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中高年襲う突然の大量下血 「大腸憩室出血」に備える

9/21(土) 7:47配信

NIKKEI STYLE

便器が真っ赤になるほどの大量の下血が突然起きる大腸憩室出血。痛みなど前兆がなく、中高年に多く発生する疾病だ。大腸の粘膜が袋状に飛び出した憩室が、年齢を重ねるにつれて数が増えていき、出血につながる。残念ながら根治法はなく、再発する可能性も高い。ただ食生活の改善で発病のリスクを抑えられるほか、排便に注意を払うことで重症化を防げる。
大分県の酒造会社に勤務するAさん(男性、63)は約7年前、自宅のトイレで大量下血し貧血で倒れて、救急車で病院に運ばれた。搬送先で医師から大腸憩室出血と診断された。内視鏡を使った止血で対処しようとしたが出血が止まらず、開腹手術で大腸を約20センチ切り、17日間入院した。
大量出血の約1週間前に血便が出たため「痔(じ)と思い肛門科で診察を受けた」(Aさん)。医師からは腸の病気を指摘されたが放置していた。Aさんは「健康には注意し、人間ドックを毎年欠かさず受診、異常もなかった。早めに消化器科に行けばよかった」と振り返る。

■普段は症状なし

多くの大腸憩室出血の患者を診察している日本医科大学付属病院内視鏡センター長の貝瀬満医師は「バリウムを大腸に注入してX線撮影すると、憩室は55~65歳で40~50%の人に見つかる」という。便秘でガスが腸内にたまったり、下痢になったりすると、大腸で不規則で強い収縮が繰り返される。その結果、腸内の圧力が高まると腸壁の弱い部分が袋状に外側に飛び出す。これが憩室だ。「風船に空気を入れると膨らむイメージ」(貝瀬医師)だという。
ほとんどの憩室の大きさは直径2~3ミリから1センチ程度。1人にできる数は10~30個程度、さらに多い場合もある。普段は無症状だが、憩室ができた粘膜は薄くなり、傷が生じやすくなる。便の詰まりなどがきっかけで粘膜の下の血管まで傷が付くと、憩室出血が起きることが多い。
治療ではまず内視鏡で検査し、出血している場所を探し、血管を小さなクリップではさんで止血する方法が一般的。実は場所がわかるのは患者の2割程度。それ以外の約8割は場所が特定できないため、自然に止血するのを待つことが多い。
どうしても止血できない場合は開腹して腸を切除する必要があるが、ここまで重症化するケースは少ないという。
ただ、発症は予測できない。「やっかいなことに止血しても再出血する割合も高い」(貝瀬医師)。入院中は点滴で栄養補給しながら絶食し、腸に刺激や負担をかけないようにしながら、腸の機能回復を待つ。
加齢のほかに、ひざの痛みなどから処方される非ステロイド性消炎鎮痛薬、心筋梗塞や脳梗塞などの治療に使う血液をサラサラにする抗血栓薬の一部なども憩室出血の引き金となる可能性があることが指摘されている。腸の粘膜の傷や血管の状態と関連して出血が起こると考えられているが、いまのところ確実な予防法はない。

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最終更新:9/21(土) 7:47
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