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資産形成のプロ 低利でも退職金で住宅ローン返す理由

9/21(土) 7:47配信

NIKKEI STYLE

「ご入金がありましたので、まだ使い道が決まっていらっしゃらないようでしたら資産運用をされてはいかがでしょうか」

5月のある日、某メガバンクからこんな電話がありました。退職金の振り込みがあったのを確認した支店の担当者が、電話をくださったのだと思います。これまでは昼間に電話がかかってきても私が取ることはなかったのですが、継続雇用とはいえ週3日の勤務ですから、これまでよりも自宅にいる時間が長くなっていて、電話も自分で取ることが多くなっています。

この電話で「色々聞き出してみようかな」なんて意地悪な気持ちもあったのですが、仕事の邪魔をしてもいけませんし、使い道も決めていましたから、「結構です」とすっぱりとお断りしました。

■負債と資産は両建てすべし?

私の退職金の使い道は住宅ローンの返済です。これで30代から続いてきた住宅ローンとの闘いもやっと終了です。

こんなに金利が安くなっているので何も住宅ローンを返済しなくてもいいのでは、とアドバイスをしてくれる人もいます。住宅ローン金利は1%を切っていますから、退職金を運用に回して、それよりも高いパフォーマンスを上げることもできるだろうということです。「何しろ専門家でしょ!」ってことですね。しかも団体信用生命保険に入っていれば、万一死亡してもローンは保険で完済されて家族に迷惑を掛けないで済むだろうといった指摘もありました。

でもやはり退職時点でできるだけローンは完済すべきだと思っています。ましてや退職金を使えば負債を完済できるのに、あえて返済せず負債と資産の両建てにして運用収益のサヤ(=運用収益率-住宅ローン金利)を当てにするというのは、私には考えられません。

もちろん「退職金を住宅ローンの返済に回してしまうと手元に資金が残らない」とか、「退職金が退職後の唯一の生活資金だ」といった場合には、私の考え方は当てはまらないかもしれません。また、現役時代のように、金融資産の取り崩し以外に、給料という生活費の源泉がある時代には、こうした両建ての戦術も有効かもしれません。

しかし、退職して現役時代よりも勤労収入が少なくなる中、住宅ローンの毎月の返済を抱えていると、その一部を金融資産からの取り崩しで充当する必要が出てきます。これは決していい方法ではありません。運用は環境によって変動があるのが前提ですから、金融資産の相場が下落している時にも毎月の支払い分をその金融資産から引き出して充当しなければなりません。これは固定金額の支払いを変動する金融資産で賄うことになり、私がよく危険性を指摘する「定額引き出し」の課題を抱えることになります。

例えば1000万円の退職金を運用して、月初に10万円をそこから引き出して住宅ローンの返済に充てるとします。1年間の動きを前半にプラスが続いたパターン1と、その逆に前半にマイナスが続いたパターン2を比較してみたのが表です。12カ月間の平均収益率はどちらも2%になるように設定しましたので、引き出しをしていなければ、どちらも12カ月間で1020万円になる計算です。

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最終更新:9/21(土) 7:47
NIKKEI STYLE

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