 龍一

最終更新:9/20(金) 7:00
日経ビジネス

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